診療ガイドライン(第Ⅰ章 白血病)

第Ⅰ章 白血病

1 急性骨髄性白血病
(acute myeloid leukemia:AML)

総論

1.AML の病態と治療

急性骨髄性白血病(acute myeloid leukemia:AML)は分化・成熟能が障害された幼若骨髄系細胞のクローナルな自律性増殖を特徴とする多様性に富む血液腫瘍である。骨髄における白血病細胞の異常な増殖の結果,正常な造血機能は著しく阻害され,白血球減少,貧血,血小板減少に伴うさまざまな症状を呈する。適切な治療がなされない場合は,感染症や出血により短期間で致死的となる重篤な疾患である。

初発AML に対する基本的な治療戦略は治癒を目指した強力な化学療法であり,多剤併用療法が基本となる。しかし,その適応は化学療法による臓器毒性や合併症に耐えられるかを年齢,臓器機能,全身状態などによって慎重かつ厳密に判断する必要がある(表11, 2)。AML に対する化学療法は寛解導入療法と寛解が得られた後に行う寛解後療法からなる。化学療法のみでは良好な長期予後が得られない症例に対しては第一寛解期で同種造血幹細胞移植が適応となる。

寛解導入療法に対する不応例や,完全寛解(complete remission:CR)に到達したものの,その後再発をきたした症例は,再発・難治例として救援療法が必要となる。しかし,再発・難治例においては化学療法のみでの治癒は期待しがたいため,可能な症例では同種造血幹細胞移植療法が適応となる。FLT3 遺伝子変異陽性例の再発・難治性症例に対しては,2 種類のFLT3 阻害薬(ギルテリチニブ,キザルチニブ)が使用可能である。両剤ともに使用前に承認されたコンパニオン診断キットでのFLT3 遺伝子変異の同定が必要である。また,キザルチニブはFLT3-ITD 変異陽性例のみに適応があることに注意する。

高齢者AML では,臓器機能などの患者側要因により,若年成人と同等の治療強度を持つ化学療法を一律に実施することは困難である。全身状態や臓器機能が充分に保たれている場合には化学療法の適応となるが,一般的に,高齢者AML に対する化学療法は治療関連合併症の頻度・程度が高く,強力化学療法の適応は慎重に判断しなければならない。

表1 強力化学療法適応規準1, 2)

2.AML の診断と病型分類

AML の診断は,①骨髄における白血病細胞の存在(WHO 分類では20%以上,FAB 分類では30%以上),②白血病細胞が骨髄系起源であること,③白血病細胞の染色体核型・遺伝子変異解析によって行われ,その後WHO 分類に従って病型分類される(表23)。WHO 分類は2017 年に改訂が行われたが,AML および関連悪性腫瘍の項目では,特定の遺伝子異常を有するAML に新たな遺伝子異常を有するAML の追加,骨髄中赤芽球が50%以上存在する場合の診断基準の見直し,芽球形質細胞様樹状細胞腫瘍の削除が主たる変更点である。分類不能のAML(AML, not otherwise specified)の細分類には従来通りFAB 分類における形態学的・免疫組織学的診断が用いられる4)

表2 AML のWHO 分類(2017)3)

3.AML の予後因子

標準的な化学療法を受けた若年成人AML 全体では,70〜80%のCR と40%前後の5 年無再発生存が得られるが,種々の予後因子により予後良好群,中間群,不良群の3 種類に区別される。

AML の予後には患者側要因と白血病細胞側要因の双方が関係するとともに,治療反応性も長期予後に影響を及ぼす因子となる(表32, 5-7)

表3 AML における予後層別化因子2, 5-7)

患者側要因として,年齢(60 歳以上),全身状態(performance status:PS 3 および4),合併症の存在(感染症など)が予後不良因子として重要である。

白血病細胞側要因として,染色体核型,発症様式(de novo または二次性),初診時白血球数,細胞形態(異形成の有無,FAB 病型,myeloperoxidase:MPO 染色陽性率)が予後因子となる。

染色体核型はAML における予後層別化因子として最も使用されているが,種々の遺伝子変異の予後因子としての重要性が明らかとなり,従来の染色体核型に基づくリスク分類を遺伝子変異の状態によって細分化するシステムが提唱されている。しかし,AML に生じている遺伝子変異は固形がんに比較して少ないものの,複数の遺伝子変異が協調的に病態に関与しているため,個々の遺伝子変異単独での予後層別化には注意をする必要があり,複数の遺伝子変異を組み合わせた層別化システムの構築が模索されている。2010 年にEuropean LeukemiaNet から,遺伝子変異と従来の染色体核型に基づく予後因子を組み合わせた新たな予後層別化システムが提唱されたが,2017 年に新たな染色体異常および遺伝子変異の状態を組み入れた改訂が行われた(表48)

表4 ELN によるAML の層別化システム

参考文献

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アルゴリズム

1.若年者AML

AML と診断された場合は上記のアルゴリズムに従うことが推奨される。若年AML に対する標準的寛解導入療法はアントラサイクリン+標準量シタラビン(CQ2)である。その際のアントラサイクリン系薬剤の至適な種類と投与量は1 つに限定されないが,ダウノルビシンまたはイダルビシンの使用が推奨される(CQ2, 3)。1 コース目の寛解導入療法で非寛解症例に対しては同一レジメンが繰り返されることが多く(CQ5),2 コース目の治療でも寛解が得られない場合は,大量あるいは中等量シタラビンを含む救援療法が行われる。

地固め療法は染色体などの予後因子により層別化して行われる。予後良好群に対しては,シタラビン大量療法(CQ6)が,予後中間群,不良群に対しては同種造血幹細胞移植が推奨されるが(CQ8),適切なドナーが不在の場合は,非交差耐性のアントラサイクリン系薬剤を含んだレジメンが実施される(CQ7)。維持療法は必要ない。AML の予後分類において,AML 細胞の要因として染色体核型に基づく層別化が汎用されているが,遺伝子変異を組み入れた予後分類も提唱されている(CQ1)。

2.高齢者AML

高齢者の定義は定かではないが,わが国では65 歳以上とすることが多い。標準的な治療が可能かどうかは,全身状態(PS)や合併症,さらには染色体分析の結果を参考に担当医師により判断される。治療可能と判断された症例に対してはダウノルビシン+シタラビンが推奨される(CQ4)。高齢者AML に対する標準的寛解後療法は確立されてないが,わが国では,非交差耐性のアントラサイクリン系薬剤を含む多剤併用レジメンが実施されることが多い(CQ9)。最近では,予後不良の症例には寛解後療法として骨髄非破壊的前処置による同種造血幹細胞移植も行われることがある。標準治療は困難だが,治療は可能と判断された症例には,低用量シタラビンや新規薬剤による治療が行われる。

3.非寛解期AML に対する同種造血幹細胞移植

再発AML に対しする再寛解導入療法を行わない非寛解のままでの移植の適応を決定する明確な指標は確立されていない。また寛解導入療法不応非寛解症例に対する移植の適応を決定する明確な指標も確立されていない(CQ10)。

4.支持療法

AML の寛解導入療法,寛解後療法時におけるG-CSF 投与は,好中球減少期間の短縮やQOL の改善が期待でき,高齢者や重症感染症を併発した症例では検討されても良い(CQ11)。

AML に対する化学療法開始前に末梢白血球数と血清乳酸脱水素酵素値,腎機能に基づきリスク分類をおこない,リスクに応じた腫瘍崩壊症候群の予防を行うことが推奨される(CQ12)。

5.中枢神経白血病予防

AML では中枢神経系白血病の発症頻度が低く,無症状の症例に対して予防的に抗がん薬を髄腔内投与する適応はない。単球系への分化を示す症例,mixed phenotype,末梢血白血球数が4 万/μL を超える症例,髄外白血病では神経症状がみられなくても寛解に到達した時点で腰椎穿刺によるスクリーニングが考慮される(CQ13)。

6.腫瘤形成性AML に対する治療

腫瘤形成性AML に対しては単独発症の場合であっても通常の寛解導入療法が考慮される(CQ14)。

7.AML における微小残存病変(MRD)の評価

微小残存病変(minimal residual disease:MRD)の正確な評価は,再発の予測や造血細胞移植を含む治療戦略の個別化に有用な情報となる。AML におけるMRD のモニタリングに経時的な疾患特異的キメラ遺伝子やWT1 遺伝子のmRNA 発現定量が考慮される。マルチカラーフローサイトメトリ法の有用性も示唆されているが,わが国では保険適用がない(CQ15)。

8.AML に対するゲムツズマブ オゾガマイシン(gemtuzumab ozogamicin:GO)の使用

わが国におけるGO の適応疾患は再発または難治CD33 陽性AML である。GO の投与回数は,少なくとも14 日間の投与間隔をおいて,2 回とし,他の抗悪性腫瘍剤と併用しない(CQ16)。

CQ1
AML の診断時に必要な遺伝子検査は何が勧められるか

推奨グレードカテゴリー2A
染色体核型検査は病型分類,予後予測,治療法選択において必須である。FLT3,NPM1,CEBPA,RUNX1,ASXL1,TP53 遺伝子などの変異解析によってさらなる予後層別化が可能とされている。

解説

AML 細胞の染色体核型は,寛解導入療法に対する反応性および生存に対する最も強い予後因子であり,WHO 分類(2017)における病型診断,さらには治療法の選択においても重要な情報となる。

若年成人においては,染色体核型に基づき,予後良好群,中間群,不良群の3 群に分類される1, 2)。NCCN ガ イ ド ラ イ ン で は,t(8;21)(q22;q22.1),inv(16)(p13.1q22)ま た はt(16;16)(p13.1;q22)が予後良好な染色体核型,inv(3)(q21.3q26.2)またはt(3;3)(q21.3;q26.2),-5または del(5q),-7または del(7q),t(6;9)(p23;q34.1),t(9;11)(p21.3;q23.3)以外の KMT2(MLL)遺伝子(11q23)を含む染色体転座,t(9;22)(q34.1;q11.2),複雑核型,monosomal karyotype が予後不良染色体核型,正常核型,+8 のみ,t(9;11)(p21.3;q23.3),その他の核型は予後中間群に分類されている3)。MRC AML-11 試験の結果によると,高齢者AML においても染色体核型に基づく層別化が可能であることが示されている4)

一方,予後良好群として分類されているt(8;21)(q22;q22.1),inv(16)(p13.1q22)またはt(16;16)(p13.1;q22)核型を有する症例においても,KIT,FLT3 遺伝子変異を併せ持つ症例は予後不良である可能性があることや,染色体正常核型を中心とする予後中間群においては,FLT3,NPM1,CEBPA 遺伝子などをはじめとする多くの遺伝子変異の存在の有無により,その長期予後に対するリスクを細分化できる可能性が示唆されている3, 5-8)

WHO 分類(2017)では,NPM1 遺伝子変異,両アレルでのCEBPA 遺伝子変異,RUNX1 遺伝子変異を有する症例が,染色体転座以外のAML with recurrent genetic abnormalities 中の一病型として含められている9)

本邦においてはこれら遺伝子変異検索の保険適用が得られておらず,また多くの遺伝子変異解析は研究室レベルでのみ実施可能である。

参考文献

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Grimwade D, et al. The importance of diagnostic cytogenetics on outcome in AML : analysis of 1, 612 patients entered into the MRC AML 10 trial. The Medical Research Council Adult and Children’s Leukaemia Working Parties. Blood. 1998 ; 92(7): 2322-33.(3iiiD)
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NCCN Clinical Practice Guidelines in Oncology. Acute Myeloid Leukemia. Version 3. 2020-December 23, 2019.(ガイドライン)
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Grimwade D, et al. The predictive value of hierarchical cytogenetic classification in older adults with acute myeloid leukemia(AML): analysis of 1065 patients entered into the United Kingdom Medical Research Council AML11 trial. Blood. 2001 ; 98(5): 1312-20.(3iiiD)
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Döhner H, et al. Diagnosis and management of AML in adults : 2017 ELN recommendations from an international expert panel. Blood. 2017 ; 129(4): 424-47.(ガイドライン)
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Arber DA, et al. Acute myeloid leukaemia and related precursor neoplasms. Swerdlow SH, et al. eds. WHO Classification of Tumours of Haematopoietic and Lymphoid Tissues, Lyon, IARC ; 2017 : pp129-71.(テキストブック)

CQ2
若年者de novo AML に対する標準的寛解導入療法としてどのレジメンが勧められるか

推奨グレードカテゴリー1
若年成人de novo AML に対する標準的寛解導入療法はアントラサイクリン(イダルビシンまたはダウノルビシン)+標準量シタラビンである。

解説

従来,60 歳未満の若年成人de novo AML に対する標準的寛解導入療法は,ダウノルビシン(DNR)45〜50 mg/m2 3 日間+シタラビン(AraC)100 mg/m2 または200 mg/m2 7 日間持続投与の“3+7”療法であったが,イダルビシン(IDR)+AraC とDNR+AraC との比較試験およびメタアナリシスの結果,IDR+AraC のDNR+AraC に対する優越性が報告された1)。しかし,従来のDNR 投与量(45〜50 mg/m2)はIDR 投与量(12 mg/m2)と比較して,生物学的に少ないことが指摘された。

米国Eastern Cooperative Oncology Group(ECOG)では,60 歳未満のde novo AML に対し増量DNR(90 mg/m2)3 日間+AraC(100 mg/m2)7 日間と従来のDNR(45 mg/m2)3 日間+AraC(100 mg/m2)7 日間とのランダム化比較試験が実施され,寛解率,生存割合ともに増量DNR(90 mg/m2)群が有意に優れていることが示された2)

英国National Cancer Research Institute(NCRI)では,DNR(90 mg/m2)3 日間とDNR(60 mg/m2)3 日間の比較試験が実施され,寛解率および生存割合に有意差は認められず,60 日時点での死亡割合はDNR(90 mg/m2)群で有意に高いことが示された3)

Japan Adult Leukemia Study Group(JALSG)で実施されたDNR(50 mg/m2)5 日間+AraCとIDR+AraC とのランダム化比較試験(AML 201 study)の結果では,寛解率および生存割合ともに両群の同等性が示されている4)

その他のアントラサイクリン系薬剤として,ミトキサントロン(MIT)(総量18〜30 mg/m2)とIDR(総量24〜36 mg/m2)との比較試験が行われているが,寛解率および生存割合に有意差は認められていない5)

したがって,若年成人de novo AML に対する標準的寛解導入療法は,IDR+AraC またはDNR+AraC である。NCCN ガイドラインでは,DNR+AraC 療法におけるDNR 投与量は60〜90 mg/m2 3 日間が推奨されている6)が,50 mg/m2 5 日間投与も同等の成績が得られることが示されている。また,わが国でのDNR の承認用法・用量は,体重1 kg あたり1 mg を連日あるいは隔日に3〜5 回投与であることに留意する必要がある。

参考文献

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Ohtake S, et al. Randomized study of induction therapy comparing standard-dose idarubicin with high-dose daunorubicin in adult patients with previously untreated acute myeloid leukemia : the JALSG AML201 Study. Blood. 2011 ; 117(8): 2358-65.(1iiDiv)
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NCCN Clinical Practice Guidelines in Oncology. Acute Myeloid Leukemia. Version 3. 2020-December 23, 2019.(ガイドライン)

CQ3
若年者de novo AML の寛解導入療法(アントラサイクリン+標準量シタラビン)に他の薬剤の追加やシタラビン大量療法の組み込みは有効か

推奨グレードカテゴリー3
標準的寛解導入療法であるアントラサイクリン(イダルビシンまたはダウノルビシン)+標準量シタラビン療法に他剤を追加した場合の優越性は認められていない。また,シタラビン大量療法を組み入れた場合の優越性のエビデンスは乏しく,有害事象の危険性が増すため推奨されない。

解説

アントラサイクリン[イダルビシン(IDR)またはダウノルビシン(DNR)]3 日間+標準量シタラビン(AraC)7 日間による寛解導入療法にチオグアニンやエトポシド(ETP)を加えた場合の優越性に関するエビデンスは乏しい。Australian Leukemia Study Group(ALSG)では,DNR(50 mg/m2)3 日間+AraC(100 mg/m2)7 日間とDNR(50 mg/m2)3 日間+AraC(100 mg/m2)7 日間+ETP(75 mg/m2)7 日間とのランダム化比較試験が行われた。寛解期間中央値はエトポシド追加群で有意に長期であった(18 カ月vs 12 カ月)が,寛解率,生存割合では両群間に有意差を認めていない1)。Japan Adult Leukemia Study Group(JALSG)での検討でもエトポシドの追加による効果は認めないと報告されている2)

寛解導入療法におけるAraC 大量療法(HiDAC)の意義については,ALSG とSouthwestern Oncology Group(SWOG)でランダム化比較試験が実施されている。

ALSG ではDNR(50 mg/m2)3 日間+ETP(75 mg/m2)7 日間+AraC(100 mg/m2)7 日間とDNR(50 mg/m2)3 日間+ETP(75 mg/m2)7 日間+AraC(3 g/m2)12 時間ごと4 日間のランダム化比較試験が実施された。5 年無再発生存割合(RFS)はHiDAC 群が有意に優れていた(48% vs 25%)が,生存割合,寛解率では有意差を認めていない3)

SWOG ではDNR(45 mg/m2)3 日間+AraC(200 mg/m2)7 日間とDNR(45 mg/m2)3 日間+AraC(2 g/m2)12 時間ごと6 日間のランダム化比較試験が実施された。4 年RFS はHiDAC 群が優れていた(33% vs 21%,p=0.049)が,生存割合,寛解率では有意差を認めていない。また,HiDAC 群では有意に治療関連死亡(TRM)と神経毒性が高頻度に認められている4)

HiDAC と高用量DNR またはIDR 併用療法に関するエビデンスはない。

標準的寛解導入療法であるアントラサイクリン(DNR またはIDR)+標準量AraC 療法に他剤の追加した場合,およびHiDAC 療法を組み入れた場合の優越性に関するエビデンスは乏しい。また,HiDAC を組み入れた場合にはTRM,神経毒性などの有害事象の危険性が増すため,HiDACの組み入れは推奨されない。

参考文献

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CQ4
高齢者AML に対して推奨される寛解導入療法は何か

推奨グレードカテゴリー2A
60〜65 歳までの高齢者AML においては,若年成人と同等の寛解導入療法を実施した方が良好な寛解率と生存割合が期待できる。しかし,高齢者AML では全身状態(PS),併存疾患などの程度により,治療強度の軽減やbest supportive care の選択を検討することが必要である。

解説

高齢者の定義は明確ではないが,一般的に60 歳以上のAML 患者では,暦年齢だけではなく,全身状態(performans status:PS)や併存疾患ならびにAML の特性(染色体核型や発症様式)によって治療法の選択を行うべきである。

高齢者AML に対する寛解導入療法で若年者と同様に標準的寛解導入化学療法を行う場合と,低用量の治療ないしbest supportive care を比較するランダム化比較試験では,標準的寛解導入療法群は寛解率・生存割合ともに成績が勝ることが示されている1)。しかし,高齢者AML においてはPS,合併症が治療成績に及ぼす影響が強いことに留意する必要がある。

合併症がなく良好な全身状態(PS 0〜1)であり,予後良好な染色体核型を有する高齢者AML では,年齢に関係なく標準的なアントラサイクリン3 日間+標準量シタラビン(AraC)7 日間からなる寛解導入療法の恩恵を受けることができる可能性がある。しかし,75 歳以上,あるいは60〜74 歳までの患者であっても重篤な併存疾患やPS 3 以上の場合には,治療関連死亡(TRM)の危険性が高いため,他の治療強度の低い治療法またはbest supportive care を選択すべきである2)。MRC AML14 試験では,低用量AraC(20 mg/m2 皮下注1 日2 回)療法においても,30 日以内のTRM を26%に認めている3)

Dutch-Belgian Hemato-Oncology Cooperative Group(HOVON)/Swiss Group for Clinical Cancer Research(SAKK)/German AML Study Group(AMLSG)では,60 歳以上の高齢者AML に対し,標準量のダウノルビシン(DNR)(45 mg/m2)+AraC と高用量DNR(90 mg/m2)+AraC 療法のランダム化比較試験が実施された。高用量DNR(90 mg/m2)群は標準量のDNR 群に比較して有意に高い寛解率を示したが,生存割合に有意差を認めていない。年齢別に解析した場合,60〜65 歳までの症例においてのみ,高用量DNR(90 mg/m2)群は標準量のDNR 群に比較して有意に高い寛解率と生存割合を示している4)

年齢,PS,合併症などに基づく高齢者AML に対する治療強度の減弱規準に関しての明確なエビデンスはない。JALSG GML200 試験では,65〜69 歳までの症例に対してはDNR(40 mg/m2)3 日間+エノシタビン(BHAC)(200 mg/m2)8 日間,70〜79 歳の症例に対してはDNR(30 mg/m2)3 日間+BHAC(200 mg/m2)8 日間による寛解導入療法が実施されており,年齢に基づくDNR 投与量の目安になると思われる5)

参考文献

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CQ5
1 回の寛解導入療法で完全寛解が得られない場合,どのような治療法を選択すべきか

推奨グレードカテゴリー2B
同一の寛解導入療法をもう一度繰り返すべきか,治療法を変えるべきかのエビデンスは存在しない。しかし,一定の比率で寛解が得られることから,同一の寛解導入療法を再度繰り返すことは妥当と考えられる。

解説

わが国におけるAML の寛解導入療法はJapan Adult Leukemia Study Group(JALSG)のプロトコールで行われることが多い。JALSG ではこれまでAML87,89,92,95,97,201 の研究を終了している。いずれのプロトコールでも1 コース目で寛解しなかった場合は,もう1 コース同じ治療を繰り返すことになっている。これらの試験では1 コースでの寛解率は57〜72%と差があるものの,いずれの試験でも2 コースでの寛解達成例を加えた寛解率は80%前後の成績が得られている1-5)。1 コースで寛解しなかった症例では1 コース目の抗白血病剤に抵抗性である場合が多く,同じ治療法を用いた場合の2 コース目の寛解率は低く,治療薬を代えることの理由にはなる。しかし,2 コース目の治療を替えたことにより,寛解率あるいは全生存割合(OS)が向上するというエビデンスはない。

参考文献

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Ohno R, et al. Randomized study of individualized induction therapy with or without vincristine, and of maintenance-intensification therapy between 4 or 12 courses in adult acute myeloid leukemia. AML-87 Study of the Japan Adult Leukemia Study Group. Cancer. 1993 ; 71(12): 3888-95.(1iiDiv/3iDiv
2)
Kobayashi T, et al. Randomized trials between behenoyl cytarabine and cytarabine in combination induction and consolidation therapy, and with or without ubenimex after maintenance/intensification therapy in adult acute myeloid leukemia. The Japan Leukemia Study Group. J Clin Oncol. 1996 ; 14(1): 204-13.(1iiDiv/3iDiv
3)
Miyawaki S, et al. No beneficial effect from addition of etoposide to daunorubicin, cytarabine, and 6-mercaptopurine in individualized induction therapy of adult acute myeloid leukemia : the JALSG-AML92 study. Japan Adult Leukemia Study Group. Int J Hematol. 1999 ; 70(2): 97-104.(1iiDiv/3iDiv
4)
Ohtake S, et al. Randomized trial of response-oriented individualized versus fixed-schedule induction chemotherapy with idarubicin and cytarabine in adult acute myeloid leukemia : the JALSG AML95 study. Int J Hematol. 2010 ; 91(2): 276-83.(1iiDiv/3iDiv
5)
Miyawaki S, et al. A randomized, postremission comparison of four courses of standard-dose consolidation therapy without maintenance therapy versus three courses of standard-dose consolidation with maintenance therapy in adults with acute myeloid leukemia : the Japan Adult Leukemia Study Group AML 97 Study. Cancer. 2005 ; 104(12): 2726-34.(1iiDii/3iDiv

CQ6
CBF-AML の寛解後療法として何が勧められるか

推奨グレードカテゴリー2A
60 歳以下のCBF(core binding factor)-AML の寛解後療法として,シタラビン大量療法は無病生存期間の延長が期待でき勧められる。

解説

Cancer and Leukemia Study Group B(CALGB)の行ったAML 寛解後療法としてのシタラビン通常量(100 mg/m2/day,5 日間持続),中等量(400 mg/m2/day,5 日間持続)およびシタラビン大量療法(3 g/m2,1 日2 回3 時間で静注,day1,3,5 に投与)を前方視的に比較した。その結果,60 歳以下でシタラビン大量療法の有効性が確認された1)。特にCBF 白血病ではシタラビン大量療法が最も効果が高く2)また,CALGBの後方視的な解析でもt(8;21)AMLに対して3 コース以上のシタラビン大量療法が有効であることを示している3)。inv(16)/t(16;16)AMLは再発後も移植により良好にsalvage されるためOS は影響されないが,シタラビン大量療法により再発率は低下する。わが国で行われた前方視的試験では,2 g/m2,1 日2 回3 時間で静注5 日は,これまでの多剤併用療法と比較して無病生存期間(DFS),全生存期間(OS)ともに差がなかったが,CBF 白血病ではシタラビン大量療法群でDFS の改善傾向が認められた4)

参考文献

1)
Mayer RJ, et al. Intensive postremission chemotherapy in adults with acute myeloid leukemia. Cancer and Leukemia Group B. N Engl J Med. 1994 ; 331(14): 896-903.(1iiA)
2)
Bloomfield CD, et al. Frequency of prolonged remission duration after high-dose cytarabine intensification in acute myeloid leukemia varies by cytogenetic subtype. Cancer Res. 1998 ; 58(18): 4173-9.(2Dii)
3)
Byrd JC, et al. Patients with t(8;21)(q22;q22)and acute myeloid leukemia have superior failure-free and overall survival when repetitive cycles of high-dose cytarabine are administered. J Clin Oncol. 1999 ; 17(12): 3767-75.(3iiiDii)
4)
Miyawaki S, et al. A randomized comparison of 4 courses of standard-dose multiagent chemotherapy versus 3 courses of high-dose cytarabine alone in postremission therapy for acute myeloid leukemia in adults : the JALSG AML201 Study. Blood. 2011 ; 117(8): 2366-72.(1iiDii)

CQ7
CBF-AML 以外のAML の寛解後療法として何が勧められるか

推奨グレードカテゴリー2B
CBF-AML 以外のAML では,非交差耐性のアントラサイクリン系薬剤を用いた多剤併用化学療法4 コースの地固め療法が推奨される。

解説

AML では寛解後地固め療法を行わないと再発が必至であり,寛解を維持するための種々の寛解後療法が試されてきた。早くから欧米ではシタラビン大量療法が地固め療法の主流であり,NCCNのガイドラインでは,CBF-AML 以外の予後中間群のAML に対しても,1 回投与量が1.5〜3 g/m2 のAraC 大量療法(一日2 回1 回あたり3 時間で静注,day1,3,5 に投与)3〜4 コースが推奨されている1)

わが国では保険上の制約からシタラビン大量療法を選択できなかった時期が長く,非交差耐性のアントラサイクリン系薬剤と標準量シタラビンを用いた寛解後療法を選択してきた経緯がある。JALSG で実施されたAML201 試験では,寛解到達症例に対する地固め療法として,標準量シタラビンと非交差耐性のアントラサイクリン系薬剤などを組み合わせた4 コースの多剤併用化学療法とシタラビン大量療法3 コースが比較された。CBF-AML においてはシタラビン大量療法の優越性が認められたが,CBF-AML 以外のAML では両治療法間に無病生存割合,全生存割合に統計学的有意差を認めなかった。また,同試験ではシタラビン大量療法群では感染症などの有害事象が多く認められたため,4 コースの多剤併用化学療法が地固め療法として推奨される2)

参考文献

1)
NCCN Clinical Practice Guidelines in Oncology. Acute Myeloid Leukemia. Version 3. 2020-December 23, 2019.(ガイドライン)
2)
Miyawaki S, et al. A randomized comparison of 4 courses of standard-dose multiagent chemotherapy versus 3 courses of high-dose cytarabine alone in postremission therapy for acute myeloid leukemia in adults : the JALSG AML201 Study. Blood. 2011 ; 117(8): 2366-72.(1iiDii)

CQ8
若年者AML の第一寛解期に同種造血幹細胞移植の適応はどのように決定すべきか

推奨グレードカテゴリー1
現時点では初診時の染色体異常による患者層別化が重要である。予後良好な染色体異常を有するfavorable-risk の患者では造血幹細胞移植の有用性は示されていない。それ以外のAML においては,HLA 適合血縁者ドナーからの同種造血幹細胞移植の有用性は示されているが,更なる層別化システムの構築とHLA 適合血縁者間以外のドナーからの移植に関するエビデンスの確立が必要である。

解説

これまで,AML 第一寛解期における同種造血幹細胞移植と寛解後化学療法を比較した多数のランダム化比較試験が施行されたが,結果は定まっておらず,無病生存割合で移植群の有効性を示す研究はあるものの,ほとんどの研究は全生存割合での有効性を示すことができなかった。また,化学療法の予後不良因子から両者を比較する検討が実施されたが,十分な統計学的power(症例数)がなく明確な結論に至っていない。しかし,24 の臨床研究(症例数3,638)を対象としたmeta-analysisの結果では,AML 第一寛解期のうち,予後不良および中間染色体異常のある症例では,移植による生存割合が有意に勝るが,予後良好染色体異常のある症例では移植の有効性は認められなかった1)。この結果からは,染色体異常の有無およびその種類を考慮し,AML 第一寛解期の移植適応を決定することが妥当といえる。遺伝子レベルで適合している非血縁者間とHLA 適合血縁者間移植はほぼ同じ成績であることが報告されているが,多くのランダム化比較試験で検討されたドナーソースはHLA 適合血縁者である。わが国で施行されたランダム化比較試験でも同様の結果が得られているが,予後因子の定義が異なる(染色体異常のみではない)ことに加えて,サンプルサイズが少ない上に治療のコンプライアンスも低く,臨床試験としての質は高くない2)。最近では,遺伝子変異の有無も予後因子として注目されており,あるランダム化比較試験のサブグループ解析では,正常核型AML 第一寛解期においてNPM1 遺伝子変異がありFLT3-ITD のない症例を除いた症例群では,HLA 適合血縁者間移植後の無再発生存割合が有意に勝ることが報告されている3)。一方,他の試験では,NPM1 遺伝子変異がありFLT3-ITD のない症例もHLA 適合血縁者間移植後の無再発生存割合が有意に良好であることが報告されている4)。日常診療では染色体核型や遺伝子変異による疾患リスクに加え,移植関連毒性を加味したうえで移植が選択されるが,そのエビデンスは確立されていない。

参考文献

1)
Koreth J, et al. Allogeneic stem cell transplantation for acute myeloid leukemia in first complete remission : a systematic review and meta-analysis of prospective clinical trial. JAMA. 2009 ; 30(22): 2349-61.(1iiA)
2)
Sakamaki H, et al. Allogeneic stem cell transplantation versus chemotherapy as post-remission therapy for intermediate or poor risk adult acute myeloid leukemia : results of the JALSG AML97 study. Int J Hematol. 2010 ; 91(2): 284-92.(1iiDi)
3)
Schlenk RF, et al. Mutations and treatment outcome in cytogenetically normal acute myeloid leukemia. N Engl J Med. 2008 ; 358(18): 1909-18.(2Diii)
4)
Röllig C, et al. Allogeneic stem-cell transplantation in patients with NPM1-mutated acute myeloid leukemia : results from a prospective donor versus no-donor analysis of patients after upfront HLA typing within the SAL-AML 2003 trial. J Clin Oncol. 2014 ; 33(5): 403-10.(2Diii)

CQ9
移植適応のない高齢者AML に寛解後療法を施行するメリットはあるか

推奨グレードカテゴリー2B
移植適応のない高齢者AML に対する寛解後療法のメリットは明らかにされていないが,一部の症例では寛解後療法を行うことの有用性が示唆されている。

解説

Cancer and Leukemia Study Group B(CALGB)は寛解後療法としてシタラビン大量投与[AraC 3 g/m2 を1 日2 回3 時間で静注,day 1, 3, 5(計6 回)を4 コース繰り返す]の有用性を検討し,60 歳以上の症例におけるシタラビン大量投与はその標準量投与と比較してDFS を改善しないことを明らかにした1)。高齢者AML を対象としたMRC-AML 11 試験も1 回の強化療法後に同様の化学療法を繰り返しても再発率,DFS,そしてOS に有意差は見られないことを示している2)。一方,AML HD98-B 試験は寛解達成後の強化療法によって,favorable cytogenetics を持つ高齢者AML の20〜30%に長期生存が得られることを示しており3),同様の傾向はMRC-AML11試験においても確認されている。これらの研究からは,一部の高齢者AML では寛解後療法を施行するメリットがあることが示唆される。しかし,染色体異常以外の患者選択に関する指標(年齢,co-morbidity など)は明確にされていない。至適な寛解後療法に関しても確立したエビデンスはないが,Acute Leukemia French Association(ALFA)9803 試験は強力な化学療法1 回と外来での化学療法6 回を比較し,後者で寛解後2 年のOS が優れ,再発には差がないものの,治療関連死亡は外来化学療法で少なかったと報告している4)

参考文献

1)
Mayer RJ, et al. Intensive postremission chemotherapy in adults with acute myeloid leukemia. Cancer and Leukemia Group B. N Engl J Med. 1994 ; 331(14): 896-903.(1iiA)
2)
Goldstone AH, et al. Attempts to improve treatment outcomes in acute myeloid leukemia(AML)in older patients : the results of the United Kingdom Medical Research Council AML 11 trial. Blood. 2001 ; 98(5): 1302-11.(1iiA)
3)
Frohling S, et al. Cytogenetics and age are major determinants of outcome in intensively treated acute myeloid leukemia patients older than 60 years : results from AMLSG trial AMD HD98-B. Blood. 2006 ; 108(10): 3280-8.(2A)
4)
Gardin C, et al. Postremission treatment of elderly patients with acute myeloid leukemia in first complete remission after intensive induction chemotherapy : results of the multicenter randomized Acute Leukemia French Association(ALFA)9803 trial. Blood. 2007 ; 109(12): 5129-35.(1iiA)

CQ10
非寛解期AML に対する同種造血幹細胞移植の適応に関する指標はあるか

推奨グレードカテゴリー3
再発AML に対し再寛解導入療法を行わない非寛解のままでの移植の適応を決定する明確な指標は確立されていない。また寛解導入療法不応非寛解症例に対する移植の適応を決定する明確な指標も確立されていない。現時点では後方視的解析に基づく予後因子と移植に関連する因子(ドナーソースなど)を総合的に評価し,患者とのshared-decision making で移植適応を決めることが勧められる。

解説

初回再発期において同種造血幹細胞移植と化学療法の有用性を前方視的に比較検討した報告はない。Breems らは年齢15〜60 歳の初回再発AML の移植成績を後方視的に解析し,4 つの予後因子(第一寛解の期間,診断時の染色体異常,初回再発時の年齢,初回再発前の造血幹細胞移植の有無)を同定し,これを基に初回再発期を3 つの予後グループ(favorable,intermediate,unfavorable)に分類している。第二寛解期が達成できた症例に限定して移植と化学療法を比較した検討では,いずれの群においても5 年生存割合で移植の優位性が示唆されている1)。わが国の初回再発期AMLの移植成績の後方視的解析で,第二寛解期を達成することで3 年生存割合は有意に改善することが報告されている2)。一方,芽球の割合の少ない初回再発期に再寛解導入療法を行わずに同種移植を行うことで第二寛解期と同等の生存割合が得られるとの報告もあるが,そのエビデンスレベルは低い3)。非寛解期AML に対する同種造血幹細胞移植の成績は散見されるが,少数例での報告が多いことと患者のselection bias により,その移植適応の指標を導き出すことは難しいが,the Center for International Blood and Marrow Transplant Research(CIBMTR)はAML 非寛解期移植1,673 例を解析し,第一寛解期の期間,末梢血中の芽球%,ドナーの種類,PS,染色体異常の有無から,移植後の3 年生存割合42%の予後良好群から6%の予後不良群までの患者の層別化が可能であることを報告している4)

参考文献

1)
Breems DA, et al. Prognostic index for adults patients with acute myeloid leukemia in first relapse. J Clin Oncol. 2005 ; 23(9): 1969-78.(2A)
2)
Kurosawa S, et al. Prognostic factors and outcomes of adults patients with acute myeloid leukemia after first relapse. Hematologica. 2010 ; 95(11): 1857-64.(3iA)
3)
Clift RA, et al. Allogeneic marrow transplantation during untreated first relapse of acute myeloid leukemia. J Clin Oncol. 1992 ; 10(11): 1723-9.(3iiA)
4)
Duval M, et al. Hematopoietic stem-cell transplantation for acute leukemia in relapse or primary induction failure. J Clin Oncol. 2010 ; 28(23): 3730-8.(3iA)

CQ11
AML において治療後の好中球減少期にG-CSF を使用するのは有用か

推奨グレード

カテゴリー2B(寛解導入療法)
カテゴリー2A(寛解後療法)
AML の寛解導入療法,寛解後療法時におけるG-CSF 投与は,好中球減少期間の短縮やQOL の改善が期待でき,高齢者や重症感染症を併発した症例では検討されても良い。

解説

AML に対する治療は,寛解導入療法,寛解後療法ともに強化され,若年成人AML における寛解率は80%,5 年生存割合は50%前後と向上している。この治療の強化は,骨髄抑制による出血や易感染性の対策の向上により可能になった。

このAML の寛解導入療法や地固め療法後に出現する感染症を予防できるかどうか,これまでにいくつかのG-CSF 投与の第Ⅲ相試験が実施された。

若年成人AML を対象とした第Ⅲ相試験では,好中球数減少期間,発熱期間,非経口抗生剤の投与期間さらには入院期間の短縮が示されている1)。わが国で行われた研究でも,好中球数減少期間,発熱期間の短縮が観察されている2)

骨髄抑制が高度となる高齢者AML を対象にした試験でも,好中球数減少期間,発熱期間,非経口抗生剤の投与期間の短縮が認められている3, 4)。また,死亡率は減少しなかったが,寛解率は向上したとの報告もある5)

AML 細胞は,G-CSF 受容体を発現することから,AML へのG-CSF の投与は問題視されているが,再発率の増加はみられず,長期観察においても生存期間へも影響を与えていないと報告されている6)

AML の寛解導入,地固め療法時においては,G-CSF 投与により好中球減少期間は短縮するものの,重症感染症の発症率や死亡率は減少せず,生存期間の延長も認められていない。従って,European LeukemiaNet の勧告やNCCN のガイドラインでは高齢者や重症感染症を併発した症例以外のAML 症例へのG-CSF の投与は推奨していない。しかし,ASCO(American Society of Clinical Oncology)のガイドラインでは寛解導入療法後のG-CSF 投与は妥当,地固め療法後は推奨できるとしている7)

参考文献

1)
Heil G, et al. A randomized, double-blind, placebo-controlled, phase III study of filgrastim in remission induction and consolidation therapy for adults with de novo acute myeloid leukemia. The International Acute Myeloid Leukemia Study Group. Blood. 1997 ; 90(12): 4710-8.(1iD)
2)
Usuki K, et al. Efficacy of granulocyte colony-stimulating factor in the treatment of acute myelogenous leukemia : multicentre randomized study. Brit J Haematology. 2002 ; 116(1): 103-12.(1iiD)
3)
Growin JE, et al. A double-blind placebo-controlled trial of granulocyte colony-stimulating factor in elderly patients with previously untreated acute myeloid leukemia. : A Southwest Oncology Group Study(9031). Blood. 1998 ; 91(10): 3607-15.(1iD)
4)
Amadori S, et al. Use of glycosylated recombinant human G-CSF(lenograstim)during and/or after induction chemotherapy in patients 61 years of age and older with acute myeloid leukemia : final results of AML-13. A randomized phase-3 study. Blood. 2005 ; 106(1): 27-34.(1iiD)
5)
Dombret H, et al A controlled study of recombinant human granulocyte colony-stimulating factor in elderly patients after treatment for acute myelogenous leukemia. N Eng J Med. 1995 ; 332(25): 1678-83.(1iiD)
6)
Heil G, et al. Long-term survival data from a phase 3 study of Filgrastim as an adjunct to chemotherapy in adults with de novo acute myeloid leukemia. Leukemia. 2006 ; 20(3): 404-9.(1iD)
7)
Smith TJ, et al. 2006 update of recommendations for the use of white blood cell growth factor : an evidence-based clinical practice guide line. J Clin Oncol. 2006 ; 24(19): 3187-205.(ガイドライン)

CQ12
AML の化学療法において,どのような場合に腫瘍崩壊症候群の予防を実施すべきか

推奨グレードカテゴリー2A
化学療法開始前に末梢白血球数と血清乳酸脱水素酵素値,腎機能に基づきリスク分類をおこない,リスクに応じた腫瘍崩壊症候群の予防を行うことが推奨される。

解説

腫瘍崩壊症候群(tumor lysis syndrome:TLS)は腫瘍細胞の破壊により核酸,リン,カリウムなどが血液中に一気に放出され,高尿酸血症,高リン血症,高カリウム血症状態となり,急性腎不全や呼吸不全,場合によっては心停止が引き起こされる症候群である1)。AML でのTLS 発症頻度は17%と報告されている2)。TLS 診療ガイダンスでは,白血球25,000/μL 未満かつ乳酸脱水素酵素が基準値上限の2 倍未満は低リスク,白血球25,000/μL 未満かつ乳酸脱水素酵素が基準値上限の2 倍以上,あるいは白血球25,000/μL 以上100,000/μL 未満は中間リスク,白血球100,000/μL 以上は高リスクに分類される1)。腎障害時には1 段階上方へ調整される。低リスクではモニタリングのもと通常量の補液を行う。中間リスクでは大量補液に加えキサンチンオキシダーゼ阻害薬が使用される。従来薬アロプリノールは腎障害時に薬物蓄積毒性を生じる。フェブキソスタットは軽度から中等度の腎機能低下時にも用量調整を要せず使用可能で,2016 年に「がん化学療法に伴う高尿酸血症」に対する適応追加が承認された。Tamura らはTLS 中間リスク以上のがん患者(急性白血病を含む)においてアロプリノール300 mg/日とフェブキソスタット60 mg/日のランダム化比較試験をおこない,血清尿酸値の濃度曲線下面積でアロプリノールに対するフェブキソスタットの非劣性が示された3)。高リスクでは大量補液に加え尿酸オキシダーゼであるラスブリカーゼが使用される。Ishizawa らによれば,AML を含む成人造血器腫瘍50 例にラスブリカーゼ0.15 mg/kg または0.20 mg/kg が5 日間投与され,血清尿酸値は投与後4 時間以内に急激に低下し,その後も尿酸値はコントロールされ,有効率は全体で98%であった4)。芽球が急激に増加する場合,すでに高尿酸血症を生じている場合,腎障害時にはラスブリカーゼの使用が考慮されるべきである5)。メタアナリシスの結果から,白血球増多に対して機械的に白血病細胞を除去するアフェレーシスは早期死亡を減少させない6)

参考文献

1)
腫瘍崩壊症候群(TLS)診療ガイダンス,日本臨床腫瘍学会編,金原出版,東京,2013.(ガイドライン)
2)
Montesinos P, et al. Tumor lysis syndrome in patients with acute myeloid leukemia : identification of risk factors and development of a predictive model. Haematologica. 2008 ; 93(1): 67-74.(3iD)
3)
Tamura K, et al. Efficacy and safety of febuxostat for prevention of tumor lysis syndrome in patients with malignant tumors receiving chemotherapy : a phase III, randomized, multi-center trial comparing febuxostat and allopurinol. Int J Clin Oncol. Int J Clin Oncol. 2016 ; 21(5): 996-1003.(1iiD)
4)
Ishizawa K, et al. Safety and efficacy of rasburicase(SR29142)in a Japanese phase II study. Cancer Sci. 2009 ; 100(2): 357-62.(2D)
5)
NCCN Clinical Practice Guidelines in Oncology. Acute Myeloid Leukemia. Version 3. 2020-December 23, 2019.(ガイドライン)
6)
Oberoi S, et al. Leukapheresis and low-dose chemotherapy do not reduce early mortality in acute myeloid leukemia hyperleukocytosis : a systematic review and meta-analysis. Leuk Res. 2014 ; 38(4): 460-8.(1A)

CQ13
AML において中枢神経白血病の予防は勧められるか

推奨グレードカテゴリー2A
AML では中枢神経系白血病の発症頻度が低く,無症状の症例に対して予防的に抗がん薬を髄腔内投与する適応はない。単球系への分化を示す症例,mixed phenotype,末梢血白血球数が4 万/μL を超える症例,髄外白血病では神経症状がみられなくても寛解に到達した時点で腰椎穿刺によるスクリーニングが考慮される。

解説

中枢神経系白血病は,白血病細胞が脳軟膜に浸潤し,通常髄膜白血病として発症するが,AMLでの発症頻度は5%以下と報告されている1, 2)。寛解後療法としてAraC 大量療法や同種造血幹細胞移植が行われた場合その発症頻度は低下するとの報告と,AraC 大量療法でも発症頻度は変わらないとする報告がある3, 4)。中枢神経系白血病の予防治療の前方視的研究は1986 年のthe Medical Research Council(MRC)1)から報告されたものと1992 年the Southwest Oncology Group(SWOG)5)からの2 報のみである。前者ではAraC とMTX,後者ではAraC の髄腔内投与が行われたが,中枢神経再発の頻度は変わらなかった。このようにAML では中枢神経系白血病の発症頻度は低く,予防治療の有効性も確認されていない。National Comprehensive Cancer Network(NCCN)ガイドラインやEuropean LeukemiaNet(ELN)では,中枢神経系白血病の予防治療は通常推奨されないが,単球系への分化を示す症例,mixed phenotype,末梢白血球数が4 万/μL を超える症例,髄外白血病,では神経症状がみられなくても寛解に到達した時点で腰椎穿刺によるスクリーニングが考慮されるべきとしている6, 7)。中枢神経白血病が発症した場合の治療は,ELN ではAraC 40〜50 mg の週2〜3 回髄腔内投与が推奨されている7)。また,薬剤性の髄膜炎を予防するためステロイドの投与も記載されている。

参考文献

1)
Rees JK, et al. Principal results of the medical research council’s 8th acute myeloid leukemia trial. Lancet. 1986 ; 2(8518): 1236-41.(1iiD)
1)
Castagnola C, et al. The value of combination therapy in adult acute myeloid leukemia with central nervous system involvement. Haematokogica. 1997 ; 82(5): 577-80.(3iD)
3)
Martínez-Cuadrón D, et al. Central nervous system involvement at first relapse in patients with acute myeloid leukemia. Haematologica. 2011 ; 96(9): 1375-9.(3iD)
4)
Rozovski U, et al. Incidence of and risk factors for involvement of the central nervous system in acute myeloid leukemia. Leuk Lymphoma. 2015 ; 56(5): 1392-7.(3iiiA)
5)
Morrison FS, et al. Late intensification with POMP chemotherapy prolongs survival in acute myelogenous leukemia-Results of a Southwest Oncology Group study of rubidazone versus adriamycin for remission induction, prophylactic intrathecal therapy late intensification, and levamisole maintenance. Leukemia. 1992 ; 6(7): 708-14.(1iiD)
6)
NCCN Clinical Practice Guidelines in Oncology. Acute Myeloid Leukemia. Version 3. 2020-December 23, 2019.(ガイドライン)
7)
Döhner H, et al. Diagnosis and management of AML in adults : 2017 ELN recommendations from an international expert panel. Blood. 2017 ; 129(4): 424-47.(ガイドライン)

CQ14
腫瘤形成性AML に対して通常の寛解導入療法を行うのは妥当か

推奨グレードカテゴリー2B
腫瘤形成性AML に対しては孤発性であっても通常の寛解導入療法が考慮される。

解説

腫瘤形成性AML の腫瘤は骨髄球系の白血病細胞から成り,緑色を呈することから緑色種(chloroma)と称される。myeloblastoma,monoblastoma,granulocytic sarcoma とも記述されていたが,WHO 分類(2017)では骨髄肉腫(myeloid sarcoma)と記載されている。骨髄肉腫の発症頻度は3%程度1)で,白血病の発症時に出現することが多いが,初発や再発の前駆症状として出現することもある。また,末梢血や骨髄での芽球増加とともに生じる場合と孤発性に生じる場合がある。骨髄肉腫は発症頻度も低いことから,治療法についての前方視的研究は行われておらず,症例報告を取りまとめた後方視的な報告がほとんどである。Imrie らは7 例の自験例を含めた孤発性骨髄肉腫90 例を文献的に検討し,診断時に化学療法を施行することが有意に白血病への進展割合を減じ(41% vs 71%),50%生存期間を延長させた(25 カ月vs 13 カ月)と報告した2)。YamauchiとYasuda は,2 例の自験例を含めた74 例の骨髄肉腫の治療成績を文献的に検討し,切除や放射線照射といった局所療法施行例はAML に準じた化学療法施行例より有意に短期間で白血病に進展したと報告した3)。以上から,腫瘤形成性AML に対しては単独発症であっても早期に化学療法を実施することが考慮される。National Comprehensive Cancer Network(NCCN)ガイドラインやEuropean LeukemiaNet(ELN)においても孤発性骨髄肉腫腫に対して化学療法が推奨されている4, 5)。なお,孤発性骨髄肉腫腫の予後については相反する報告がなされている。Reinhardt らは小児孤発性骨髄肉腫34 例と通常のAML 710 例とを後方視的に解析・比較し,5 年無イベント生存割合は前者で19%,後者で48%であった(p<0.03)。5 年推定全生存割合は前者で44%,後者で55%あった6)。Tsimberidou らは孤発性骨髄肉腫23 例のうち通常の化学療法を受けた16 例と通常のAML 1,720 例とを後方視的に解析・比較し,完全寛解割合,2 年の無イベント生存割合と全生存割合に差がなかったことを示した7)

参考文献

1)
Muss HB, et al. Chloroma and other myeloblastic tumors. Blood. 1973 ; 42(5): 721-8.(3iD)
2)
Imrie KR, et al. Isolated chloroma : the effect of early antileukemic therapy. Ann Intern Med. 1995 ; 123(5): 351-3.(3iiiA)
3)
Yamauchi K, et al. Comparison in treatments of nonleukemic granulocytic sarcoma : report of two cases and a review of 72 cases in the literature. Cancer. 2002 ; 94(6): 1739-46.(3iiiD)
4)
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CQ15
AML における微小残存病変の評価として何が勧められるか

推奨グレードカテゴリー2B
AML における微小残存病変のモニタリングに経時的な疾患特異的キメラ遺伝子やWT1 遺伝子のmRNA 発現定量が考慮される。

解説

微小残存病変(minimal residual disease:MRD)の正確な評価は,再発の予測や造血細胞移植を含む治療戦略の個別化に有用な情報となる。MRD 評価法として,主に,RQ-PCR 法(real-time quantitative polymerase chain reaction)による疾患特異的遺伝子発現定量とフローサイトメトリによる特異的細胞表面マーカー解析(multi-color flow cytometry)がある。Corbacioglu らはCBFB-MYH11 陽性AML52 例を後方視ならびに前方視的に解析した。地固め療法中の骨髄サンプルの少なくとも一回CBFB-MYH11 mRNA 発現値が陰性化した群の2 年無再発生存割合(79%)は陽性例(54%)より有意に良好で(p=0.035),再発を予測できることを報告した1)。Yin らはCBF 白血病 278 例[t(8;21)163 例,inv(16)115例]において治療経過中のキメラ遺伝子 mRNA発現値を前方視的に解析した。寛解導入療法第1 コース終了時点での骨髄RUNX1-RUNX1T1 mRNA 発現値が3 log を超える減衰例で再発割合が4%と最も低く,また末梢血CBFB-MYH11発現値が10 コピー数未満の例で再発割合が21%と最も低いことが示された2)。Wilms’ tumor-1(WT1)はAML の約9 割に高発現し,非特異的ではあるが汎用性は高い3)。Miyawaki らによる後方視的検討において,完全寛解に到達したAML 50 例で,導入療法終了後WT1 mRNA 陽性群の再発割合は74%,陰性群では40%,地固め療法終了後WT1 mRNA 陽性群の3 年無病生存割合,3 年全生存割合はそれぞれ20%,43%,陰性群ではそれぞれ50%,70%であった3)。WT1 mRNA 値は寛解後再発,無病生存,全生存と相関することが示唆された。Loken らは小児AML249 例において寛解導入療法後,治療終了後の骨髄検体を用いてMRD をフローサイトメトリ法により前方視的に評価した。188 例の寛解例のうちMRD 陽性は46 例,導入療法1 コース後のMRD 陽性例,陰性例での3 年の再発危険割合はそれぞれ60% ,29%(p<0.001),3 年の無再発生存割合はそれぞれ30% ,65%(p<0.001)であった4)。Inaba らは小児・思春期の新規発症AML 202 例の骨髄検体を用いてフローサイトメトリ法によりMRD を前方視的に評価した。寛解導入療法後のMRD が5 年無イベント生存割合(第1 コース終了後MRD 陽性率1%以上29%,0.1%未満73%)に関連した5)。なお,マルチカラーフローサイトメトリ法はわが国では保険適用がない。以上から,疾患特異的キメラ遺伝子やWT1 遺伝子のmRNA 発現定量によるMRD の経時的な評価が考慮される。しかし,MRD 評価のための遺伝子発現定量検査は未だ標準化されていない。

参考文献

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CQ16
AML に対するGO の適切な使用法は何か

推奨グレードカテゴリー2A
再発または難治性のCD33 陽性AML に対して,単剤で,少なくとも14 日間の投与間隔をおいて,2 回投与する。

解説

ゲムツズマブ オゾガマイシン(gemtuzumab ozogamicin:GO)は抗CD33 抗体にカリケアマイシンが結合した抗体薬物複合体である。3 つの単アーム第Ⅱ相試験にて60 歳以上の再発AML にGO が投与され,GO 単剤での全奏効割合は26%(完全寛解15%を含む)であったことから,2000 年に米国で,2005 年にはわが国でGO の発売が承認された1)。同試験の最終報告として,成人再発AML(年齢中央値61 歳,20〜87 歳)において全奏効割合は26%(完全寛解13%を含む)で,奏効例の50%生存期間は12.6 カ月であった2)。28 日以内の早期死亡は16%にみられ,本薬に特徴的な肝静脈閉塞症は非移植症例の0.9%,GO 投与後移植症例の17%にみられた2)。本邦でも再発・難治AML 対する第Ⅰ/Ⅱ相試験が行われ3),用量規定毒性は肝障害で,推奨用量は9 mg/m2(14 日空けて2 回投与)であった。さらに,完全寛解が25%,形態学的寛解が5%に得られた。しかし,その後米国で未治療AML に対する第Ⅲ相ランダム化比較試験が行われ,シタラビンとダウノルビシンによる寛解導入療法へのGO の併用効果並びに地固め療法後のGO の追加効果が認められなかったことより4),2010 年に米国で本薬の承認取り下げが行われた。その後,Castaigne らによる第Ⅲ相ランダム化比較試験ALFA-0701 では新規発症AML 271 例に対してAraC+DNR にGO 3 mg/m2 3 回投与(少量分割,第1,4,7 日)の併用効果が検討された。GO 併用群では非併用群に比し主要評価項目である無イベント生存割合が有意に改善された(2 年推定無イベント生存割合41% vs 17%,50%無イベント期間15.6 カ月vs 9.7 カ月)5)。Amadori らによる第III 相ランダム化比較試験AML-19 では標準的寛解導入療法が適応とならない61 歳以上の高齢者AML 237 例に対してGO と支持療法が比較された。寛解導入療法としてGO は6 mg/m2 と3 mg/m2 が分割投与され,続けて2 mg/m2 が4 週ごとに投与された。1 年の全生存割合はGO 群で24%,支持療法群で10%,50%生存期間はGO 群で4.9 カ月,支持療法群で3.6 カ月と有意に改善された6)。これらを受け2017 年GO は米国で再承認された。わが国におけるGO の適応疾患は再発または難治CD33 陽性AML で,他の再寛解導入療法の適応がない以下のいずれかに該当する。すなわち,①再寛解導入療法(シタラビン大量療法等)に不応あるいは抵抗性があると予測される難治AML,② 60 歳以上の初回再発患者,③再発を2 回以上繰り返す患者,④同種造血細胞移植後の再発患者である。GO の投与回数は,少なくとも14 日間の投与間隔をおいて,2 回とし,1 回量は9 mg/m2 である。また,本剤は他の抗悪性腫瘍剤と併用しない。

参考文献

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2 急性前骨髄球性白血病
(acute promyelocytic leukemia:APL)

総論

1.疾患概念

急性前骨髄球性白血病(acute promyelocytic leukemia:APL)は急性骨髄性白血病(acute myeloid leukemia:AML)の一病型である。骨髄および末梢血液において独特の細胞形態を有する前骨髄球の腫瘍性増殖が観察される。正常造血の抑制による貧血,感染症および出血に加えて,APL 細胞に由来する線溶亢進型播種性血管内凝固(disseminated intravascular coagulation:DIC)による強い出血傾向を特徴とする。大半の症例においてt(15;17)(q22:q21)由来のキメラ遺伝子PML-RARA が陽性である1, 2)。AML の10〜15%を占め,30〜50 歳代に多く,60 歳以上で減少する。抗がん薬治療後の二次性 APL 症例も少ないながら経験される。染色体転座t(15;17)由来のPML-RARαキメラ蛋白に対する分子標的薬である全トランス型レチノイン酸(all-trans retinoic acid:ATRA)と亜ヒ酸(arsenic trioxide:ATO)の登場によりAPL の治療成績は飛躍的に向上した3)

2.分類

French-American-British(FAB)分類のM3 およびM3 variant(M3v)に相当する。M3 は豊富なアズール顆粒を有し,核不整が強く,またアウエル小体を多数認めるファゴット細胞が出現するので形態診断は容易である。一方,M3v は顆粒やアウエル小体を欠き,形態診断は困難なことが多く,白血球数も増加例が多い。芽球がMPO 強陽性でDIC を伴う場合には疑うことが重要である。M3 はCD13,CD33 陽性,HLA-DR,CD34 陰性である。M3v はHLA-DR,CD34 陽性が多い。また,T 細胞抗原であるCD2 陽性も多い。

WHO 分類(2017)では反復性染色体異常PML-RARA を伴うAPL とされる1)。APL の治療において最も重要な点は,ATRA やATO の有効性の有無である。細胞形態によりAPL と診断される症例の92%はt(15;17)陽性である。複雑核型などを含めると PML-RARA 陽性例は 98%を占める2)。残るわずかな症例の多くは,ZBTB16 などの特定の遺伝子が17 番染色体上のRARA と転座する亜型であり(表1),variant RARA translocations とされる1)。PML-RARA のFISH 検査で融合シグナルは陰性であるが,RARA を3 シグナル認めるときは他のキメラ遺伝子の存在を疑って検索する必要がある。ATRA の有効性は染色体転座により異なり,t(11;17)/PLZF(ZBTB16)-RARAとt(17;17)/STAT5B-RARAには無効とされる。ATOは PMLを標的とし,PML-RARA 陽性例のみ有効である。したがって,APL の診断では,FISH 法やRT-PCR 法によりPML-RARA を早期に確認することが重要である。また,M3v は形態診断が困難な場合が多く,PML-RARA の検出は必須である。

表1 APL の染色体転座に由来する融合遺伝子とATRA および亜ヒ酸の反応性

t(15;17)転座に加えて,その他の遺伝子異常がAPL の発症に関与している可能性が高い。最近の網羅的遺伝子解析により165 例の診断時APL 細胞において,FLT3-ITD(27 %),FLT3(16%),WT1(14%),NRAS(10%),KRAS(4%),ARIA1A(4.8%),ARID1B(3%)の遺伝子変異を認めている4)。FLT3-ITD はM3v や白血球高値,PML の切断点bcr3 と相関する。これらの主にシグナル伝達経路の活性化変異はPML-RARA と協調して発症に関与していると考えられる。興味深いことに,他のAML で頻度が高いDNMT3A,NPM1,TET2,ASXL1 およびIDH1/2 などの異常の頻度はAPL では低い。

3.予後

APL の治療成績はATRA の登場により飛躍的に向上した。さらに,ATO はATRA 療法後の再発例に有効で,高い再寛解が得られる。最近,初発例における両者の併用療法の高い有用性が報告されている。

ATRA と化学療法による治療では,70 歳未満では90%以上の完全寛解が期待される3)。非寛解の主因はDIC による臓器出血とAPL 分化症候群(differentiation syndrome:DS)である。ATRA と化学療法による初回治療例では治療抵抗例は稀である。化学療法による2〜3 コースの地固め療法中の骨髄抑制期の感染症による非再発死亡(non-relapse mortality:NRM)が特に高齢者に少なからず経験される。また,25%前後の累積再発(cumulative incidence of relapse:CIR)があり,大きな課題である。再発後はATO により80〜90%以上に再寛解が得られる。ATRA と化学療法による無再発生存割合(relapse-free survival:RFS)は60〜80%,全生存割合(overall survival:OS)は80%前後が期待される。60 ないしは70 歳以上の高齢者では出血や感染症などの合併症が多く,年齢とともに寛解率は低下する。また,地固め療法中の感染症死も高齢者に多い。

ATRA と化学療法におけるAPL 治療の課題は,DIC に伴う臓器出血とDS による寛解導入療法中の早期死亡,地固め療法中の骨髄抑制期の感染症死および再発である。APL の無病生存に対する予後因子は年齢と治療前白血球数である。約1/4 を占める治療前白血球数10,000/μL 以上例が高リスク群である5)。白血球数10,000/μL 以下が標準リスクとされる。治療前血小板数40,000/μL 以上は低リスク,血小板数40,000/μL 以下は中間リスクとする分類もあるが6),一般に高リスクと残りの標準リスクに分けて治療が行われる。初発例に対するATRA とATO 併用療法における予後因子はまだ確立されていないが,白血球数によるリスク分類により層別化治療が行われている。また,CD56 陽性は白血球数とは独立した再発の予後不良因子である7)。CD56 陽性APL は全APL の11〜15%に認められ,ATRA と化学療法実施例におけるCIR はCD56 陽性例で有意に高かった。接着因子CD56 陽性例では髄外再発も多いとされる。

骨髄細胞のPML-RARA は分子レベルの寛解の判定に有用である。寛解時には半数が陽性であるが,地固め療法終了時には陰性化させる必要がある8)。経過観察時に再陽性化例は分子レベルの再発として早期の治療再開が勧められる。

ATRA と化学療法の課題はATO の初期治療への導入により改善される可能性が高い(国内保険適用外)。ATO は骨髄抑制が軽く,寛解導入中の出血や地固め療法中の感染症が少ない。さらに,PML-RARαキメラ蛋白のATRA との相乗的な分解作用によりCIR の低下が期待される。ATRA とATO によりAPL 治療には抗がん薬の化学療法は不要ではないかという夢のある考え方もある。

参考文献

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アルゴリズム

APL の診断(CQ1)ではFISH やRT-PCR 法によるPML-RARA の検出が重要である。t(15;17)以外の転座では全トランス型レチノイン酸(ATRA)や亜ヒ酸(ATO)の反応性が異なるからである。APL の初期治療においては凝固異常に伴う脳出血と肺出血による早期死亡が非寛解の主因となるので凝固検査を頻回に行う必要がある。APL の無病生存割合(disease-free survival:DFS)における高リスク群は治療前白血球数10,000/μL 以上である。

初発APL の寛解導入療法(CQ2)ではATRA と化学療法の併用が標準治療である。初回寛解導入療法では治療抵抗例はほとんどなく,出血とAPL 分化症候群などによる早期死亡が非寛解の主因である。したがって,出血予防(CQ3)とAPL 分化症候群対策(CQ4)が重要である。最近,初発APL の寛解導入および地固め療法におけるATRA とATO の併用療法の高い有効性が報告されている(CQ1)(国内保険適用外)。

血液学的寛解が得られた後,2 ないし3 コースの化学療法からなる地固め療法(CQ5)を行い,RQ-PCR 法を用いた骨髄細胞のPML-RARA 陰性化による分子生物学的寛解への到達を目指す。地固め療法におけるATRA の併用やATO の導入が試みられている。

維持療法(CQ6)としての多剤併用化学療法は予後を改善しない。ATRA 単独療法やATRA にメトトレキサート(MTX)/メルカプトプリン(6MP)を併用した維持療法の有効性が報告されているが,その効果は地固め療法までの治療にも影響される。タミバロテン(Am80)とATRA による維持療法の比較試験では高リスク群においてAm80 が優れていた。

再発時(CQ7)の第一選択はATO 治療である。血液学的再発では出血やAPL 分化症候群も合併しやすく,PML-RARA のみ陽性の分子生物学的再発のうちに治療を行うのがよい。再寛解後(CQ8),亜ヒ酸による地固め療法を行い,骨髄PML-RARA が陽性ならば同種造血幹細胞移植,陰性化すれば自家造血幹細胞移植が勧められる。移植の適応がない場合はATO 治療後の再発例にも有効なゲムツズマブ オゾガマイシン(GO)が勧められる。

その他,高齢者(CQ9)のAPL の治療についても記述する。

CQ1
初発APL の治療開始前に行うべき検査と予後因子は何か

推奨グレードカテゴリー2A
FISH 法やRT-PCR 法によるPML-RARA の早期診断が勧められる。
推奨グレードカテゴリー2B
臓器出血による早期死亡の予防のために頻回の凝固検査が勧められる。
推奨グレードカテゴリー1
予後因子である治療前白血球数とCD56 により治療戦略を立てることが勧められる。

解説

APL の治療において最も重要な点は,全トランス型レチノイン酸(ATRA)や亜ヒ酸(ATO)の有効性の有無である1)。細胞形態や細胞化学により APLと診断される症例の大半はt(15;17)陽性である。複雑核型などでマスクされる例も含めて,ATRA,ATO ともに有効なPML-RARA 陽性例は98%を占める。残るわずかな症例の多くは,ZBTB16 などの特定の遺伝子が17 番染色体上の RARA と転座する亜型である 2)。ATRA の有効性は染色体転座によって異なり,t(11;17)/PLZF(ZBTB16)-RARAとt(17;17)/STAT5B-RARAには無効である。ATOは PMLを標的とするのでPML-RARA 陽性例のみ有効である。したがって,APL においては,FISH 法やRT-PCR 法によりPML-RARA を早期に検出することが重要である。また,M3v は形態診断が困難な場合も多く,PML-RARA の検出は必須である。さらに,PML-RARA はその後の微少残存病変の検出に欠かせない。地固め療法後の有無は治療方針を左右するので診断時にその有無を確認する必要がある3)

初発APL のATRA と化学療法による治療では治療抵抗例はほとんどなく,出血とAPL 分化症候群(DS)による早期死亡が非寛解の主因である1)。DS を予測する指標はないが,早期発見に努めて早期治療を行う必要がある(CQ3)。また,頻回に凝固検査を行って出血の予防を行うことが重要である(CQ4)。

APL の無病生存に対する予後因子は治療前白血球数である。ATRA と化学療法の併用における高リスク群は白血球数10,000/μL 以上である4, 5)。治療前血小板数40,000/μL 以上は低リスク,血小板数40,000/μL 以下は中間リスクとする分類もあるが5),一般に高リスクと残りの標準リスクに分けて治療が行われる。初発例に対するATRA とATO 併用療法における予後因子はまだ確立されていないが,白血球数によるリスク分類により層別化治療が行われている。また,白血球数と独立した再発の予後不良因子としてCD56 陽性がある6, 7)。CD56 陽性APL は11〜15%に認め,ATRA と化学療法における累積再発率(cumulative incidence of relapse:CIR)はCD56 陰性例と比較してCD56 陽性例で有意に高かった。

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CQ2
初発APL の寛解導入療法として何が勧められるか

推奨グレードカテゴリー1
初発APL の初回寛解導入療法として,ATRA とアントラサイクリン系を主体とした化学療法の併用が勧められる。
推奨グレードカテゴリー1
初発APL の初回寛解導入療法において,ATRA と亜ヒ酸を併用した治療はATRA とアントラサイクリン系を主体とした化学療法に遜色はない(国内保険適用外)。

解説

上海の研究グループがAPL 例に対し全トランス型レチノイン酸(ATRA)単剤での高い完全寛解率を報告し1),ヨーロッパ,米国,本邦の研究グループが,大規模臨床試験でその優れた治療成績を確認して以来2-4),ATRA と化学療法の併用は初発APL の標準治療として定着している。初発APL の寛解導入療法として,ATRA にアントラサイクリン系薬剤を主体とした化学療法を併用した場合,CR 率は90〜95%に達する。

ATRA とアントラサイクリン系薬剤に加えて,シタラビン(AraC)を追加する必要性についての結論は出ていない。ヨーロッパAPL2000 研究では,治療前白血球数10,000/μL 以下の初発APL を対象に,AraC 追加の有無による比較試験を行い,CR 率は同等であったものの,2 年累積再発率(cumulative incidence of relapse:CIR),EFS,全生存割合(OS)いずれもAraC 併用群が有意に優れていたと報告した5)。一方,このAPL2000 研究とアントラサイクリン系のみをATRA に併用するPETHEMA 研究(AIDA 療法)との統合解析では,白血球数10,000/μL 以下の症例ではPETHEMA 治療の方が3 年CIR は有意に低かった6)

本邦JALSG(Japan Adult Leukemia Study Group)で行われたAPL204 試験では,治療前白血球数と末梢血APL 細胞数(骨髄芽球+前骨髄球数)に応じて併用する化学療法を層別化する寛解導入療法を行い,良好な治療成績を得た。本試験で用いられたプロトコールは本邦における現時点での初発APL に対する標準治療と考えられる。しかしながら,治療前白血球数10,000/μL 以上の群の治療成績は十分なものでなく,この高リスク群への治療アプローチは今後の課題である7)

近年,ATRA+ATO 併用療法の有効性と安全性について検討した第Ⅲ相比較試験の結果が2 つのグループから報告されている。GIMEMA を中心とするグループは,18〜71 歳の低〜中間リスクの初発APL を対象に,AIDA 療法に対するATRA+ATO 併用療法の非劣性を検証し,CR 率で有意差はみられなかったものの,2 年EFS の非劣性のみならず,直接比較でも50 カ月のEFS,OS,CIR ともATRA+ATO 併用療法の方が有意に良好な成績であった。有害事象の比較では,ATO 併用群で血液毒性および感染症の発現率は低く,QTc 延長・肝毒性の発現率は高かった8, 9)。英国MRC は,16〜77 歳のすべてのリスクの初発APL を対象に同様の比較試験を行い,CR 率で有意差はみられなかったが,血液学的寛解後4 年のCIR はATRA+ATO 併用療法の方が有意に良好な治療成績であった10)。MD アンダーソンがんセンターからも初発APL に対して,ATRA とATO 併用による良好な治療成績が報告されている11)。2017 年12 月現在,ATO は初発APL に対する保険適用はないが,ATRA とATO の併用療法は,ATRA とアントラサイクリン系を主体とした化学療法に遜色はないと考えられる。

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CQ3
初発APL の寛解導入療法におけるDIC 対策として何が勧められるか

推奨グレードカテゴリー2A
寛解導入療法中の出血予防には,血小板輸血により血小板数30,000〜50,000/μL 以上,凍結血漿によりフィブリノゲン150 mg/dL 以上に保つ補充療法が勧められる。
推奨グレードカテゴリー2A
ヘパリンによる抗凝固療法の効果は証明されていない。
推奨グレードカテゴリー2A
ATRA とトラネキサム酸などによる抗線溶療法の併用は,血栓症の危険が増すため勧められない。
推奨グレードカテゴリー3
遺伝子組換えトロンボモジュリンによる治療は検討に値する。

解説

APL では,その細胞中に含まれる組織因子やcancer procoagulant による,外因系凝固の活性化とともに,細胞表面のannexinⅡ高発現による線溶系の活性化が同時に起こっており,主として出血傾向の強い線溶亢進型のDIC が出現する。

初発APL の寛解導入療法での非寛解の最大の原因はDIC による臓器出血である。JALSG APL97 研究では非寛解例の半数以上が脳出血などの臓器出血による早期死亡であった1)。スウェーデンの疫学調査でも初発APL の多数例が臓器出血により早期死亡していると報告されている2)

JALSG APL97 研究の臓器出血に関するサブ解析では,臓器出血の高リスク因子は低フィブリノゲン血症(<100 mg/dL),白血球数高値(>20,000/μL)および全身状態(performance status:PS)2〜3 であった1)。APL のDIC に対しては,血小板輸血により血小板数をできれば50,000/μL 以上,少なくとも30,000/μL 以上,凍結血漿によりフィブリノゲン150 mg/dL 以上を目標とする補充療法が推奨される。

ATRA が登場する以前の化学療法時代に,臓器出血予防として,血小板およびフィブリノゲンの補充療法のみ,ヘパリンによる抗凝固療法,トラネキサム酸等による抗線溶療法の3 群による後方視的比較解析が行われたが,寛解率,出血による早期死亡率に有意差を認めなかった3)。PETHEMA 研究では,トラネキサム酸はATRA と併用することで血栓症のリスクが増大する傾向が示されている4)。低分子ヘパリン,ダナバロイドナトリウム,メシル酸ガベキサートやメシル酸ナファモスタットの合成蛋白分解酵素阻害薬による抗凝固療法については,大規模症例集積報告や比較試験の報告はない。

遺伝子組換えトロンボモジュリン(rTM)による治療は,実地診療下でのAPL 由来DIC 患者に広く使用されている。rTM は,APL 細胞表面のannexinⅡの発現量を減少させるとともに,トロンビンの存在下でプロテインC を活性化し,凝固反応を抑制することから,APL に対するDIC に投与することは理にかなっている。少数例での後方視的検討では,rTM によりDIC からの早期離脱や輸血量の低減効果が報告されている5)

ATRA 自体もAPL の凝固異常を直接および間接的に改善することから,臨床的にAPL が疑われた場合にはPML-RARA の結果を待たずに早期にATRA を含む治療を開始することは出血予防につながる6)

参考文献

1)
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CQ4
APL 分化症候群の治療は何が勧められるか

推奨グレードカテゴリー2A
APL 分化症候群(differentiation syndrome:DS)は早期発見と,疑い段階からの副腎皮質ステロイドの早期開始が推奨される。
推奨グレードカテゴリー2A
DS の重症例では,ATRA,ATO の投与を中止する。

解説

APL 分化症候群(differentiation syndrome:DS)は,ATRA やATO 投与によりAPL 細胞のインテグリンの発現が亢進し組織内に遊走しやすくなるとともに,分化誘導に伴って種々のケモカインが放出され,臓器障害をきたすことにより,発症すると考えられている。初発APL でのDS の発生率は2.5〜26%であり,全症例に対する死亡率は0〜3.4%である。DS の発現日(診断日)は,治療開始から中央値7〜11 日(0〜47 日)である。頻度の高い症候は,①頻呼吸,呼吸困難,低酸素血症(SpO2 の低下),②不明熱,③体重増加,④浮腫,⑤血圧低下,⑥急性腎不全,うっ血性心不全,⑦肺浸潤影,胸水,心嚢水(胸部X 線,CT など)である1-3)

寛解導入療法では初診時白血球数の少ない症例でATRA 単独治療中の場合,白血球増加がみられれば速やかに化学療法を追加する。初診時白血球数とDS の発症率の相関については不明である。LPA96 とLPA99 の併合研究では,中等症のDS は初診時白血球数10,000/μL 以上,重症DS は5,000/μL 以上が有意な発症危険因子とされたが1),APL93 研究2),Intergroup 0129 研究3)では有意な因子とはなっていない。BMI 高値は有意な発症危険因子である4)

DS の治療では,できるだけ早期にデキサメタゾン(DEX)10 mg を1 日2 回経静脈的に投与開始することが重要である。呼吸器症状や画像所見の出現したDS やDEX の効果が見られなかった場合は,ATRA や亜ヒ酸(ATO)を休薬する5)。ATRA やATO の再開は症状が完全に消失してからとし,再開時は初回量の75%とし,3〜5 日間症状が再燃しないことを確認してから元の量に戻していく。

APL2000 研究では,ATRA による寛解導入療法時に初診時白血球数10,000/μL を超える症例にDEX 10 mg×2/日を最低3 日間併用したところ,DEX を併用していないAPL93 研究に比べてDS による死亡率が減少したことを報告した6)。またLPA99 研究では,プレドニゾロン0.5 mg/kg/日をday1〜15 まで内服しDS の発症予防効果を検討し,過去のLPA96 研究と比較して発症率が低い傾向がみられた1)。寛解導入療法時のDS 発症予防には,副腎皮質ホルモン投与は有効であると考えられるが,易感染状態を惹起する可能性もあるため,一律の投与には慎重であるべきと考える。

参考文献

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CQ5
初発APL のATRA と化学療法による寛解後の至適な地固め療法は何か

推奨グレードカテゴリー1
3 サイクルのアントラサイクリン系薬剤とシタラビン併用の地固め療法が推奨される。
推奨グレードカテゴリー2B
APL の地固め療法にATRA やATO を組み込むことにより,EFS の改善を期待できる。(ATO は国内保険適用外)

解説

JALSG 臨床研究APL97,APL204 では,寛解後療法として,3 コースのアントラサイクリン系薬剤とシタラビン併用の地固め療法が施行され高いOS を報告している1)

近年,ATO を初発の寛解導入,地固め療法に組み入れることにより,EFS の改善が示された論文が発表されている。North American Leukemia Intergroup Study C9710 の481 例の初発APL の寛解後療法にATO を加えるか加えないかのランダム化比較試験において,ATO 群,ATO なし群で,3 年EFS は,80%と63%であり,EFS は有意に改善をしていた2)。中国,上海グループの同様の研究においても,109 例に対して,ATO を加えた地固め療法と加えない地固め療法を比較している。5 年のEFS は,94.4% vs 54.8%(p=0.0001)であった。OS においても,95.7% vs64.1%(p=0.003)と有意の差を示している3, 4)

また,Italian-German APL0406 Trial では,低リスクの症例において,化学療法フリーにすることにより,より安全に,かつ有害事象を少なくして,治療を完遂できることが示唆されている5)。特に化学療法による有害事象の影響を受けやすい高齢者では福音となる。したがって,初発APL の寛解後療法において,併存疾患があって強力な化学療法を行うことができない場合にはATO+ATRA 併用療法を行うことによる利点があると考えられる(2018 年5 月現在,わが国では初発APL の地固め療法にはATO は未承認である)。

現状では,地固め療法として,アントラサイクリン系薬剤[イダルビシン(IDR),ダウノルビシン(DNR),ミトキサントロン(MIT)]が基本である6)が,これにシタラビン(AraC)またはATRA が併用されている。イタリアのAIDA2000 研究では過去のAIDA0493 研究を改訂し,全例でATRA の併用と高リスク群でのAraC の併用を行ったところ,高リスク群で再発率が有意に減少した7)

参考文献

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Shinagawa K, et al. Tamibarotene as maintenance therapy for acute promyelocytic leukemia : results from a randomized controlled trial. J Clin Oncol. 2014 ; 32(33): 3729-35.(1iiDiv)
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CQ6
初発APL の寛解例における至適な維持療法は何か

推奨グレードカテゴリー2B
地固め療法終了時にRT-PCR 法によるPML-RARA が陰性化している高リスク群では,ATRA またはタミバロテン(Am80)内服を中心とした維持療法が考慮される。

解説

維持療法は,寛解導入療法,地固め療法とセットで考えるべき治療である。イタリアのAIDA0493 研究ではATRA,ATRA/メトトレキサート(MTX)/メルカプトプリン(6MP),MTX/6MP,維持療法なし,の4 群の比較研究が行われたが,12 年無病生存割合(DFS)は4 群に有意差はなかった1)。フランスのAPL93 研究では同じ4 群での比較検討を行っているが,10 年累積再発率はATRA/MTX/6MP 群が最も低く,特に初診時白血球高値群(WBC>5,000/μL)において有効であった2)。また,維持療法なしに比べて,ATRA 単独,MTX/6MP も有効であった。わが国のJALSG APL97 研究では3),6 コースの維持療法として点滴静注による多剤併用化学療法と無治療観察群の前方視的比較研究が実施されたが,両群に有意差はなく,むしろ化学療法群で不良な傾向にあった。この結果より,維持療法としての多剤併用化学療法は推奨できないことが示された。以上より,低リスク群(白血球≦10,000/μL,血小板>40,000/μL),および中リスク群(白血球≦10,000/μL,血小板≦40,000/μL)での最適な維持療法は今後の課題であるが,高リスク群(白血球>10,000/μL)ではATRA 内服を中心とした維持療法を考慮する。

JALSG APL204 研究では,初発APL を対象として,寛解導入療法,3 コースの地固め療法後にATRA またはAm80 の維持療法を比較された。4 年間のRFS として,ATRA 群が84%,Am80 群が91%であったが,高リスク群では,Am80 群が有意にRFS を改善した4)

参考文献

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CQ7
再発APL の至適な再寛解導入療法は何か

推奨グレードカテゴリー1
再発APL の再寛解療法はATO を含むレジメンが第一選択となる。
推奨グレードカテゴリー2B
ATO が有害事象で使用できないとき,ゲムツズマブ オゾガマイシンまたはタミバロテンを含むレジメンの使用を考慮する。

解説

ATRA と化学療法の併用により急性前骨髄球性白血病の初回治療は進歩したが,約15〜20%の患者は再発している。再発時の治療レジメンを選択する場合に,その症例の初回治療レジメンを考慮しなければならない。最近では,ATRA とATO を初回治療にて併用するレジメンも発表されており,今後の再発症例の質も次第に変わってくると思われる。

ATRA をベースとした寛解導入療法施行症例の再発では,ATO の投与により80〜90%の症例で分子生物学的再寛解が得られる1-4)。再発APL に対してATO による寛解導入後自家移植を行うJALSG APL205R プロトコールは,CR 率は,81%であり,5 年のEFS,OS はそれぞれ,65%,77%であった5)

ATO とATRA はin vitro で,APL 細胞に対して相乗的に作用することが知られている。初回ATRA 治療後の再発の小規模なランダム化比較試験において,ATO にATRA を追加した群に予後の改善がみられなかったことから,ATRA 治療後の再発例ではATO にATRA を併用する意義は大きくないと考えられている6)

ATO を使用できない場合,ゲムツズマブ オゾガマイシン(GO)が第一選択となる。分子再発例に対するGO 単剤の投与では,2 回投与で81.8%の症例に分子生物学的再寛解が得られたと報告されている7)。GO は移植後に類洞閉塞症候群をきたす可能性があり,移植予定例には使用を避けるか,移植までに一定期間をあける必要がある。合成レチノイン酸タミバロテン(Am80)については,ATRA 治療後の再発例に対する第Ⅱ相試験で58%の再寛解導入率であったが8),現時点ではATO,GO に次ぐ治療と考えられる。

再発症例の少なくとも5%にCNS 浸潤がみられることから,治療計画を立てる際にはCNS 予防のことを必ず考慮すべきである。CNS 再発をきたしていても,頭痛などの症状はなく,髄液検査の際に気づかれる場合もある。CNS 再発を起こしている場合,多くは,血液学的再発例であるが,分子学的再発のみであったとの報告もある。European APL Group からの報告では,再発例の5.3%にCNS 浸潤が認められたという。CNS 再発を起こしやすい因子としては,初発時45 歳以下,WBC 1 万/μL 以上が抽出された9)

CNS 再発ではメトトレキセート,シタラビン,ハイドロコルチゾンによる髄注を週に1〜2 回,髄液中の芽球が消失するまで実施し,地固めとして追加で6 回程度続けて終了する。髄注で所見が改善しない場合には,全脳脊髄照射や大量シタラビン療法の施行を検討する。

参考文献

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CQ8
ATO によるAPL 第二寛解例の寛解後治療として何が勧められるか

推奨グレードカテゴリー2A
ATO による再寛解APL 症例ではATO による地固め療法後,RQ-PCR 法による骨髄PML-RARA 陰性例には自家移植が勧められる。
推奨グレードカテゴリー2A
寛解後も骨髄PML-RARA 陽性で移植可能症例には同種移植が勧められる。

解説

ATO による再寛解後にATO ベースの寛解後治療を行った場合,1.5 年OS 66%,RFS 56%と一定の長期生存も得られるが,再発も比較的多い1)。ATO による再寛解後,ATO のみによる地固め療法とATO と化学療法の併用による地固め療法のOS を比較した上海グループの研究では後者が有意に優れていた2)。寛解到達後の寛解後療法として移植による地固め療法は有効である。インドの研究で再発APL に対して,ATO,ATO+ATRA にて寛解導入を行い,その後自家移植を行った群と行わなかった群のevent-free survival(EFS)を比較すると,83.3%と34.5%と有意に自家移植群が良かった3)。ATO による再寛解後に移植の適応がない症例には,ATO 治療後の再発例にも有効なゲムツズマブ オゾガマイシン(GO)が勧められる4)

ATO の登場以前にはATRA と化学療法による再寛解導入療法が行われていた。その第二寛解期の自家移植と同種移植を比較したヨーロッパグループのAPL91 とAPL93 研究では7 年全生存割合(OS)が自家移植群59.8%,同種移植群51.8%と自家移植が優れていた5)。無再発生存割合(RFS)は79.4% vs 92.3%と同種移植が良かったが,治療関連死亡(TRM)が6%と39%と同種移植に多かった。EBMT の625 例を解析した結果ではCR2 の5 年無病生存割合(DFS)は,自家移植で51%,同種移植では59%であった6)

以上より,寛解後の骨髄細胞のMRD を評価し,自家移植あるいは同種移植を実施するのがよいと考えられる。移植ソースの選択については,再発までの期間が1 年以内,あるいはMRD が存在する場合は同種移植,再発までの期間が1 年以上でMRD が存在しない場合は自家移植を行うことを推奨されている。移植に不耐容と思われる症例には,ATO の地固めを続けるケースが多い。

現在の本邦における標準的な再発APL に対する治療は,JALSGAPL205R プロトコール7)と考えられる。ATRA および化学療法による治療後に再発したAPL に対し,治癒を目指した治療として,ATO による寛解導入療法,ATO の地固め療法,ハーベスト,自家移植を組み合わせた治療プロトコールである。ハーベストレジメンとして大量シタラビン療法を用い,治療開始18〜22 日の間で1 回または2 回で採取できており,安全に自家移植も施行できている。

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CQ9
高齢者APL の至適な治療方法は何か

推奨グレードカテゴリー2A
全身状態が比較的良好な高齢者に対しては若年者と同様に,治癒を目指した治療を行うが,その強度は若年者より弱めるべきである。
推奨グレードカテゴリー2A
重篤な併存疾患を持ち,アントラサイクリン系抗がん剤の投与が困難な高齢者に対しては,亜ヒ酸をベースにした治療も妥当と考えられる(国内保険適用外)。

解説

高齢者APL は,初発時白血球数が少ない低リスク例が多く,治療反応性は若年者と変わらないものの,感染症などの合併症によって死亡する患者が多い。そのため化学療法の強度を弱めることにより,高齢者APL の治療成績改善が期待される。

PETHEMA グループはATRA とイダルビシン併用の寛解導入療法とアントラサイクリン系抗がん剤中心の地固め療法からなるLPA96 とLPA99 の併合研究を年齢制限なしで行った。60 歳以上の寛解率は良好だったものの,感染症による早期死亡は高率であった1)。GIMEMA グループは地固め療法3 コースからなるAIDA 療法を,60 歳以上では1 コースに減らすことにより,治療関連有害事象を減らし,同等の治療成績を得た2)

ATO は年齢依存の副作用が少なく,高齢者APL に対しても期待される。Intergroup C9710 研究では,地固め療法でATO を単独で追加した群は61〜79 歳の高齢者群でも有意な予後の改善を認めた3)。MD アンダーソンがんセンターは,寛解導入・地固め療法にATO とATRA を併用投与した試験を行い,60 歳以上でも良好な結果を報告している4)。高齢者には,通常の抗がん剤より致命的な有害事象をきたすことの少ないATO ベースの治療を行うのも妥当と考えられるが,2018 年5 月現在保険適用外である。

参考文献

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3 急性リンパ芽球性白血病/リンパ芽球性リンパ腫
(acute lymphoblastic leukemia/lymphoblastic lymphoma:ALL/LBL)

総論

従前は,急性白血病と悪性リンパ腫は,それぞれ骨髄由来とリンパ節由来の腫瘍と考えられ,骨髄にリンパ芽球が浸潤している場合は急性リンパ芽球性白血病(acute lymphoblastic leukemia:ALL),骨髄への浸潤がない場合はリンパ芽球性リンパ腫(lymphoblastic lymphoma:LBL)としていた。

WHO 分類(2008)では,リンパ系腫瘍をB 細胞系とT/NK 細胞t(細胞およびnatural killer:NK 細胞)系とに大別し,正常リンパ系細胞の分化段階と概括対応させて細分類した(表11)。すなわち,ALL/LBL は前駆B 細胞(precursor B-cell)由来と前駆T 細胞(precursor T-cell)由来に分類され,それぞれ,B 細胞リンパ芽球性白血病/リンパ腫とT 細胞リンパ芽球性白血病/リンパ腫と呼ばれ,B 細胞リンパ芽球性白血病/リンパ腫は,非特定型(not otherwise specified)と反復性遺伝子異常を伴う(with recurrent genetic abnormalities)タイプに分類される1)。WHO 分類は2017 年に改訂され,B 細胞系およびT 細胞系にProvisional entity が加わった(表22)。以下の表に,反復性遺伝子異常を伴うB 細胞リンパ芽球性白血病/リンパ腫の細分類も含めて記載する。

表1 ALL/LBL のWHO 分類(2008)
表2 ALL/LBL のWHO 分類(2017)

FAB 分類3)のL3 は,WHO 分類(2017)では成熟B 細胞腫瘍(mature B-cell neoplasms)であるバーキットリンパ腫(Burkitt lymphoma)に包含され,ALL/LBL には含まれていない1)

ALL の初回治療はリンパ系腫瘍に有効性の高い抗白血病薬(抗がん薬)の多剤併用化学療法が主体となり,寛解導入療法,寛解後療法-地固め療法と維持療法,中枢神経浸潤の予防が施行される。

予後因子は,年齢,初診時白血球数,完全寛解までの期間およびPhiladelphia(Ph)染色体ないしt(4;11)である4, 5)。Ph染色体が認められる[B lymphoblastic leukemia/lymphoma with t(9;22)(q34;q11.2); BCR-ABL1]場合は,イマチニブを代表とするチロシンキナーゼ阻害薬の有効性が明らかになっているので6),治療の選択には,Ph 染色体ないしBCR-ABL1 融合遺伝子を探索することが重要である。

参考文献

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アルゴリズム

LBL は,WHO 分類(2017)ではALL と同じカテゴリーに属し,ALL と同じ治療が推奨される(CQ1)。

寛解導入治療の選択は,まずPhiladelphia(Ph)染色体の有無で分類し,Ph 陽性であればBCR-ABL チロシンキナーゼ阻害薬(イマチニブなど)を含む治療が推奨される(CQ2, 3)。Ph 陰性の場合,思春期・若年成人(おおむね30 歳まで)であれば小児プロトコールが推奨される(CQ4),30〜64 歳の一般成人や高齢者(おおむね55〜60 歳以上)の場合は,標準治療は確立されておらず,開発段階にある(CQ5, 6)。マーカーによる選択に関しては,T 細胞性ALL(T-ALL)とB 細胞性ALL(B-ALL)で異なった治療を行うべきであるとの明確な根拠はない(CQ7)。

完全寛解(complete remission:CR)に到達すれば,Ph 染色体の有無や年齢にかかわらず,化学療法剤による中枢神経系(central nervous system:CNS)再発予防は不可欠であるが,全脳照射の適応は限定的である(CQ8)。CR 時あるいはその後の経過での微小残存病変(minimal residual disease:MRD)の観察は有意義であるが(CQ9),成人ALL におけるMRD による層別化治療の成績は明らかではない。寛解後療法として大量シタラビンや大量メトトレキサート(MTX)は適切な治療選択肢である(CQ10)。治療前に縦隔病変の認められるT 細胞性LBL(T-LBL)に対する縦隔照射は局所再発予防目的であるが,必ずしも成功しているとは言い難く,縦隔照射を含まない治療も妥当である(CQ11)。

Ph 陽性症例だけではなくPh 陰性であっても,HLA 一致適合ドナーがいれば,第一CR 期の同種造血幹細胞移植は推奨される(CQ12)。また,減弱前処置による造血幹細胞移植も試みるに値する。一方,第一寛解期で造血幹細胞移植を行わない場合は,維持療法が推奨される(CQ13)。

再発ALL の治療は,前治療歴と再発までの期間を考慮して治療薬剤を選択し,ALL のサブタイプによっては新規薬剤の使用も考慮される(CQ14)。

CQ1
骨髄浸潤のないLBL の治療はALL と同じ治療が推奨されるか

推奨グレードカテゴリー2B
骨髄浸潤の有無にかかわらず,LBL の治療はALL と同様に行うことが推奨される(縦隔病変を有する場合の対応については,CQ11 参照)。

解説

LBL は,生物学的にはALL と同一の疾患であり,骨髄浸潤の割合が25%未満の場合にLBL と診断される。LBL の約80%以上はT 細胞性LBL(T-LBL)が占め,若年男性,縦隔病変を有することが多く,骨髄浸潤を認めない(骨髄芽球比率が5%未満)症例の割合は36〜85%と報告されている1-4)。一方,少数例の検討であるが,B 細胞性LBL(B-LBL)は若年女性,節外病変(特に皮膚病変)を有し,骨髄浸潤を認めない症例が多いことが報告されている5-7)

また,ALL 治療レジメンの適用により,LBL の治療成績は飛躍的に向上したことが報告されているが1),ランダム化比較試験によるエビデンスはない。

成人T-LBL 45 例を対象としたドイツの多施設共同後方視的研究では,ALL レジメンを施行し,7 年全生存割合(OS)および無病生存割合(DFS)はそれぞれ51%,62%であったことを報告した1)。また,成人LBL 33 例を対象とした,MD アンダーソンがんセンターの単施設後方視的研究では,hyper-CVAD/MA 療法(CPA,VCR,DXR,DEX,高用量MTX,高用量AraC)を施行し,3 年無増悪生存割合(PFS)およびOS はそれぞれ66%,70%であった2)。これら2 報告において,骨髄浸潤の有無は予後因子にはならなかった。

参考文献

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CQ2
成人若年者(<65 歳)Ph 陽性ALL に対する初期治療はBCR-ABL チロシンキナーゼ阻害薬(TKI)併用化学療法が推奨されるか

推奨グレードカテゴリー2A
Ph 陽性ALL の寛解導入療法・地固め療法において,TKI は化学療法と併用することにより,高率で持続的な完全寛解をもたらし,生存期間の延長が期待できるため,推奨される。

解説

Ph 陽性ALL は,化学療法単独では予後不良のALL で,同種造血幹細胞移植療法が唯一治癒を期待出来る治療法であった。BCR-ABL チロシンキナーゼ阻害薬(BCR-ABLTKI;以下TKI)が臨床に導入され,治療戦略は変化している。

TKI は,Ph 陽性ALL 発症の原因となるBCR-ABL キナーゼ活性を阻害して抗白血病効果を発揮する。TKI 単独療法でも完全寛解(CR)は得られるが,CR 持続期間は短く,他の治療法との併用が必要となる。イマチニブと既存のALL に対する多剤併用化学療法との併用療法の有効性と安全性を検討するため,国内外で複数の臨床試験が施行された1-13)。これらの多くが,65 歳未満の成人を対象とした臨床第Ⅱ相試験である。寛解導入療法,地固め療法,イマチニブの使用方法が一定ではないため,どの治療法がよいかは判定しがたいが,血液学的完全寛解(complete hematologic response:CHR)率は90%以上,PCR でBCR-ABL1 が検出感度以下となる分子遺伝学的寛解(complete molecular response:CMR)率は19〜52%,第一寛解期での移植施行率は23〜77%で,各試験の長期観察の結果を踏まえ,3 年以上の全生存割合は30〜64%と報告されている(表18-13)

表1 Ph 陽性ALL(<65 歳)に対するイマチニブ併用化学療法国内外の臨床試験成績

LALA-94 14)に代表されるTKI を用いない化学療法に比べ,historical control ではあるものの,イマチニブ併用化学療法は,高いCR 率と生存割合を示している。

UKALLXII/ECOG2993 trial 15)は,441 例の15〜65 歳のPh 陽性ALL に対する一連の前方視的臨床試験の中で,標準的併用化学療法群(266 例)とイマチニブ併用化学療法群(175 例)の治療成績を比較している。イマチニブ併用化学療法群のCR 率92%,移植施行率46%,4 年全生存割合38%,標準化学療法群のCR 率82%,移植施行率31%,4 年全生存割合22%とイマチニブ併用群の有用性が示された。

これらの臨床試験の結果を踏まえ,Ph 陽性ALL の初回寛解導入療法では,イマチニブなど,TKI 併用化学療法が推奨される。

イマチニブ以外のTKI として,ダサチニブ(初発例には本邦未承認)と併用化学療法の第Ⅱ相試験が国内外で施行されている16-18)。併用する化学療法の強度が異なること,対象とする年齢層の違いなどはあるが,その有用性に期待が持たれる。

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CQ3
高齢者(≧65 歳)Ph 陽性ALL に対する初期治療はTKI+ステロイド療法が推奨されるか

推奨グレードカテゴリー2B
高齢者のPh 陽性ALL に対してはTKI+ステロイド療法により寛解率の改善が期待できるため,推奨される。

解説

高齢者Ph 陽性ALL に対するチロシンキナーゼ阻害薬(TKI)であるイマチニブの検討は化学療法との比較が第Ⅲ相試験として行われ,有意な寛解率の向上を認めたが,生存割合の改善は認められていない1)。55 歳以上のPh 陽性ALL を対象とした研究では,寛解導入療法はTKI を投与せず化学療法を行い,地固め療法でimatinib(IMA)を用いている。完全寛解(CR)率72%,1 年全生存割合(OS)66%,1 年無病生存割合(DFS)58%であった2)。Gruppo Italiano Malattie Ematologiche dell’Adulto(GIMEMA)LAL0201B 研究では,61〜83 歳までを対象として寛解導入療法では化学療法を併用せずにステロイド療法およびチロシンキナーゼとしてイマチニブ800 mg投与して,CR 率100%,1 年DFS 48%,1 年OS 74%であった3)。引き続き18 歳以上を対象としたGIMEMA LAL1205 研究では,寛解導入療法では化学療法を併用せずにステロイド療法および第2 世代のTKI であるダサチニブを投与して,CR 率100%,20 カ月DFS 51%,20 カ月OS 69%であった4)。高齢者のPh 陽性ALL に対してはTKI とステロイド療法により早期治療関連死亡がなく安全にCR が得られることが期待されるが,治療抵抗性の遺伝子を獲得する可能性があることから,さらに検討が必要と考えられる。

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CQ4
思春期・若年成人ALL は小児プロトコールでの治療が推奨されるか

推奨グレードカテゴリー2A
思春期・若年成人ALL は,小児プロトコールによる治療が勧められる。

解説

16〜20 歳の未治療ALL 患者での小児プロトコール治療(Children’s Cancer Group:CCG)の成績と成人プロトコール治療(Cancer and Leukemia Group B:CALGB)の成績を後方視的に比較した研究で,完全寛解(CR)率は90%と同じであったが,7 年全生存割合(OS)はそれぞれ67%と46%で有意に小児プロトコール治療が優れていることが報告された。その理由として,ステロイド,ビンクリスチン(VCR),L-アスパラギナーゼ(L-Asp)などの薬剤量が多いことと中枢神経系白血病予防が頻回であることが指摘された1)。同様の後方視的解析は,フランス,オランダ,イギリス,スウェーデンなどでも行われ,同様に小児プロトコールで治療された患者群が良好な生存割合を示した。

小児プロトコール治療と成人プロトコール治療を比較した前方視的研究はないが,PETHEMA ALL96 研究では,小児標準リスクALL 用のプロトコール治療を標準リスクの思春期(15〜18 歳,n=35)および若年成人(19〜30 歳,n=46)ALL に行った。CR 率98%,6 年EFS 61%,6 年OS 68%と良好で,思春期と若年成人間に差はなかった2)

Japan Adult Leukemia Study Group(JALSG)ALL202-U 研究では,15〜24 歳までのBCR-ABL 陰性ALL を対象に小児ハイリスクALL 用のプロトコールによる治療を行った3)。完全寛解率,5 年無病生存割合,5 年全生存割合はそれぞれ94%,67%,73%で,いずれもヒストリカルコントロールより良好な成績であった3)

GRAALL-2003 研究およびPrincess Margaret Hospital による研究では,小児プロトコールのコンセプトをもとに考案したpediatric-inspired protocol,または小児プロトコールを減量したプロトコールを60 歳までの成人に適用した。完全寛解率は93.5%,89%,全生存割合は61%(3.5 年),63%(5 年)と良好であった4, 5)。一方,寛解導入中の死亡率は,前者では45 歳以上の症例で13%(45 歳未満は4%)4),後者では50 歳以上で20%と高く5),45〜50 歳以上の症例に小児型プロトコールを使用することの危険性も示していた。

以上から少なくとも16〜30 歳の症例には小児型プロトコールでの治療が推奨でき,31〜45 歳の症例にも小児型プロトコールにより治療成績が改善する可能性がある。小児型プロトコールにもさまざまな治療強度があり,45 歳以下は一律に減量小児プロトコールによる治療で良いのか,より若年の症例はより治療強度の強い小児プロトコールによる治療を行うべきなのかは今後の検討課題である。

また,小児のALL において重要な予後因子とされているプレドニゾロンprephase に対する反応性(PSL reponse)の成人ALL における予後因子としての重要性に関してはこれまでほとんど検討されていない。Gruppo Italiano Malattie EMatologiche dell’Adulto(GIMEMA)ALL0288 試験では,7 日間のPSL prephase が行われ,評価可能657 例中429 例(69%)に効果が認められ,PSL response 良好例のCR 率は不良例より優っており(87% vs 70%,p=0.001)。PSL response 良好例の8 年CR 持続割合(CCR)は不良例より優っていた(36% vs 24%,p=0.0004)6)。PSL response が予後因子となることを示しているが,成人型の治療が行われており,小児型の治療を行った時にもPSL response が予後不良因子となるかは明らかでない。上述のJALSG ALL202-U 研究ではPSL response 良好例と不良例との間に無病生存割合の明らかな差を認めなかった(p=0.2226)3)

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CQ5
成人(30〜64 歳)Ph 陰性ALL の治療は何が推奨されるか

推奨グレードカテゴリー2B
Ph 陰性 ALL に対する標準的な多剤併用化学療法は開発段階である。

解説

30 歳以上のPh 陰性ALL に対する化学療法の成績だけをまとめた論文は見当たらないが,2000 年以降に発表された200 例以上の成人ALL の治療成績を表1 に示す。完全寛解(CR)率は74〜92%,全例の生存割合は27〜54%である。生存割合に関しては,予後因子を考慮した造血幹細胞移植(stem cell transplantation:SCT)が何らかの形で含まれており,化学療法と移植をパッケージとした治療法の成績と理解すべきである。

表1 大規模成人ALL 治療研究の成績

上記の成績のうち,Ph 陰性例あるいは年齢をサブグループとして抽出した結果を以下に示す。Japan Adult Leukemia Study Group(JALSG)ALL93 におけるPh 陰性例のCR 率,生存割合はそれぞれ83%,39%で,30 歳以上の症例では,72%,21%であった1)。hyper-CVAD 療法(CPA,VCR, DXR, DEX)でのPh 陽性,バードキットタイプ以外の症例では,それぞれ91%,41%であり,40〜59 歳では,80%,30%であった2)。Medical Research Council(MRC)/Eastern Cooperative Oncology Group(ECOG)でのPh 陰性例では,93%,44%であり,35 歳以上のCR 率は89%で,生存割合は30〜39 歳,40〜49 歳,50 歳以上でそれぞれ34%,23%,15%であった3)。Southwestern Oncology Group(SWOG)9400 における30〜49 歳,50〜65 歳のCR 率,生存割合はそれぞれ80%,32%と63%,23%であった4)。JALSG ALL97 では,Ph 陰性群をサブグループとして解析し,CR 率81%,生存割合39%であった。Ph 陰性群の年齢別の成績は,35〜54 歳,55〜64 歳でそれぞれ80%,38%と78%,26%であった5)。JALSG ALL202-O では,25〜64 歳までのPh 陰性ALL を対象として,寛解後療法に大量AraC,大量MTX の両者を用いる群では,完全寛解率,5 年無病生存割合はそれぞれ86%,58%であった6)

2009 年に小児プロトコールに似た治療法を60 歳までの成人Ph 染色体陰性ALL に行った成績が2 編発表され,CR 率は89%以上で長期生存割合も50%を超えている7, 8)。しかし,35 歳ないし45 歳以上の症例での成績は若年者に比して劣っている。その後に小児に似た治療法について忍容性を検証した臨床試験の報告9, 10)があるが,何歳まで小児型プロトコールが有用か,有害事象を考慮して今後のさらなる検証が必要である。

以上から,Ph 陰性群の生存割合は全症例を含む生存割合よりやや良好で,30 歳以上の症例の生存割合は全体よりやや不良であることは示されたが,異なるプロトコールをランダム化して比較した試験はなく,プロトコール間の優劣は不明である。

参考文献

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Takeuchi J, et al. Induction therapy by frequent administration of doxorubicin with four other drugs, followed by intensive consolidation and maintenance therapy for adult acute lymphoblastic leukemia : the JALSG-ALL93 study. Leukemia. 2002 ; 16(7): 1259-66.(3iiA)
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Jinnai I, et al. Intensified consolidation therapy with dose-escalated doxorubicin did not improve the prognosis of adults with acute lymphoblastic leukemia : the JALSG-ALL97 study. Int J Hematol. 2010 ; 92(3): 490-502.(3iDii)
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Rijneveld AW, et al. Intensified chemotherapy inspired by a pediatric regimen combined with allogeneic transplantation in adult patients with acute lymphoblastic leukemia up to the age of 40. Leukemia. 2011 ; 25(11): 1697-703.(3iiiDiv)
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CQ6
高齢者(≧65 歳)Ph 陰性ALL の治療は何が推奨されるか

推奨グレードカテゴリー2B
高齢者のPh 陰性ALL に対する標準的な治療法は開発段階である。
(Ph 陽性の場合の対応については,CQ3 参照)

解説

65 歳以上の高齢者かつPh 陰性ALL を対象とした前方視的試験は限られており1, 2),標準治療は開発段階である。また,65 歳を超えると骨髄非破壊的前処置を用いた同種造血幹細胞移植療法の適応も極めて限られている3)

65 歳以上の高齢者は,若年者に比べ複数の既往歴および合併症を有している割合が高く,化学療法に必要な臓器機能が保たれていない場合も少なくない4)。ドイツのGMALL グループは,65 歳以上の高齢者の84%においてCharlson スコアによる合併症を有することを報告し,その内訳は糖尿病(46%),血管疾患(18%),心不全(15%),慢性肺疾患(12%)であった2)。したがって,この年齢層において一律に治療強度の高い化学療法を行うのは困難であり,comprehensive geriatric assessment(CGA)ツールを用いてfit,unfit,frail に分類し,適切な治療強度の化学療法を選択することが提唱されている2)

比較的若年者と同様に,治癒を目指した治療強度が可能と判断されたfit 患者においては,多剤併用化学療法を選択し,寛解導入療法,地固め療法および維持療法をdose-intensity を保ちながら実施することが重要である5)

一方,unfit およびfrail と判断された場合には,化学療法による治療関連死亡の割合が相対的に高く,薬剤の減量や化学療法の延期を要する割合が高いことに留意する。

65 歳以上の高齢者を対象とした,よくデザインされた多施設共同前方視的試験の実施が求められている。

参考文献

1)
Sancho JM, et al. Results of the PETHEMA ALL-96 trial in elderly patients with Philadelphia chromosome-negative acute lymphoblastic leukemia. Eur J Haematol. 2007 ; 78(2): 102-10.(3iiiDiv)
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CQ7
非若年者Ph 陰性ALL(初発例)において,T 細胞性ALL とB 細胞性ALL は同様の治療方法が推奨されるか

推奨グレードカテゴリー2B
T 細胞性ALL と B 細胞性ALLで同様の治療方法が選択される。

解説

T 細胞性ALL(T-ALL)は全ALL の20%前後にすぎず,過去の臨床試験ではB 細胞性ALL(B-ALL)とT 細胞性ALL の両者を含めて同じ化学療法が行われてきた(ただし,高リスク群を定義する際の初診時白血球数についてはT-ALL でより高い閾値を採用しているものが多い)。近年の大規模臨床試験の結果をみるとT-ALL の治療成績がB-ALL よりも若干優れているというものが多いが,その結果は一様ではない。各研究間で化学療法の内容も大きく異なる。

2000 年以降に発表された症例数100 例以上の臨床試験の結果を一覧すると,例えば最も規模の大きいMRC UKALL XII/ECOG E2993 では5 年全生存割合(OS)がT-ALL で48%,B-ALL で42%とT-ALL が優れているものの有意差を認めなかった1)。この研究では大量シタラビン(AraC)は含まれていないが,大量メトトレキサート(MTX)(3 g/m2)が3 コース投与されている。MDACC のhyper-CVAD/MA 療法はMTX は1 g/m2 が合計4 回,AraC は3 g/m2 が合計16 回投与されるプロトコールである2)。T-ALL の5 年OS は48%で,それ以外のALL(T-CALLA-precursor B-cell ALL,NULL ALL を含む)の5 年OS 36%を有意に上回った。中等量のMTX(600 mg/m2 を合計4 回)を採用した日本のJALSG-ALL93 試験では6 年OS がT-ALL で41.5%,B-ALL で35.9%とT-ALL が優れているものの有意差には至っていない3)。一方,2002 年に発表されたGIMEMA ALL 0288 試験では完全寛解到達患者の8 年後寛解維持率はB-ALL で34%,T-ALL で27%とB-ALL が有意に優れるという結果であった4)。この研究では大量AraC は用いられていないが,強化療法で1 g/m2 のMTX が3 コース投与されている。

GRAALL-2003 小児型プロトコールによるT-ALL とB-ALL の治療成績を比較すると,T-ALL の完全寛解率99%でB-ALL の91%よりも良好であった(p=0.02)。また,42 カ月の無イベント生存割合はT-ALL で62%,B-ALL で52%であった(p=0.09)5)。このプロトコールには大量MTX 療法が含まれている。

これらの結果を総合的に考えると,大量MTX の採用はT-ALL において魅力的な選択肢ではあるが,必ずしもそれを含む試験においてT-ALL の治療成績が優れているとは言えない。今後,ネララビン(AraG)などの薬剤を早期から導入することによってT-ALL の治療成績が向上する可能性があるが,現時点では臨床データは乏しい。

参考文献

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Marks DI, et al. T-cell acute lymphoblastic leukemia in adults : clinical features, immunophenotype, cytogenetics, and outcome from the large randomized prospective trial(UKALL XII/ECOG 2993). Blood. 2009 ; 114(25): 5136-45.(3iiA)
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Takeuchi J, et al. Induction therapy by frequent administration of doxorubicin with four other drugs, followed by intensive consolidation and maintenance therapy for adult acute lymphoblastic leukemia : the JALSG-ALL93 study. Leukemia. 2002 ; 16(7): 1259-66.(3iiA)
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Huguet F, et al. Pediatric-inspired therapy in adults with Philadelphia chromosome-negative acute lymphoblastic leukemia : the GRAALL-2003 study. J Clin Oncol. 2009 ; 27(6): 911-8.(3iiA/3iiDi

CQ8
成人ALL の治療において中枢神経系再発予防は推奨されるか

推奨グレードカテゴリー2B
すべての症例に対して,抗がん剤の髄腔内投与および中枢神経系への移行性の良い全身化学療法の使用が推奨される。全脳照射はルーチンに施行すべきではなく,中枢神経再発ハイリスク例においては選択肢の一つである。

解説

中枢神経系(central nervous system:CNS)再発への対策はALL 治療成績の向上に不可欠である。対策として,抗がん剤の髄腔内投与(intrathecal:IT),大量メトトレキサート(MTX)や大量シタラビン(AraC)の全身化学療法(髄腔内濃度を上げることができるため)および全脳照射の選択肢がある1-5)。これらの組み合わせおよび治療強度は,CNS 再発リスクに応じて対策を講じるのが望ましい。

小児ALL に比較すると,成人ALL におけるエビデンスは極めて限られていて,標準的対策法は確立されていない。

成人ALL 治療におけるCNS 再発予防法の確立のためには,以下の3 点が特に重要と考えられる。

  1. CNS 再発ハイリスク群の同定
  2. triple IT(MTX+AraC+ステロイドの3 剤併用),大量MTX および大量AraC の投与量,投与回数のリスク別至適化
  3. ハイリスク群における全脳照射の意義

以下に,主に小児ALL を対象とした臨床試験によるエビデンスを列挙し,参考としたい。

MTX 単独投与に比較して,triple IT がCNS 単独再発リスクを有意に低下(p=0.004)させるが,骨髄再発はtriple IT で有意に多かった(p=0.01)6)

全脳照射を施行しなかった場合,5 年間の累積CNS 単独再発は2.7%(95% CI:1.1-4.3)であり,診断時 CNS 病変を除く,CNS 再発リスク因子はt(1;19),T 細胞性であった7)

CNS 再発リスク因子は報告によって異なるが,一般にT 細胞性,初診時WBC 高値,予後不良染色体異常および寛解導入不応などがあり,予防的全脳照射の対象としているプロトコールが多い8)

全脳照射による晩期毒性として,白質脳症,認知機能低下,内分泌異常および髄膜腫などの二次性腫瘍などがあり,選択には注意が必要である9, 10)

参考文献

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Larson RA, et al. A randomized controlled trial of filgrastim during remission induction and consolidation chemotherapy for adults with acute lymphoblastic leukemia : CALGB study 9111. Blood. 1998 ; 92(5): 1556-64.(3iDiv)
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Kantarjian HM, et al. Results of treatment with hyper-CVAD, a dose-intensive regimen, in adult acute lymphocytic leukemia. J Clin Oncol. 2000 ; 18(3): 547-61.(3iDiv)
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Huguet F, et al. Pediatric-inspired therapy in adults with Philadelphia chromosome-negative acute lymphoblastic leukemia : the GRAALL-2003 study. J Clin Oncol. 2009 ; 27(6): 911-8.(3iiA)
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Takeuchi J, et al. Induction therapy by frequent administration of doxorubicin with four other drugs, followed by intensive consolidation and maintenance therapy for adult acute lymphoblastic leukemia : the JALSG-ALL93 study. Leukemia. 2002 ; 16(7): 1259-66.(3iiA)
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CQ9
寛解期成人ALL の治療における微小残存病変の評価の意義はあるか

推奨グレードカテゴリー2A
寛解療法後に微小残存病変があれば(0.1%ないし0.01%以上),再発の危険性が高まるため,測定の意義はある。ただし,寛解療法後のどの時点で微小残存病変を測定すべきかのコンセンサスは確立されていない。

解説

微小残存病変(minimal residual disease:MRD)をみるためには,ALL の初診時に白血病に特異的なキメラ遺伝子(BCR-ABL など),免疫グロブリンないしT 細胞受容体(TCR)遺伝子再構成,異常な表面マーカー(aberrant marker)を見出しておく必要がある。寛解後にこれらを追跡することでALL の残存,再発の指標にすることが可能である。MRD 検査のうち,遺伝子再構成を用いた検査(定量的PCR 法による骨髄微小残存病変量の測定)は2019 年よりモニタリングとして2 回までの測定が保険適用となっている。

Ph 陰性ALL 116 例を対象として,aberrant marker をMRD の指標とした後方視的研究では,寛解導入終了時のMRD は独立した再発の予後因子であったが(p<0.0001),地固め後のMRD は予後と有意な関連はなかった1)。一方,T 細胞系以外のPh 陰性ALL 161 例を対象とした後方視的研究では,治療開始1 年以内のどの時点でもMRD が陽性であれば有意に再発までの期間が短かった2)

未治療のB 細胞性ALL およびT 細胞性ALL 142 例を対象とした前方視的研究が行われた3)。治療開始後16 週で0.01%未満であり,22 週で全く検出されないものをMRD 陰性,それ以外をMRD 陽性と定義し,5 年全生存割合(OS)/無再発生存割合(RFS)を比較すると有意にMRD 陰性群が良好であった(75%/72% vs 33%/14%,p=0.001)。また,196 例の標準リスクALL を対象とした前方視的研究では,寛解導入療法中(day11)および寛解導入療法終了時(day24)にMRD 陰性であれば3 年再発率0%に対し,治療開始後16 週までMRD 陽性であれば3 年再発率96%と報告されている4)。日本でも成人ALL 27 例を対象に,寛解導入療法後100 日にMRD を測定した前方視的研究がある5)。MRD 陰性群の2 年OS/RFS は79.0%/79.4%で,陽性群の45.0%/40.0%に比して有意に高かった。また,小児型プロトコールで治療された成人においても,15-59歳ALL995 例を対象(MRD 解析可能であったのは423 例)とした研究で,寛解導入療法後MRD陽性(0.01%以上)と再発の相関はB 細胞性ALL で3.21(p<0.001),T 細胞性ALL で2.50(p=0.036)であった6)

参考文献

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CQ10
成人ALL の寛解後療法において大量シタラビン療法や大量メトトレキサート療法は推奨されるか

推奨グレード

カテゴリー1(大量メトトレキサート)
カテゴリー2B(大量シタラビン)
成人ALL に対する寛解後療法として大量メトトレキサート療法(3 g/m2)は行うべきである。大量シタラビン療法(1〜3 g/m2)も妥当な選択肢である。再発・難治例に対する救援化学療法としても用いられる。

解説

大量メトトレキサート(MTX)療法は小児では1980 年代にはその有用性がランダム割付試験で示されている。治療法が進歩し治療が強化された近年においても,capizzi 方式のMTX 療法に対しランダム割付試験で優位性を示すなど小児ALL における有用性は確立されている1)。一方大量シタラビン(AraC)療法は小児では第Ⅱ相試験で比較的広く用いられ一定の有効性を示し,第Ⅲ相試験も複数行われているが,大量MTX 療法に大量AraC 療法を追加することで治療成績の改善を見ることに成功した研究はまだない2)。最近,成人ALL に対して大量AraC 療法,大量MTX 療法,もしくはその両者を寛解後療法として用いた治療プロトコールの報告が増えており,成人ALL の予後改善に寄与している可能性がある。これらの治療では中枢神経系再発予防効果も期待される。

成人ALL に対する寛解後療法に大量AraC 療法,大量MTX 療法の両者を用いるプロトコールでは,MDACC から報告されている hyper-CVAD/MA療法3)( CPA,VCR,DXR,DEX,高用量MTX,高用量AraC)が代表的なものである。この他にもCALGB19802 試験4)では寛解後療法に大量AraC 療法,大量MTX 療法の双方が,MRCUKALLXII/ECOG E2993 試験5)では寛解後療法での大量MTX 療法が報告されてきた。このように成人でも比較的広範に行われる治療でありながら,成人ALL において大量AraC 療法,大量MTX 療法それぞれの意義を検証したランダム化比較試験は長らく報告がなかった。しかし最近本邦で行われたJALSG ALL 202-O 試験では,寛解後療法の一部で大量MTX(3 g/m2)と中等量MTX(500 mg/m2)の成績が比較され,大量MTX 療法の優位性が示された6)。成人ALL においても小児同様大量MTX 療法を行うべきである。一方,大量AraC 療法は治療の選択肢として妥当なものではあるが,大量MTX 療法との併用においてはその有効性は明らかでない。

参考文献

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Larsen EC, et al. Outcome for children and young adults with high-risk B-acute lymphoblastic leukemia: A report from Children’s Oncology Group Study AALL0232. J Clin Oncol. 2016 ; 34(20): 2380-8.(1iiDi)
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CQ11
縦隔病変を有するT 細胞性LBL に対して縦隔照射は行うべきか

推奨グレードカテゴリー2B
縦隔病変を有する成人T 細胞性LBL に対して,局所再発予防を目的とした縦隔照射が用いられることが多いが,ALL に対する縦隔照射を含まない治療プロトコールを用いることも妥当である。

解説

T 細胞性LBL(T-LBL)では診断時に縦隔腫瘤を有する例が多く,これが長径10 cm を超える巨大病変であることも少なくない。縦隔腫瘤を有するT-LBL では,全例,あるいは巨大病変を有する場合や化学療法後に残存腫瘤が認められた場合に限定して局所再発予防を目的とした縦隔照射が行われることが多い。しかし,これによる二次発癌や心血管系合併症などの晩期障害の増加が懸念されている。小児LBL では,ALL に対する強力な化学療法を行うことにより,縦隔照射を含むプロトコールと比較して遜色ない治療成績が報告されている1)。縦隔病変を有する成人LBL での縦隔照射の意義は,今のところ未解決の課題である。

成人LBL では後方視的研究においてhyper-CVAD 療法(CPA, VCR, DXR, DEX)を中心とする化学療法を受けた患者で,縦隔照射例が非照射例に比べて局所再発率が低いことが示された2)。これを受けてLBL を対象としたhyper-CVAD/MA 療法(CPA, VCR, DXR, DEX,高用量MTX,高用量AraC)では,診断時に縦隔病変を有した患者で地固め療法と維持療法の間に縦隔照射(30〜39 Gy)が規定された3)。ドイツのBerlin-Frankfurt-Munster(BFM)レジメンでも,縦隔病変を有するT-LBL で寛解導入療法の後半に縦隔照射(24 Gy)を行うことが規定された。しかし再発例の半数で縦隔再発がみられ,これらのほとんとで縦隔照射の既往があったため,論文では,より高用量の縦隔照射が必要だろうと結論している4)。しかし,これらの2 つのプロトコールは縦隔照射の有無をランダム化して検討したものではない。対象疾患を成人LBL に限定した,縦隔照射を行わないプロトコールを用いた治療研究では目立った報告がないが,米国のCALGB 8811 の報告では,対象患者の15%(30 例)が縦隔病変を有しており,縦隔照射を行わないプロトコールであったにもかかわらず,T-ALL 患者だけで解析しても,縦隔病変を有することは予後良好因子であった5)。びまん性大細胞型B 細胞リンパ腫など他のリンパ腫の病型と同様に,縦隔照射の適応を,寛解導入化学療法後の残存腫瘤やpositron emission tomography(PET)陽性残存病変などに限定するという方針を支持する臨床研究の報告はない。

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CQ12
第一寛解期の同種造血幹細胞移植は推奨されるか(Ph 陽性,Ph 陰性を含む),また減弱前処置による同種造血幹細胞移植は有用か

推奨グレードカテゴリー2A
第一寛解期の成人ALL に対して,HLA 適合血縁,非血縁ドナーがいれば同種造血幹細胞移植が選択される。
推奨グレードカテゴリー2B
通常の強度の移植前処置を行うことができない高齢者,あるいは臓器障害を有する第一寛解期ALL 患者に対しては,減弱前処置による同種造血幹細胞移植を考慮する。

解説

第一寛解期ALL に対する造血幹細胞移植の適応はgenetic randomization,すなわち第一寛解が得られた患者をHLA 適合同胞ドナーがいる場合には同種移植群に割り付け,ドナーがいない場合には自家骨髄移植群あるいは化学療法群に割り付けるという前方視的比較試験で検証されてきた。この場合,実際に割り付けられた治療が行われていない[症例を実際に行われた治療で群別して解析するとバイアスを生じるので,割り付けられた群(ドナーあり群vs ドナーなし群)に従って解析される(intent-to-treat analysis)]。当初の研究は予後不良因子を有する群においてのみドナーあり群の生存期間が延長するという報告が多かったが,その後,逆の結果を示す大規模臨床研究も報告されている。

これらの臨床試験を統合したメタアナリシスの結果では,第一寛解期ALL 全体でのドナーあり群の死亡の相対危険度は0.88(95% CI:0.8-0.97,p=0.007)と有意に低く,サブグループ解析では標準リスク群で0.8(95% CI:0.68-0.94,p=0.006),高リスク群で0.88(95% CI:0.76-1.01,p=0.07)と標準リスク群のみで有意差が観察された1)。高年齢が高リスク群の定義に含まれている試験が多いが,年齢という因子は同種移植で改善するということは考えにくく,年齢を移植適応の判断時のリスク分類に用いるべきではないということが指摘されている。

JALSG ALL-93 およびALL-97 の化学療法のデータと日本造血細胞移植学会の移植データを用いて行われた臨床決断分析では,HLA 適合同胞がいる場合には第一寛解期に同種移植を行う決断をすることの優位性が示された2)。QOL 補正を行った比較でも,年齢によって群別化したすべてのサブグループにおいても移植群の優位性は変わらなかった。HLA A,B,DRB1 適合の非血縁ドナーからの移植データを用いた解析でもほぼ同様の結果が得られた。適合度のよい非血縁者間移植の治療成績はHLA 適合同胞からの治療成績とほぼ同等であることが報告されている3)。しかし,小児科型の化学療法の採用などによる化学療法の治療成績の改善によって,第一寛解期における移植適応は見直される可能性がある4, 5)。また,HLA 不適合移植や臍帯血移植の適応を判断するための明確なデータはない。微小残存病変をモニターすることによって,同種造血幹細胞移植を必要とする患者をより正確に判別できるようになる可能性もある。

Ph 陽性ALL についてはチロシンキナーゼ阻害薬の導入によって化学療法の成績が著しく改善しているが,その効果が長期間維持されるかどうかは不明である。現時点ではチロシンキナーゼ阻害薬導入以前の臨床試験の成績を参考にして6),第一寛解期での同種移植の実施が推奨される。

高齢者ALL に対する化学療法の成績は不良である。一方,高齢者に対して通常の強度の前処置(myeloablative conditioning:MAC)による同種造血幹細胞移植の実施は難しい。そこで,強度を減弱した移植前処置(reduced-intensity conditioning:RIC)を用いるミニ移植が試みられている。特にUnited Kingdom Medical Research Council Adult Leukemia Working Party(MRC UKALL)XII/ECOG 2992 試験において35 歳以上の患者で移植関連死亡が増加したことから,ALL に対するミニ移植が注目されるようになった。しかし,現時点ではミニ移植と化学療法,あるいはミニ移植と通常の移植の前方視的比較試験の結果は得られていない。

MAC とRIC の比較についてはEuropean Group for Blood and Marrow Transplantation(EBMT)とCenter for International Blood and Marrow Transplant Research(CIBMTR)からそれぞれ大規模な後方視的研究が報告されている。前者は45 歳以上の第一,第二寛解期患者を対象として127 例のRIC 症例と449 例のMAC 症例を比較したところ,RIC 群(年齢中央値56 歳,範囲45〜73 歳)で再発が有意に増加するものの移植関連死亡(TRM)は有意に減少し,無白血病生存割合には差がみられなかった7)。後者も第一,第二寛解期患者を対象とした93 例のRIC 症例(年齢中央値45 歳,範囲17〜66 歳)と1,428 例のMAC 症例の比較であるが,こちらは16 歳以上の患者を含んでいる8)。多変量解析の結果,前処置の強度の違いは再発率,非再発死亡率,生存割合に有意差を与えなかった。個別の前処置に関してはフルダラビン(FLU)とメルファラン(MEL)の組み合わせによる前処置で良好な成績が得られている9, 10)

日本造血細胞移植学会の移植データを用いて同種造血幹細胞移植を受けた45 歳以上の第一,第二寛解期ALL 患者を対象として後方視的に解析が行われ,全生存割合,無病生存割合および無再発死亡割合は,移植前処置の強度による有意な影響は示されなかった11)

化学療法との優劣は不明であるが,高齢者ALL に対する通常の化学療法の治療成績は不良であるため,高齢者第一寛解期ALL に対するミニ移植の有用性を評価する前方視的比較試験の実施が期待される。

参考文献

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CQ13
第一寛解期で造血幹細胞移植を行わない場合,維持療法は推奨されるか(Ph 陽性,Ph 陰性を含む)

推奨グレード

カテゴリー1(Ph 陰性)
カテゴリー2A(Ph 陽性)
第一寛解期で造血幹細胞移植を行わない場合,維持療法は推奨される。Ph 陽性症例ではTKI を長期に使用することが推奨される。

解説

1960 年代に小児ALL で維持療法の中止と継続でランダム化比較試験が行われ,維持療法の有用性が示されている1)。当時の治療は寛解後療法が極めて不十分で(寛解導入療法の後はすぐ維持療法),これのみで現在の標準治療における維持療法の必要性を判断することは難しい。しかし,その後も日本の小児ALL において,維持療法における6-メルカプトプリンとメトトレキサートの投与方法に関して,中等量間歇投与群と少量持続内服群をランダム割り付けして比較した研究で,前者の方が5 年寛解持続率が良好であることが示される(72.1% vs.49.7%,p<0.05)など2),維持療法の必要性は複数の研究で確認されている。

成人ALL においても,Cancer and Leukemia Group B(CALGB)の研究で維持療法を行わないプロトコールを用いたところ,中間解析で過去のCALGB の研究(1 年以上の維持療法を行う)に比較して明らかに寛解持続期間が短く,研究が早期終了となったことは維持療法の必要性を示している3)。また,UK Medical Council とEastern Cooperative Oncology Group の共同研究においても,1929 例のALL 患者を寛解が得られたのちに,HLA 一致血縁ドナーを持つものは同種移植群,ドナーを持たないものを,自家移植群(維持療法なし)と化学療法群(地固め療法,維持療法を行う)にランダム割り付けし(両群ともにメトトレキサート大量療法を含む強化療法は行う)比較したところ,自家移植群で有意に5 年全生存割合が不良であった(46% vs. 37%,p=0.03)4)。この研究もやはり維持療法の必要性を示している。これらの研究より,Ph 陰性ALL の場合,第一寛解期で造血幹細胞移植を行わない場合,維持療法は必要であると考えられる。

Ph 陽性症例に対してはイマチニブの登場以降,これを併用した化学療法による研究が多く行われ,従来の治療に比較し,完全寛解率,第一寛解期同種移植の施行率,全生存割合いずれも著しく改善した。しかし同種移植が行われなかった場合,その生存割合は各研究によって大きく異なる。イマチニブ併用維持療法を行うが2〜3 年で治療を終了してしまう研究では移植を受けなかった患者の再発率は78〜87%と高い5, 6)。一方,イマチニブの投与を5 年または無期限で続ける研究では,同種移植を受けなかった症例でも,無病生存割合がそれぞれ42.7%(3 年無病生存割合)7),43%(5 年無病生存割合)8)と非常に良好である。これらの研究から,Ph 陽性ALL で同種移植を受けない場合には,TKI を含む維持療法が推奨され,TKI は治療開始から5 年以上継続することが推奨される。MRD を評価するなどしてTKI をいずれかの時点で中止にできるかどうかは現時点では不明である。

参考文献

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CQ14
ALL 再発例(Ph 陰性前駆B 細胞ALL,Ph 陽性前駆B 細胞ALL,前駆T 細胞ALL)に対する再寛解導入療法の選択肢として何が推奨されるか

推奨グレードカテゴリー2B
ALL 再発例では前治療歴を考慮した再寛解導入療法を行う。晩期再発例では初回寛解導入療法と同一のレジメンによる再治療も選択肢に入る。
推奨グレードカテゴリー2A
Ph 陽性ALL のイマチニブ継続中の再発ではダサチニブへの変更が妥当である。BCR-ABL T315I 変異陽性例ではポナチニブへの変更が妥当である。
推奨グレードカテゴリー2B
前駆T 細胞ALL ではネララビンが治療選択肢に加わる。
推奨グレードカテゴリー1
前駆B 細胞ALL 再発例ではブリナツモマブ,イノツズマブ オゾガマイシンが治療選択肢に加わる。
推奨グレードカテゴリー2A
25 歳以下,2回以上の前駆B 細胞ALL 再発例ではチサゲンレクルユーセルが治療選択肢に加わる。

解説

ALL の再発は地固め療法中,維持療法中,維持療法終了後などさまざまな時期に起こり得るため,再発時期や前治療歴によって再寛解導入療法の内容が考慮される。AdVP 療法(DXR, VCR,PSL)やhyper-CVAD 療法(CPA, VCR, DXR, DEX)に代表されるアントラサイクリン系抗腫瘍薬,ビンクリスチン(VCR),ステロイド薬併用療法,L-アスパラギナーゼ(L-Asp)を含む多剤併用療法,大量シタラビン療法を含む多剤併用療法1)などが再発ALL に対する再寛解導入療法として治療成績が報告されている2, 3)。しかし,これらによる完全寛解(CR)率は全体として50%を下回り,特に寛解期間が1 年未満の患者ではさらに低いとされる1)

再発・難治性前駆B 細胞性ALL に対して,従来の多剤併用化学療法より高い効果が期待できる3 種類の治療薬が最近保険適用となった。CD22 陽性再発・難治性ALL に対する抗CD22 抗体薬物複合体イノツズマブ オゾガマイシン療法は,ランダム化比較試験において化学療法と比較して完全寛解率が高く,その結果,同種造血幹細胞移植により多くの患者が進むことができ,無増悪生存期間,全生存期間が優れていた4)。再発・難治性前駆B 細胞性ALL に対する抗CD19 二重特異性T 細胞誘導抗体(ブリナツモマブ)療法は,ランダム化比較試験において化学療法と比較して完全寛解率が高く,全生存期間が優れていた5)。抗CD19 キメラ抗原受容体T(CAR-T)細胞であるチサゲンレクルユーセルは,25 歳以下の再発・難治性前駆B 細胞性ALL に対し,81%の完全寛解率を得ている12 カ月時点での無イベント生存率50%,全生存率76%であった6)

イマチニブ継続中のPh 陽性ALL の患者の再発例を対象としたダサチニブ単剤療法の第Ⅱ相試験では,血液学的奏効率が42%で,数カ月間奏効が維持できることが示されている7)。イマチニブ抵抗性変異を獲得した患者の一部ではダサチニブが有効であることが示唆される。なおPh 陽性ALL の再発例におけるダサチニブ併用化学療法の有効性と安全性は明らかではない。Ph 陽性ALL のうちダサチニブ,ニロチニブに対して治療抵抗性または不耐容例またはBCR-ABL T315I 変異陽性例に対して,ポナチニブの有効性が示されている8)

T 細胞性ALL(T-ALL)の再発・難治例ではネララビン(AraG)療法の有効性が示されている。Cancer and Leukemia Study Group B(CALGB)が行った第Ⅱ相試験で,多くの前治療歴を有するT-ALL の患者において全奏効率が41%であった9)

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4 慢性骨髄性白血病/骨髄増殖性腫瘍
(chronic myeloid leukemia/myeloproliferative neoplasms:CML/MPN)

総論

骨髄増殖性腫瘍(myeloproliferative neoplasms:MPN)は,造血幹細胞レベルでの腫瘍化によって発症する疾患であり,骨髄系細胞(顆粒球,赤芽球,骨髄巨核球)の著しい増殖を特徴とする1)。MPN には,慢性骨髄性白血病(chronic myeloid leukemia:CML),慢性好中球性白血病(chronic neutrophilic leukemia:CNL),真性赤血球増加症または真性多血症(polycythemia vera:PV),原発性骨髄線維症(primary myelofibrosis:PMF),本態性血小板血症(essential thrombocythemia:ET),慢性好酸球性白血病(chronic eosinophilic leukemia:CEL),分類不能骨髄増殖性腫瘍(MPN,unclassifiable)が含まれる。発症初期のMPN は,分化能を有する骨髄細胞の過形成と,末梢血における顆粒球,赤血球,血小板の増加を示す。理学的には脾腫や肝腫大を認める。MPN は,発症初期には自覚症状に乏しいが,全身症状を伴い段階的に増悪し,最終的には骨髄の線維化,あるいは,形質転換して成熟能喪失(急性転化)へ至る疾患である。MPN の治療については,CML とそれ以外のMPN では方針が異なる。本ガイドラインでは,MPN のうちCML とPV,ET,そしてPMF の治療を提示する。

1.慢性骨髄性白血病(chronic myeloid leukemia:CML)

1)CML の病期分類

CML は,多能性造血幹細胞の異常により惹起される白血病で,t(9;22)(q34;q11)により形成されるPhiladelphia(Ph)染色体を特徴とする。Ph 染色体上のBCR-ABL1 融合遺伝子にコードされて産生されるBCR-ABL1 チロシンキナーゼ(tyrosine kinase:TK)が恒常的に活性化し,白血病細胞の増殖に関与し,3 つの病期を経て進行する1)。CML は白血球や血小板の増加を認めるが,自覚症状の乏しい慢性期(chronic phase:CP,診断後約3〜5 年間)で多くの患者(85%)が診断され,顆粒球の分化異常が進行する移行期(accelerated phase:AP,3〜9 カ月間持続)を経て,未分化な芽球が増加して急性白血病に類似する急性転化期(blast phase:BP,約3〜6 カ月持続)へ進展し致死的となる。WHO 分類(2017)2)またはEuropean LeukemiaNet(ELN)2013 3)の規準に従いAP,BP 期が定義される(表1)。

表1 WHO 分類(2017)またはEuropean LeukemiaNet(ELN)2013 年版によるCML の病期分類
2)CML の予後分類

初診時の年齢,脾腫(肋骨弓下cm),血小板数,末梢血芽球(%)の4 因子を用いて計算されるSokal スコア4)や,年齢,脾腫(肋骨弓下cm),末梢血芽球(%),末梢血好酸球(%),末梢血好塩基球(%),血小板数の6 因子を用いて計算されるHasford スコア5)は,これまでも化学療法やインターフェロンα(IFNα)療法時代に用いられてきたが,イマチニブ治療においても有用であり,低リスク,中間リスク,高リスクの3 リスク群に分類される()。イマチニブ治療患者を対象とした解析より構築された予後予測システムEUTOS スコア6)は,初診時の好塩基球(%)と脾腫のみで計算され(7×basophils%+4×spleen size cm),87 以下の低リスクと,87 より大きい高リスクの2 リスク群が提唱されている()。

3)CML の治療効果判定

CML 治療のコンセプトはPh 陽性(BCR-ABL1 陽性)白血病細胞のコントロールと病期進行の回避にあり,治療効果は ELN2013の判定規準に従う3)表2)。

CP 期の治療効果は,血液学的奏効(hematologic response:HR),細胞遺伝学的奏効(cytogenetic response:CyR),分子遺伝学的奏効(molecular response:MR)の3 つのレベルで判定する(表2)。HR は末梢血所見の改善,CyR は骨髄細胞中のPh 染色体割合で,MR はポリメラーゼ連鎖反応(polymerase chain reaction:PCR)により血液細胞中のBCR-ABL1 遺伝子発現量で判断される。AP/BP 期では,血液学的奏効規準がCP 期と異なるが,CyR とMR は同じ規準を用いる。

表2 CML に対する治療効果の判定規準
4)CML の治療概略
  1. BCR-ABL1 チロシンキナーゼ阻害薬療法:BCR-ABL1 チロシンキナーゼを選択的に阻害し,血液学的,細胞遺伝学的,分子遺伝学的に優れた有効性を示すチロシンキナーゼ阻害薬(tyrosine kinase inhibitor:TKI)として,イマチニブ7-10),ニロチニブ11),ダサチニブ12)などが用いられる。イマチニブはインターフェロンα+低用量シタラビンとの比較試験の5 年長期成績の結果,インターフェロンαに替わって初発CML-CP 期に対する第一選択薬となった8)。わが国においても,イマチニブ治療の優れた長期成績が確認された10)
  2. ニロチニブとダサチニブは,イマチニブ治療に抵抗性・不耐容のCML に対する治療薬として開発された第二世代TKI であるが,イマチニブとの比較試験の結果11, 12),初発CML-CP 期の治療としても選択できる。
  3. 初回(1st line)TKI(イマチニブ,ニロチニブ,またはダサチニブ)に抵抗性あるいは不耐容を示した場合は,別のTKI への切り替えが必要である。TKI 抵抗症例ではBCR-ABL1 遺伝子の点突然変異の解析を行い,点突然変異クローンの薬剤感受性に応じたTKI の選択が必要であり,不耐容症例ではTKI の有害事象を鑑みた薬剤選択が必要である。2nd line 以降ではイマチニブ,ニロチニブ,ダサチニブに加え第二世代TKI ボスチニブと第三世代TKI ポナチニブが使用できる。イマチニブはABL キナーゼに対する阻害活性が第二世代TKI に劣るので,抵抗例に対する切り替えの際は,イマチニブへの切り替えは推奨されない。ボスチニブは二次治療,三次治療としてT315I 以外のABL1 遺伝子変異を有する症例に有効であり,忍容性も良好である13, 14)。ポナチニブは3 次治療としてT315I を含むABL1 遺伝子変異を有する症例や前治療薬に抵抗性または不耐容の症例に有効である15)
  4. 同種造血幹細胞移植(allogeneic stem cell transplantation:allo-HSCT):根治が期待できる治療法であるが,治療関連毒性による早期死亡のリスクを考慮しなければならない。したがって,CML-CP から進行したTKI 耐性のAP/BP 期や初発時BP 期のみに適応がある。また,適切なドナーの確保,移植関連毒性に耐え得る年齢および全身状態であることなど適応を考慮しなければならない16)
  5. インターフェロンα:インターフェロンα単剤17)あるいは低用量シタラビンとの併用8)はイマチニブ以前の標準治療であり,一部の症例でPh 染色体の消失を認め,全生存期間(overall survival:OS)の改善に寄与することが知られている。しかしながら,本ガイドラインではTKI 治療が可能なCML に対するインターフェロンαを推奨しない。本邦においては,すべてのTKI に対して抵抗性・不耐容を示し同種造血幹細胞移植の適応がない症例やTKI の発売前よりインターフェロンαを投与し分子遺伝学的効果を得ている症例あるいは妊娠中でTKI が使用できない症例のみに現在も使用されている。
5)CML 治療効果のモニタリング

ELN 2013 に従い,TKI 療法によるCML 治療効果のモニタリングを行う3)。治療効果の判定方法は,CyR は,骨髄細胞の染色体検査以外に末梢血好中球の蛍光in situ ハイブリダイゼーション(fluorescence in situ hybridization:FISH)で判定できる。MR は,末梢血液を用いて定量(quantitative)逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(RT-PCR)で測定したBCR-ABL1 遺伝子レベルのABL あるいは対象となる遺伝子レベルに対する比を,国際指標(International Scale:IS)で補正してBCR-ABL1IS と表す。初回治療では,治療後3 カ月までにBCR-ABL1IS≦10%または部分CyR(partial CyR:PCyR),6 カ月までにBCR-ABL1IS<1 % または完全CCyR(complete CyR:CCyR),12 カ月までにBCR-ABL1IS≦0.1 % すなわちMajor MR(MMR), それ以後はBCR-ABL1IS≦0.1%を維持するOptimal(至適)な効果を得ることを目指す(表3-1)。そして,Warning(要注意)ではモニタリングを頻回に行い,Failure(治療の失敗)では,治療の変更を考慮する。

表3-1 CML に対する1st line のTKI 治療の効果(European LeukemiaNet 2013 年版)

初回治療のイマチニブから第二世代TKI に変更した場合は,3 カ月でBCR-ABL1IS≦10%またはPh 陽性細胞<65%,6 カ月でBCR-ABL1IS≦10%またはMCyR,12 カ月でBCR-ABL1IS<1%またはCCyR,それ以降BCR-ABL1IS≦0.1%を至適奏効としている(表3-2)。

表3-2 CML に対するイマチニブ治療失敗患者に対する2nd line のTKI 治療の効果(European LeukemiaNet 2013 年版)

ELN 2009 コンセンサス18)では,分子遺伝学的完全奏効(CMR)をBCR-ABL1IS 検出感度以下と定義されたが,ELN 2013 コンセンサス3)では,BCR-ABL1IS 0.01%以下をMR4,BCR-ABL1IS0.0032%以下をMR4.5,BCR-ABL1IS 0.001%以下をMR5 とした規準19)を採用している。CML-CP 治療においては,少なくともMMR の治療効果を得ることが大切であり,定量RT-PCR の検索はELN やNCCN など海外のCML 治療ガイドラインでも必須検査とされている。BCR-ABL1IS の定量RT-PCR が施行できない国のためにELN 基準では細胞遺伝学的基準も併記されている。一方,わが国においては国際指標で補正されたBCR-ABL1IS の定量RT-PCR 検査が2015 年4 月から保険診療可能となった。したがって,治療効果判定は基本的にBCR-ABL1IS で行うことが可能である。

具体的なTKI の治療効果判定のタイミングは以下の通りである。

  1. 治療開始前は,血算と血液像,骨髄の染色体検査(G-band 法)を施行し,Ph 陽性率と付加的染色体異常の有無を確認する。また,BCR-ABL1mRNA を定量し,BCR 切断点と治療前の定量値の確認を行う。骨髄染色体検査でPh 陽性またはFISH 法でBCR-ABL1 融合遺伝子陽性であるにも関わらず,BCR-ABL1IS の定量RT-PCR 検査でBCR-ABL1 が検出できない場合はBCR の切断点が通常と異なっていることが考えられるため,ダイレクトシークエンス法などで確認する必要がある。
  2. 治療開始直後は,血算と血液像を毎週〜2 週毎に検査する。
  3. BCR-ABL1IS の定量RT-PCR 検査は末梢血で行い,初診時に加え,MMR が得られるまでは3 カ月ごとに行う。MMR 到達後は3〜6 カ月ごとに行う。
  4. BCR-ABL1IS の著しい増加やELN2013 基準でFailure の場合は,骨髄検査で病期の再確認と骨髄染色体検査で付加的染色体異常の有無を検討する。また,BCR-ABL1 点突然変異解析(保険適用外)は治療方針を決める参考になる。
6)CML の治療目標

これまでのCML の治療目標は,急性転化への移行を阻止することであった。一方,TKI により多くの症例で長期間持続する深い分子遺伝学的奏効(deep molecular response:DMR)を得ることができるようになった結果,現在の治療目標は,長期間のtreatment free remission(TFR)を得ることに変わりつつある。イマチニブ中止試験では,長期間イマチニブ治療後,少なくとも2 年のDMR を得た症例の一部に長期TFR が確認されている20)。一方,イマチニブ中止後にDMR を喪失した場合は,イマチニブの再開によりすべての症例は再びDMR に到達している。TKI によりDMR に達した症例に対する治療中止の可能性に関しては,今後も臨床試験による検証の積み重ねが必要であるが21),NCCN ガイドラインVersion 3. 2020 では臨床試験以外でTKI を中止する場合の必要条件と中止後の定期的モニタリングの重要性について言及している22)

2.Ph 陰性の骨髄増殖性腫瘍(myeloproliferative neoplasms:MPN)

PV,ET,PMF では,JAK-STAT シグナル伝達系を恒常的に活性化する遺伝子変異が共通してみられる。JAK2 変異がPV の95%以上,ET,PMF の約半数に,トロンボポエチンレセプターであるMPL 変異がET,PMF の3〜8%に,calreticulin(CALR)変異がET,PMF の20〜30%に生じており,血球の無秩序な増殖の原因となっている。

PV,ET,PMF の3 疾患においては,発熱,体重減少,倦怠感,掻痒,骨痛などの全身症状が共通してみられるのに加え,血栓症を合併しやすい。100 人・年あたり,血栓症がPV では5.3 回,ET では4〜8 回,PMF では2.23 回生じると報告されており,特にPV,ET では血栓症は主要死因となっている。また,一部の症例はAML に移行する。一般人口と比較したPV,ET の8 年生存割合は0.84(0.77-0.90),0.91(0.84-0.97)23)と比較的良好であるのに対し,PMF の50%生存期間は3.8 年と不良である24)。そのため,PV とET では血栓症の予防を目的とした治療が,PMF では予後を考慮した治療法の選択が求められる。

3.真性赤血球増加症または真性多血症(polycythemia vera:PV)

1)PV の予後分類25)

PV の生命予後は比較的良好であり,治療により10 年以上の50%生存期間が期待できる。そのため,合併する血栓症の予防が治療の主眼となる。年齢60 歳以上または血栓症の既往歴がある患者は,血栓症の高リスク患者である(表4)。

表4 PV における血栓症のリスク分類
2)PV の治療概略
  1. 高血圧,脂質異常症,肥満,糖尿病などの,いわゆる血栓症の一般的なリスクファクターがある場合は,これらの治療を行う。
  2. 血栓症の低リスク群(年齢<60 歳, かつ血栓症の既往がない)に対しては,瀉血+低用量アスピリンの投与を行う。
  3. 高リスク群に対しては,瀉血療法,アスピリン療法に加え細胞減少療法を行う。
    瀉血療法は,Ht 値45%未満を目標に,血圧,脈拍などの循環動態をみながら1 回200〜400 mL を月に1〜2 度のペースで行う。高齢者や心血管障害を有する例では,循環動態の急激な変化がないように,少量(100〜200 mL),頻回の瀉血が望ましい。出血や消化器症状などの禁忌がなければ,75〜100 mg/日のアスピリンの経口投与が選択される。
    細胞減少療法の第一選択薬はヒドロキシウレアである。ヒドロキシウレア不耐容,あるいは抵抗性の場合は,ルキソリチニブを使用する26)。ヒドロキシウレアには催奇性の問題があり,妊娠中や挙児希望者にはインターフェロンα療法を考慮することがある。また長期投与による二次発がんのリスクが完全には否定されていないため,40 歳未満の若年者においても,インターフェロンαを考慮することある。

4.本態性血小板血症(essential thrombocythemia:ET)

1)ET の予後分類

ET の生命予後は良好であり,健常者とほぼ同等の生命予後が期待される。そのため,合併する血栓症の予防が治療の主眼となる。年齢60 歳以上または血栓症の既往歴がある患者は,血栓症の高リスク患者である27)。なお,最近JAK2 変異を組み入れたリスク分類も提唱された28)表5)。白血球数,血小板数および高血圧,脂質異常症,糖尿病,喫煙などの心血管リスクファクターの有無を血栓症の危険因子として扱うかは報告により異なっており,結論は得られていない。

表5 ET における血栓症のリスク分類

生命予後は基本的には良好であるが,年齢,初診時白血球数,血栓症の既往などにより3 つのリスクに分類することが提唱されている(表629, 30)

表6 ET における生命予後のリスク分類28, 29)
2)ET の治療概略
  1. 血栓症低リスク群に対しては,定期的な経過観察を行う。骨髄抑制をきたす薬剤や血小板を低減する薬剤の投与は不要である26)。低用量アスピリンの投与も一般的には不要であるが,JAK2 変異がある,心血管リスクファクター(喫煙,高血圧,脂質異常症,糖尿病)がある,あるいは微小血管の塞栓,血栓症を示唆する症状がある時には,アスピリン投与を考慮してもよい31)
  2. 血栓症高リスク群に対しては,合併する血栓症の予防を目的として低用量アスピリン投与と細胞減少療法の併用療法を行う32, 33)。血小板数の著増に伴いvon Willebrand 因子(vWF)が低下すると,後天性von Willebrand syndrome(AvWS)を発症することがある。この場合のアスピリンの単独投与は出血を助長する可能性があるため,vWF:RCo(ristocetin cofactor activity)が低下している例では,細胞減少療法後に血小板数が減少していることを確認してからアスピリン投与を行う。血小板数<100 万/μL でもvWF が低下する例もみられるため34),出血傾向を示す場合は血小板数に関わらずvWF:RCo を測定することが望ましい。細胞減少療法には,ヒドロキシウレアとアナグレリドがある33, 35)。ET の発症年齢はPV と比べ若く,やや女性に好発することから,妊娠,挙児希望が問題となることがある。このような場合は,インターフェロンα投与を考慮する(保険適用外)。

5.原発性骨髄線維症(primary myelofibrosis:PMF)

1)PMF の予後分類

3 種類の国際的予後分類(international prognostic scoring system:IPSS)が使用されている。年齢>65 歳,体重減少,夜間盗汗,発熱などの臨床症状,ヘモグロビン値(Hb)<10 g/dL,診断時WBC>25,000/μL,末梢血液中の芽球割合≧1%の5 つを予後因子とするIPSS 36),前述の5 因子に異なった重み付けをしたDynamic IPSS(DIPSS)37),DIPSS に染色体異常,血小板数,輸血依存性を付加したDIPSS Plus 38)である(表7)。スコアの合計により,低リスク,中間-Ⅰリスク,中間-Ⅱリスク,高リスクの4 つのリスクグループに分類される。いずれの分類も予後予測に有用であり,治療法選択に用いられている。

表7 PMF の予後予測モデル
2)PMF の治療概略
  1. 低リスクおよび中間-Ⅰリスクの治療:臨床症状,貧血症状を欠く患者の生存期間は10 年を超えるため,現時点では経過観察が望ましい。症状を有する場合にはそれに対する治療(③④参照)を行う。
  2. 中間-Ⅱリスクおよび高リスクの治療:現時点での治癒的治療法は同種造血幹細胞移植(allo-HSCT)であり,可能であればallo-HSCT が推奨される。allo-HSCT により約50%に長期生存が得られる。allo-HSCT の適応とならない場合は,ルキソリチニブ投与を行う。ルキソリチニブにより脾腫の改善,症状の改善に加え,生命予後の改善も期待できる39, 40)
  3. 貧血に対しては, 赤血球輸血や蛋白同化ホルモンが用いられる。蛋白同化ホルモンは,海外ではダナゾール600 mg/日が頻用されるが,本邦では酢酸メテノロンが用いられることが多い41)
  4. 脾腫に伴う腹痛などの症状に対して,ヒドロキシウレア,摘脾や放射線照射の有効性も報告されている。ヒドロキシウレア1,000 mg/日で開始すると,約40%の患者に脾サイズの縮小が得られる42)。主な有害事象は骨髄抑制である。脾照射も有効であるが,その効果は一時的であり,高度の血球減少,感染症に注意が必要である43)

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アルゴリズム

1.CML のアルゴリズム

現在のCML 治療のKey Drug はTKI である。CML-CP 期にはTKI(イマチニブ,ニロチニブ,ダサチニブ)を投与する(CQ1)。治療開始後,至適奏効(Optimal)の場合は治療を継続,Warning(要注意)の場合はモニタリング(CQ2)を頻回にして,Failure(不成功)の場合は,イマチニブは他のTKI,ニロチニブはダサチニブまたはボスチニブ,ダサチニブはニロチニブまたはボスチニブへの治療薬の変更を行う。TKI 抵抗例においては点突然変異解析が治療薬を決める参考になる。ポナチニブは3 次治療としてT315I を含むABL1 遺伝子変異を有する症例や前治療薬に抵抗性または不耐容の症例に有効である(CQ3)。また長期TKI 投与による心血管系の副作用を避けるため,高リスク群の同定と定期的な検査を行う(CQ4)。CML-CP から進展したAP 期には未使用TKI で治療し,BP 期にはTKI 単独もしくは急性白血病に準じた化学療法を併用する。移植適応であれば,allo-HSCT を推奨する(CQ5)。TFR はCML 治療の新しい目標であるが,現在のところ臨床試験以外でTKI を中止すべきではない。ただし,妊娠を望む若い女性や晩期副作用のためにTKI の継続が困難などの理由がある場合は,分子遺伝学的深い奏効(DMR)が得られた患者の中で一定の条件を満たし,かつ定期的なモニタリング下でTKI 中止を考慮しても良い(CQ6)。

2.MPN のアルゴリズム

PV,ET,PMF の治療に際しては,リスク評価に基づき治療方針を立てることが基本となる。

PV とET の治療目標は,血栓症や出血を予防することである。すべてのリスクカテゴリーに属するPV 患者に対して低用量アスピリン投与と瀉血が有効である。高リスクPV には,これに加えてヒドロキシウレアを用いてHt<45%を目指す(CQ7)。ヒドロキシウレア不応例,不耐容例にはルキソリチニブが有用である。低リスクET(<60 歳,かつ血栓症の既往がない)は経過観察が原則であるが,その中で心血管リスクファクター(喫煙,高血圧,脂質異常症,糖尿病)のある症例,JAK2 変異のある症例では,血栓症発症リスクを低下させるため抗血小板療法(アスピリン投与)を推奨する(CQ9)。高リスクのET 症例(60 歳以上または血栓症の既往あり)には,低用量アスピリン投与と細胞減少療法を行う。細胞減少療法にはヒドロキシウレアとアナグレリドがある(CQ8)。妊娠合併ET に対する低用量アスピリンやインターフェロンαによる治療介入は流産を減らす可能性がある(CQ11)。

PMF の低リスク群,中間-Ⅰリスク群の生命予後は比較的良好である。貧血,全身倦怠感,脾腫に伴う腹部膨満感などがある場合は,症状緩和を目的とした治療を行う。症状のない場合は無治療経過観察の方針が望ましい。中間-Ⅱリスク群,高リスク群の生命予後は不良であり,適切なドナーが得られる場合は同種造血幹細胞移植を考慮する(CQ12)。同種造血幹細胞移植はPMF に対する根治的治療法である。移植適応とならない場合は,ルキソリチニブ投与を行う。脾腫,全身症状の改善に加え,生命予後の改善も期待できる。

CQ1
初発CML-CP に対する治療として何が勧められるか

推奨グレードカテゴリー1
初発CML-CP に対しては,イマチニブ400 mg QD(1 回/日),ニロチニブ300 mg BID(2 回/日),ダサチニブ100 mg QD のいずれかの投与を推奨する。3 剤の副作用プロファイルが異なることから,合併疾患などの患者背景を考慮して治療薬を選択することが望ましい。

解説

初発CML-CP に対しては,TKI であるイマチニブと化学療法+インターフェロンα(IFNα)の併用療法との比較試験(IRIS 試験)の結果,イマチニブの優位性が示された1)。イマチニブ投与による全生存割合(OS)は8 年で85%(CML 関係死による死亡のみを対象とした8 年間OS は93%),10 年で83.3%と長期間の有効性と安全性も示された2, 3)。その後,高用量(800 mg QD)イマチニブと通常用量(400 mg QD)イマチニブの比較試験が実施されたが,両群の有効性に関する差は明らかでない4-6)。したがって現時点では,イマチニブ400 mg QD が推奨投与の一つである。

イマチニブを対照薬として第二世代TKI であるニロチニブ,ダサチニブの臨床第Ⅲ相試験が発表されている。ニロチニブ300 mg BID(ENESTnd 試験)7),ダサチニブ100 mg QD(DASISION 試験)8)は,細胞遺伝学的完全奏効(CCyR),分子遺伝学的大奏効(MMR)達成率について12 カ月時点でイマチニブ400 mg QD より優れていた。さらに,5 年までの公表されたデータによると全生存割合に有意差はないものの,AP/BP への移行も少なく,DASISION 試験では証明できなかったもののENESTnd 試験ではCML に関連した死亡は有意に低下していた。以上より,治療効果という面において,第二世代TKI はイマチニブに比べて優位性が示されている9, 10)。これらの前方視的試験の結果から,治療前のSokal score などで高リスク群の場合は,第二世代TKI が推奨される。一方,第二世代のニロチニブとダサチニブ同士を直接比較した検討もないため,現在のところ,どちらを最初に投与すべきかは断定できない11)。しかしながら,5 年の長期観察の中でイマチニブに比べ第二世代TKI の心血管系副作用の頻度が高いことが明らかとなった(全Grade の虚血性心血管イベント:ダサチニブ100 mg QD 12 例/258 例 対イマチニブ400 mg QD 6 例/258 例,ニロチニブ300 mg BID 21 例/279 例 対イマチニブ400 mg QD 6 例/280 例)9, 10)。TKI 3 剤の副作用プロファイルが異なることから,合併する疾患など患者背景を考慮し,一次治療薬を選択することが望ましい。

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Kantarjian H, et al. Dasatinib versus imatinib in newly diagnosed chronic-phase chronic myeloid leukemia. N Eng J Med. 2010 ; 362(24): 2260-70.(1iiDiv)
9)
Hochhaus A, et al. Long-term benefits and risks of frontline nilotinib vs imatinib for chronic myeloid leukemia in chronic phase : 5-year update of the randomized ENESTnd trial. Leukemia. 2016 ; 30(5): 1044-54.(1iiDiv)
10)
Cortes JE, et al. Final 5-year study results of DASISION : The dasatinib versus imatinib study in treatment-naive chronic myeloid leukemia patients trial. J Clin Oncol. 2016 ; 34(20): 2333-40.(1iiDiv)
11)
Beccarani M, et al. European LeukemiaNet recommendations for the management of chronic myeloid leukemia : 2013. Blood. 2013 ; 122(6): 872-84.(レビュー)

CQ2
TKI 治療開始後の効果判定のモニタリングはどのような方法が勧められるか

推奨グレードカテゴリー1
国際指標(International Scale:IS)で補正したBCR-ABL1IS 定量RT-PCR によるTKI 治療前と治療後3 カ月ごとのモニタリングが推奨される。

解説

CML の治療効果判定のモニタリングには骨髄染色体検査G-banding 法によるフィラデルフィア染色体の割合,蛍光in situ ハイブリダイゼーション(fluorescence in situ hybridization:FISH)法によるBCR-ABL1 陽性細胞の割合,定量(quantitative)逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(RT-PCR)法によるBCR-ABL1 mRNA コピー数が用いられてきた。イマチニブなどのTKI 療法によりほとんどの症例が分子遺伝学的奏効MR を達成するため,ELN 2013 の治療効果判定方法の中心は末梢血を用いた定量RT-PCR 法である1)。標準化された定量RT-PCR 法が施行できない地域のためELN 2013 では定量RT-PCR 法と同時に染色体分析による評価も併記されている1)。ここで推奨する定量RT-PCR 法はBCR-ABL1 mRNA コピー数をABL あるいは対象となる遺伝子のmRNA コピー数の比を国際指標(International Scale:IS)で補正したものであり,BCR-ABL1IS と記載する。わが国においても国際指標で補正されたBCR-ABL1IS の定量RT-PCR 検査が2015年4 月から保険診療可能となっている。

IRIS 試験のサブセット解析では,イマチニブ投与後18 カ月でMMR(BCR-ABL1IS≦0.1%)達成例の7 年無イベント生存割合(EFS)95% , 無増悪生存割合(PFS)99%と極めて良好であること,イマチニブ投与後12 カ月でMMR 達成例はCML-AP/BP への移行が8 年時点まで報告されていないこと2-4)から,定量RT-PCR 法で評価されたMMR が長期生存を予測するサロゲートマーカーに位置づけられている。さらにイマチニブを対照薬として第二世代TKI であるニロチニブまたはダサチニブの臨床第Ⅲ相試験であるENESTnd 試験5, 6)またはDASISION 試験7, 8)において治療後3 カ月でBCR-ABL1IS≦10%で定義されるEarly molecular response(EMR)がTKI の種類に関わらず5 年PFS または5 年OS を予測するサロゲートマーカーであると報告されている。

参考文献

1)
Beccarani M, et al. European LeukemiaNet recommendations for the management of chronic myeloid leukemia : 2013. Blood. 2013 ; 122(6): 872-84.(レビュー)
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4)
Deininger M, et al. International randomized study of interferon vs STI571(IRIS)8-year follow-up : sustained survival and low risk for progression or events in patients with newly diagnosed chronic myeloid leukemia in chronic phase(CML-CP)treated with imatinib. Blood. 2009 ; 114 : abstract #1126.(2Diii)
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Saglio G, et al. Nilotinib versus imatinib for newly diagnosed chronic myeloid leukemia. N Engl J Med. 2010 ; 362(24): 2251-9.(1iiDiv)
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Hochhaus A, et al. Long-term benefits and risks of frontline nilotinib vs imatinib for chronic myeloid leukemia in chronic phase : 5-year update of the randomized ENESTnd trial. Leukemia. 2016 ; 30(5): 1044-54.(1iiDiv)
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Kantarjian H, et al. Dasatinib versus imatinib in newly diagnosed chronic-phase chronic myeloid leukemia. N Eng J Med. 2010 ; 362(24): 2260-70.(1iiDiv)
8)
Cortes JE, et al. Final 5-year study results of DASISION : The dasatinib versus imatinib study in treatment-naive chronic myeloid leukemia patients trial. J Clin Oncol. 2016 ; 34(20): 2333-40.(1iiDiv)

CQ3
ELN の効果判定基準によりWarning やFailure とされた症例に対する二次治療は何が勧められるか

推奨グレードカテゴリー2A
CML-CP の二次治療には,ABL1 点突然変異解析を参考としつつボスチニブを含む未投与の第二世代TKI が推奨される。

解説

ELN2013 に従い,一次治療Warning に対してはモニタリングを頻回に行い,3 カ月後の次の評価ポイントまでにはOptimal かFailure かはっきりさせる。その際,アドヒアランスの低下や副作用による休薬がないこと,トラフ濃度測定などによる薬物動態学的検討も治療抵抗性の参考となる。ELN2013 に従い,Failure と判定された場合は,ABL1 の点突然変異解析や付加的染色体異常の有無を確認する。ABL1 の点突然変異の種類によって,適切な二次治療としての第二世代TKI(ニロチニブ,ダサチニブまたはボスチニブ)を選択する1)

イマチニブ抵抗性・不耐容に対してニロチニブ400 mg BID に変更した第Ⅱ相試験の48 カ月フォローアップデータではCCyR 達成率は45%であり,4 年OS は78%と良好であった2)。またイマチニブ抵抗性・不耐容に対してダサチニブを100 mg QD, 50 mg BID, 140 mg QD, 70 mg BID にランダマイズした第Ⅲ相試験の6 年フォローアップデータでは,6 年までのMMR 達成はそれぞれの群で約40%程度であり,6 年OS は70%以上と良好であった3)。一方,ボスチニブは初回TKI(イマチニブ,ニロチニブ,またはダサチニブ)治療に抵抗性・不耐容のCML に対する二次または三次治療薬であり,イマチニブ抵抗性・不耐容286 例に対してボスチニブに変更した第Ⅰ/Ⅱ相試験の4 年フォローアップデータでは,累積CCyR 達成率は49%,2 年OS は91%と良好であった4)。さらに,イマチニブから切り替えたニロチニブまたはダサチニブTKI 抵抗性・不耐容CML に対してボスチニブに変更した第Ⅰ/Ⅱ相試験のサブ解析では,累積CCyR 達成率は24%,2 年OS は83%と良好であった5)

またTKI 抵抗性三次治療としてポナチニブの有用性が報告されている。第二世代TKI で濃厚に治療されているTKI 抵抗性・不耐容CML またはT315I が検出されているCML に対してポナチニブに変更した第Ⅱ相試験では,46%がCCyR を達成し34%がMMR を達成した6)

参考文献

1)
Gambacorti-Passerini C, et al. Chronic myeloid leukemia : Second-line drugs of choice. Am J Hematol. 2016 ; 91(1): 67-75.(レビュー)
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Khoury HJ, et al. Bosutinib is active in chronic phase chronic myeloid leukemia after imatinib and dasatinib and/or nilotinib therapy failure. Blood. 2014 : 119(15): 3403-12.(3iiiDiv)
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Cortes JE, et al. A phase 2 trial of ponatinib in Philadelphia chromosome-positive leukemias. N Engl J Med. 2013 ; 369(19): 1783-96.(3iiiDiv)

CQ4
TKI の長期治療中の副作用モニタリングとして何が勧められるか

推奨グレードカテゴリー2B
TKI 治療前および治療中には心血管イベントに関するリスク因子(年齢,性別,血圧,脂質,糖尿病,喫煙歴)を評価し,動脈硬化や肺高血圧に対する定期的な検査が必要である。

解説

第二世代TKI 長期投与により,重篤な心血管イベント[虚血性心疾患,肺高血圧症(PAH),末梢動脈閉塞症(PAOD),脳梗塞]の合併が認められる。ENESTnd 試験とDASISION 試験の5 年の長期観察では,対照群のイマチニブに比べ第二世代TKI の心血管系副作用の頻度が高かった(全Grade の虚血性心血管イベント:ニロチニブ300 mg BID 21 例/279 例 対イマチニブ400 mg QD 6 例/280 例,ダサチニブ100 mg QD 12 例/258 例 対イマチニブ400 mg QD 6 例/258 例)1, 2)。また第三世代TKI ポナチニブとイマチニブの比較試験であるEPIC 試験はポナチニブに高発現した心血管系副作用のために開始14 カ月で早期中止されたが,ポナチニブ投与10 例(6%)/154 例対イマチニブ1 例(1%)/152 例で 重篤な動脈閉塞性事象をきたした3)

これらの合併症は用量に依存するものの,発症に関するoff target 効果などの正確なメカニズムはわかっていないため,TKI の中止以外に有効な予防は明らかではない。しかしながら,少なくとも心血管イベントに関わる合併症を有する症例(糖尿病,高血圧,脂質異常症)で有意に心血管イベントが多いことから4),厳格な血糖と血圧コントロール,ストロングスタチンの投与によるLDL コレステロールのコントロールを行い,喫煙者であれば禁煙を指導する5)

NIPPON DATA 80 の長期観察研究によって,年齢,性別,血圧,脂質,糖尿病,喫煙歴からなる心血管病変の死亡リスクが示されている6)。TKI 投与前には心血管イベントのリスクをこれらのデータを参照して評価し,高リスク群(糖尿病や脂質異常症を有する喫煙,高齢者)に対しては第二世代TKI のリスクとベネフィットの両者を説明し同意を得た上で投与すべきである。また投与前と投与中は簡便で非侵襲的なABI や頚動脈超音波検査を用いた動脈硬化の定期的なモニタリングが推奨される。一方,TKI 関連血管閉塞性事象に対する抗血小板薬投与による一次予防の有効性は現在のところ明らかではない。しかしながら,心血管イベントの高リスク症例やTKI 治療前にすでに明らかな動脈硬化が認められる症例では予防を考慮しても良い。

ダサチニブでは虚血性心疾患に加え,稀ではあるもののPAH の合併が報告されている7)。PAH の発症はDASISION 試験5 年まででダサチニブ群258 例中6 例,イマチニブ群258 例中0 例である2)。投与中どのような症例にPAH 発症のリスクが高いか推測することは困難であるため,ダサチニブ投与中は定期的なモニタリングが必要である。PAH のスクリーニングおよびモニタリングとして,定期的なBNP 測定とドップラー心超音波検査が有用である7)。PAH に対する治療はダサチニブの中止であり,早期であれば可逆的であることも報告されている8)

参考文献

1)
Hochhaus A, et al. Long-term benefits and risks of frontline nilotinib vs imatinib for chronic myeloid leukemia in chronic phase : 5-year update of the randomized ENESTnd trial. Leukemia. 2016 ; 30(5): 1044-54.(1iiDiv)
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8)
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CQ5
進行期CML(AP およびBP)の治療はTKI が勧められるか

推奨グレードカテゴリー2A
CML-AP の治療は,初発AP に対してはニロチニブ400 mg BID,ダサチニブ70 mg BID を,TKI 治療中のAP に対してはボスチニブとポナチニブを含む未投与のTKI を推奨する。これらのTKI で至適奏効が得られない場合は,同種造血幹細胞移植を考慮する。
推奨グレードカテゴリー2A
CML-BP の治療は,感受性のあるTKI 単剤または化学療法併用で最大効果を得た後,可能な限り同種HSCT を推奨する。

解説

進行期CML に対するイマチニブ1, 2)の効果は限定的である。イマチニブ抵抗性AP/BP 期患者に対する単アーム前方視的試験の結果,第二世代TKI のダサチニブ3, 4),ニロチニブ5, 6),ボスチニブ7),ポナチニブ8)の臨床的有効性が明らかになった。

TKI 治療中に進行期となったCML では,TKI 抵抗性の原因となるABL1 点突然変異が認められることがあるため,点突然変異解析を推奨する。前治療で使用したTKI とは異なるTKI を使用するが,点突然変異がある場合はその変異に感受性があるTKI を選択する9)

前治療のないde novo CML-AP はTKI にナイーブであるため,前治療のあるCML-AP よりもTKI の高い感受性が期待される。51 例のde novo CML-AP の解析では,36 カ月時の第二世代TKI による全生存割合(OS)95%と良好な結果が得られている10)

CML-BC に対してはABL1 点突然変異解析にて感受性のあるTKI を選択する。さらに化学療法を併用することで治療効果の向上が期待される。Lymphoid BP であればビンクリスチンとステロイドが含まれるALL 型の化学療法11),Myeloid BP であればシタラビンが含まれるAML 型の化学療法12)を併用する。しかしながらTKI 単剤もしくは併用化学療法の治療成績は十分とは言えないため,移植適応の患者では同種造血幹細胞移植(allo-HSCT)を強く推奨する。ドイツのCML グループの報告では進行期のCML に対するallo-HSCT の3 年OS は59%であり,TKI 単剤もしくは併用化学療法の治療成績と比較し,良好な結果が期待できる13)。本邦におけるCML-BP に対する血縁者間および非血縁者間同種骨髄移植の生存割合は移植後1 年で46.2%,43.9%,移植後5年で24.6%,24.1%である14)

参考文献

1)
Talpaz M, et al. Imatinib induces durable hematologic and cytogenetic responses in patients with accelerated phase chronic myeloid leukemia : results of a phase 2 study. Blood. 2002 ; 99(6): 1928-37.(3iiiDiv)
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14)
日本における造血細胞移植.平成25 年度 全国調査報告書.日本造血細胞移植データセンター/ 日本造血細胞移植学会(レビュー)

CQ6
DMR を達成しMRD が検出されなければTKI 中止は勧められるか

推奨グレードカテゴリー4
DMR が得られて安全にTKI 治療が終了できる基準が確立されるまでは,臨床試験以外でTKI を中止すべきではない。
推奨グレードカテゴリー2A
ただし特別な事情がある場合(妊娠を望む女性や重篤な副作用の合併など),完全には否定できない急性転化に関する十分な説明同意と定期的な定量PCR によるMRD のモニタリングを行い,MMR を失ったら可及的早期に治療を再開するという条件でTKI 中止を考慮しても良い。

解説

Treatment free remission(TFR)はTKI を中止しても分子遺伝学的に再発・再燃してこない寛解状態のことを示し,STIM 試験などで長期にイマチニブ治療を受けた約40〜60%の症例で達成できることが示された1-3)。分子遺伝学的再発は多くの症例で中止後6 カ月以内に認められ,イマチニブを投与することで再度deep molecular response(DMR)を達成している1-3)。本邦においてもJALSG STIM213 試験において長期イマチニブ治療CML 症例(68 例)における64.6%の3 年TFR 率と分子遺伝学的再発した全例でイマチニブ再投与による再寛解の達成が確認された4)。JALSG STIM213 を含みイマチニブ中止の必要条件は3 年以上のイマチニブ治療により少なくともMR4.5 より深いDMR を達成し,DMR が2 年以上継続していることである1-4)。イマチニブを含む前治療に抵抗性不耐容のためダサチニブに切り替えてダサチニブの中止の安全性と有効性を検討したDADI trial の場合,DMR を1 年以上継続していることがダサチニブ中止の条件であり,63 例中30 例(49%)が中止6 カ月の時点でDMR を維持している5)。厳重なminimal residual disease(MRD)のモニタリングと再治療の条件のもと,現在まで報告されている臨床試験の中で病期進展を示した症例は1 例のみである2)。長期投与に伴う過剰な治療と晩期毒性を避け,医療経済の見地からもTFR 獲得は近い将来の目標であることは間違いないが,EURO-SKI をはじめとする大規模な臨床試験により安全にTKI 治療が終了できる基準が確立されるまでは臨床試験以外でTKI を中止すべきではない。

一方,妊娠を望む女性や重篤な副作用の合併など特別な事情の場合は,厳重な定量PCR によるMRD のモニタリングを行う条件で,TKI 中止を考慮しても良い。計画されていない妊娠は避けるべきであり6),計画された妊娠でも急性転化に関するリスクを十分に説明し,TKI 休薬に関する同意を得なければならない。計画妊娠の場合は,STIM 試験などの中止条件(3 年以上のTKI 治療期間,MR4.5 より深いDMR の達成と2 年以上の継続)に合致することを前提としてTKI 中止を検討する。そのため,DMR を達成していないOptimal 症例はTKI の変更を考慮する必要がある。イマチニブを2 年以上投与し細胞遺伝学的完全奏効を得ているものの,DMR に到達していない症例に対し行ったニロチニブ400 mg BID 群とイマチニブ維持群(400/600 mg QD)のランダム化比較試験(ENESTcmr)では,24 カ月時のDMR(この論文ではconfirmed undetectable BCR-ABL1)達成率はニロチニブ切り替え群で有意に高かった(22.1%対8.7%,p=0.0087)7)。TKI 中止の必要条件が合致せず妊娠した場合や,TKI 中止後にMMR を失った場合は,インターフェロンαへの切り替えも考慮する。1st trimester のTKI 曝露は避けるべきであり,2nd trimester 以降はやむを得ない場合に限りTKI 再開が検討可能である6)

NCCN ガイドラインversion3. 2020 では臨床試験以外でTKI を中止する場合,中止後の定期的モニタリングの重要性について言及している。国内のJALSG のTKI 中止臨床試験においては,TKI 中止後のBCR-ABL1 のモニタリングは定量PCR 法で定期的に(半年間は少なくとも毎月,次の半年間は2 カ月に1 回,その後は3 カ月に1 回)行い,MMR を失ったら可及的早期に治療を再開することで,安全にTKI の中止を行うことができた4)。日常診療でTKI 中止を考慮しなければならない場合は,予期せぬ急性転化を避けるために,臨床試験に準じたTKI 中止後の定期的モニタリングとMMR を失ったら可及的早期に治療を再開することが必須である。

参考文献

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CQ7
PV 瀉血療法後のHt 目標値を45%にすることは勧められるか

推奨グレードカテゴリー1
瀉血後の目標 Ht 値は 45%を目指す。

解説

PV に対する治療の目標は,赤血球の増加による循環障害を改善し,血栓症や出血を予防することである。Ht 値を45%未満となるようコントロールすると血栓症発症率が低下するという報告1)から,PV 患者のHt 値は,瀉血によって45%未満となるようにコントロールすることが広く推奨されてきた。小数例の後方視的研究では,Ht 値が48%を超えると血栓症が増加し,生存割合が低下すると報告されている2)

アスピリン,瀉血,ヒドロキシウレアなどの細胞減少療法によるPV 治療の目標Ht 値に関する前方視的観察研究では,Ht 値が55%未満の場合も,45%未満の場合と同程度の血栓症リスク,および生存割合であると報告されている3)。一方,高リスク患者245 例を含む365 例のPV を対象とした前方視的ランダム化比較試験では,Ht<45%を目標に治療する群(低Ht 群)の方が,45%≦Ht≦50%を目標に治療する群(高Ht 群)と比較して,心血管障害または主要血栓症による死亡が少ないと報告された4)。ただし,瀉血に加えヒドロキシウレアの投与が約半数の患者になされており,低Ht 群では,Ht だけではなく白血球数も高Ht 群と較べ低くなっている。白血球数が下がると血栓症の頻度が低下することが知られており,そのため,純粋にHt を下げることが血栓症予防に有用であるのか,あるいはHt を下げる治療によりHt や白血球数を減少させることが有用なのかについては現時点では不明である。いずれにしても,高リスクPV に対して,アスピリンを投与することに加え,瀉血やヒドロキシウレアを用いてHt<45%を目標に治療することが勧められる。ただし,いずれの研究も欧米人を対象としたものであり,本邦にそのまま適応できるかは検討が必要である。

参考文献

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CQ8
高リスクET における細胞減少療法薬は何が勧められるか

推奨グレードカテゴリー1
ヒドロキシウレア,アナグレリドいずれも,動静脈血栓症や重篤な出血などの予防に有用である。

解説

ET 高リスク群では血栓症予防を目的として,細胞減少療法と抗血小板療法を行う。細胞減少療法薬には,ヒドロキシウレア,アナグレリド,インターフェロン(IFN)がある。このうちヒドロキシウレアはもっとも頻用される細胞減少療法薬であり,経過観察とのランダム化比較試験では,観察期間27 カ月の血栓症の発症はヒドロキシウレア群3.6%,経過観察群24%と,ヒドロキシウレア投与により有意に血栓症の発症が減少している1)。ET 高リスク群において,細胞減少療法薬のヒドロキシウレアとアナグレリドを直接比較した2 つのランダム化比較試験が報告されている。PVSG 診断基準により診断されたET で,かつ82%が既治療例である809 例を対象とした試験では,アナグレリド+低用量アスピリンは,ヒドロキシウレア+低用量アスピリンより静脈血栓症のリスクは低いが,心房血栓,重篤な出血,骨髄線維症への進展頻度が高く,EFS は劣るという結論であった2)。一方,WHO 分類(2008)により診断されたET で,かつ前治療歴がない初回治療253 例を対象とした試験(この試験では原則単剤療法であり,アスピリンの併用は28〜29%の例に行われている)では,アナグレリドはヒドロキシウレアと比べ血栓症や出血の頻度に差がなく,またEFS にも有意差を認めないという結果であった3)。現在ET の診断はWHO 分類に則ることが一般的であることを考えると,高リスクET 細胞減少療法の初回治療薬としてヒドロキシウレア,アナグレリドいずれも推奨される。

参考文献

1)
Cortelazzo S, et al. Hydroxyurea for patients with essential thrombocythemia and a high risk of thrombosis. N Engl J Med. 1995 ; 332(17): 1132-6.(1iiDi)
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Harrison CN, et al ; United Kingdom Medical Research Council Primary Thrombocythemia 1 Study. Hydroxyurea compared with anagrelide in high-risk essential thrombocythemia. N Engl J Med. 2005 ; 353(1): 33-45.(1iiDi)
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Gisslinger H, et al. Anagrelide compared with hydroxyurea in WHO-classified essential thrombocythemia : the ANAHYDRET Study, a randomized controlled trial. Blood. 2013 ; 121(10): 1720-8.(1iiDi)

CQ9
心血管リスクファクターを有する低リスクET 症例に対してアスピリン投与は勧められるか

推奨グレードカテゴリー2A
低リスクET(60 歳未満,かつ血栓症の既往がない)に対するアスピリン投与の有用性は示されていない。しかし,低リスクET のうち,心血管リスクファクター(喫煙,高血圧,脂質異常症,糖尿病)のある症例やJAK2 変異のある症例では,抗血小板療法(低用量アスピリン75〜100 mg/日)を行ってもよい。

解説

高リスクET(60 歳以上,または血栓症の既往がある)では,ヒドロキシウレアと低用量アスピリン投与が血栓症の発症を有意に抑制した1)が,低リスクET(60 歳未満,かつ血栓症の既往がない)に対する抗血小板療法の有用性はこれまで不明であった。低リスクET 患者を対象とした無治療経過観察群と抗血小板療法群(アスピリン投与を含む)における血栓症発症頻度の後方視的解析によると,抗血小板療法による血栓予防効果は認められていない2)。しかし,低リスクET 患者の中で,心血管リスクファクター(喫煙,高血圧,脂質異常症,糖尿病)のある患者,JAK2 変異のある患者に限定したサブ解析では,抗血小板療法により血栓症の発症リスクが低下していた。一方,CALR 変異陽性低リスクET 患者を対象とした後方視的解析では,低用量アスピリンは血栓症のリスクは低下させず,出血のリスクを増加させる結果であった3)。以上より,低リスクET でもJAK2 変異陽性もしくは心血管リスクファクターを有する場合には,抗血小板療法を行ってもよい2)。一方,それ以外の低リスクET 患者では,抗血小板療法に出血リスクを許容する有益性は見出せない。特にCALR 変異陽性低リスク症例での投与は,出血リスクの増大につながるとの報告もあることに留意が必要である3)

参考文献

1)
Harrison CN, et al ; United Kingdom Medical Research Council Primary Thrombocythemia 1 Study. Hydroxyurea compared with anagrelide in high-risk essential thrombocythemia. N Engl J Med. 2005 ; 353(1): 33-45.(1iiDi)
2)
Alvarez-Larrán A, et al. Observation versus antiplatelet therapy as primary prophylaxis for thrombosis in low-risk essential thrombocythemia. Blood. 2010 ; 116(8): 1205-10.(3iiC)
3)
Alvarez-Larrán, et al. Antiplatelet therapy versus observation in low-risk essential thrombocythemia with CALR mutation. Haematologica. 2016 ; 101(8): 926-31.(3iiC)

CQ10
若年者低リスクPV/ET 症例に対してヒドロキシウレアによる治療介入は勧められるか

推奨グレードカテゴリー4
60 歳未満の低リスクPV/ET 症例に対し,ヒドロキシウレアの有効性は示されていない。また,急性白血病化または二次がんの頻度を増加させる可能性が否定できないため,60 歳未満の低リスクPV/ET 症例に対しヒドロキシウレアによる治療介入は推奨されない。

解説

ヒドロキシウレアはPV/ET の細胞数減少に有用であり,高リスク症例に対しては,ヒドロキシウレア+低用量アスピリンの血栓症,出血予防に対する有用性が示されている1)。低リスク症例に対しての有用性は不明であったが,40〜59 歳,血栓症・出血の既往なし,血小板数<150 万/μ L のいわゆる低リスクET を対象としたアスピリン単独とヒドロキシウレア+低用量アスピリンの有用性を比較する第Ⅲ相試験の結果が最近報告された2)。主要評価項目である動脈/静脈血栓症,重篤な出血,血栓症/出血による死亡などのイベントがない状態での生存率は両群に差はなく,また総生存率にも有意差を認めていないことから,低リスクET に対しヒドロキシウレアによる治療介入は推奨されない。

ブスルファンなどのアルキル化剤の二次発がんはよく知られているが,ヒドロキシウレアの二次発がんについても懸念されている。ET に対する化学療法による二次がんとしてはAML/MDS のほか非ホジキンリンパ腫(non Hodgkin lymphoma:NHL)などのリンパ系腫瘍,非血液腫瘍としては肺がん,大腸がん,腎がん,膀胱がん,前立腺がんなどさまざまな固形がんが報告されている。しかし,ヒドロキシウレア単剤による治療介入が無治療群と比較し二次発がんを増加させるかは不明である(11.2% vs 7.3%)3)。また,PV/ET の自然史として急性白血病化が知られているが,治療介入によりその頻度が増加するか否かが治療選択を行う上で重要なポイントとなる。11,039 症例の大規模なスウェーデンのコホート研究では2.6%がAML/MDS に転化したが,ヒドロキシウレアの投与歴により有意にリスクが増加することはなかった4)

初発PV に関しては,ヒドロキシウレア単剤とコントロール群のランダム化比較試験がないものの,ヒドロキシウレアによる二次がんのリスクを考え,多くの臨床医は60 歳以上または血栓症の既往がある症例を選んでヒドロキシウレアを使っている5)。以上より若年者低リスクPV/ET 症例に対してヒドロキシウレアによる治療介入は勧められない。

参考文献

1)
Harrison CN, et al ; United Kingdom Medical Research Council Primary Thrombocythemia 1 Study. Hydroxyurea compared with anagrelide in high-risk essential thrombocythemia. N Engl J Med. 2005 ; 353(1): 33-45.(1iiDi)
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3)
Radaelli F, et al. Second malignancies in essential thrombocythemia(ET): a retrospective analysis of 331 patients with long-term follow-up from a single institution. Hematology. 2008 ; 13(4): 195-202.(3iiC)
4)
Björkholm M, et al. Treatment-related risk factors for transformation to acute myeloid leukemia and myelodysplastic syndromes in myeloproliferative neoplasms. J Clin Oncol. 2011 ; 29(17): 2410-5.(3iC)
5)
Barbui T, et al. Philadelphia-negative classical myeloproliferative neoplasms : critical concepts and management recommendations from European LeukemiaNet. J Clin Oncol. 2011 ; 29(6): 761-70.(レビュー)

CQ11
妊娠合併ET に対して流産を減少させるための治療介入は勧められるか

推奨グレードカテゴリー2B
流産を減らすことができる可能性があるため,少量アスピリンによる治療介入を推奨する。

解説

妊娠合併ET では合併症として妊娠早期の流産が多く,稀に母体の出血や血栓症が報告されている。EXELS(Evaluation of Anagrelide Efficacy and Long-term Safety)試験では,54 件のET 症例における妊娠が登録され,生産率(Live Birth)は75.9% であった1)。一方,最近のイギリスでの前向き調査では,58 件の骨髄増殖性腫瘍合併妊娠(うち47 件がET 合併)において,流産と死産はそれぞれ1 例のみであり,過去の報告と比べ流産・死産の合併率が低い結果であった2)

妊娠合併ET についての,治療介入の有無によるランダム化比較試験はない。しかしながら,妊娠合併ET のシステマティックレビューでは,リスクを問わず妊娠合併ET に対しての少量アスピリンの有用性について言及されている2, 3)。特にJAK2V617F は妊娠合併ET において合併症を引き起こす独立した要因であり,JAK2V617F 変異を認める場合は積極的な介入が必要とされる4)。また,出産の1〜2 週前にはアスピリンを中止し,出産後出血がないことを確認した後,アスピリンを再開し6 週間は継続することが推奨されている5)

別の後方視的な検討においては,インターフェロンαが,胎児死亡を有意に減らすと報告されている。特にJAK2V617F 変異は流産をきたす独立した予後不良因子であり,インターフェロンαで血小板数を減らすことにより合併症を回避できる可能性が指摘されている6)。インターフェロンの中でもPEG-インターフェロンαは認容性が高く,また正常出産に至る率が高いことが症例集積研究で示されている3)。JAK2V617F 変異を有する高リスク症例に対しては少量アスピリン+インターフェロンα(保険適用外)による治療介入も考慮される。ET 合併妊娠では,深部静脈血栓症のリスクも知られており,特に出産後の合併率が3% を超えるため,この期間における低分子ヘパリン(保険適用外)の使用を推奨する報告もある7)

参考文献

1)
Birgegård G, et al. Treatment of essential thrombocythemia in Europe: A prospective long-term observational study of 3649 high-risk patients in the evaluation of anagrelide efficacy and long-term safety study. Haematologica. 2018 ; 103(1): 51-60.(3iiiC)
2)
Alimam S, et al. Pregnancy outcomes in myeloproliferative neoplasms: UK prospective cohort study. Br J Haematol. 2016 ; 175(1): 31-6.(3iC)
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4)
Passamonti F, et al. Aspirin in pregnant patients with essential thrombocythemia : a retrospective analysis of 129 pregnancies. J Thromb Haemost. 2010 ; 8(2): 411-3.(3iiC)
5)
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6)
Melillo L, et al. Outcome of 122 pregnancies in essential thrombocythemia patients : A report from the Italian registry. Am J Hematol. 2009 ; 84(10): 636-40.(3iiC)
7)
Skeith L, et al. Risk of venous thromboembolism in pregnant women with essential thrombocythemia : A systematic review and meta-analysis. Blood. 2017 ; 129(8): 934-9.(3iiiC)

CQ12
高リスク,中間-Ⅱリスク原発性骨髄線維症に対する治療法は何が勧められるか

推奨グレードカテゴリー2B
若年で合併症がなく適切なドナーが有る場合には同種造血幹細胞移植を,移植非適応で脾腫や全身症候を伴う場合にはルキソリチニブを推奨する。

解説

現時点では,原発性骨髄線維症(PMF)を根治させうる治療は同種造血幹細胞移植(allo-HSCT)のみである。allo-HSCT を行った症例と行わなかった症例について,生存率を後方視的に解析した研究では,DIPSS で中間-Ⅱ以上でかつ65 歳未満のPMF 症例では,allo-HSCT により死亡リスクが減少することが示されている1)。このため,DIPSS で中間-Ⅱ以上で65 歳未満であれば,allo-HSCT を行うことが推奨される。しかしながら,通常の骨髄破壊的前処置では治療関連死率が30〜40%と高いこと,またPMF 例の多くは高齢で発症するため適応症例が限られることなどの問題が指摘されている2)。一方で,骨髄非破壊的前処置を用いることにより,移植関連死亡率が低下するとされるが,逆に生着不全や再発率が高くなるとの懸念もある。これまでに,骨髄破壊的前処置と非破壊的前処置について前方視的に検証された臨床試験は行われておらず,後方視的解析が報告されているのみである。Gupta らの報告では,骨髄非破壊的前処置を受けた群の方が,年齢が高くまた罹病期間が長かったにも関わらず,両群の間で移植後の再発率や生存率に相違は認めないとの結果であった3)

PMF に対するallo-HSCT 以外の治療の選択肢としては,JAK1/JAK2 阻害薬ルキソリチニブがある。ルキソリチニブは脾臓縮小率をプライマリー・エンドポイントとした2 つの第Ⅲ相ランダム化比較試験において,プラセボもしくは既存治療に対して優位性を示した4, 5)。全身症候についてもルキソリチニブ群で有意な改善が認められた。さらに,長期観察の結果からは,ルキソリチニブは全生存割合の改善にも寄与することが示唆されている6)。ルキソリチニブとallo-HSCT について,生存への優位性を直接比較した研究は発表されていない。

以上の結果からは,高リスクおよび中間-ⅡリスクMF に対する治療としては,若年で合併症がなく適切なドナーが得られる場合には,allo-HSCT が推奨される。移植非適応症例については,脾腫や全身症候を伴う場合にはルキソリチニブが勧められる。

参考文献

1)
Kröger N, et al. Impact of allogeneic stem cell transplantation on survival of patients less than 65 years of age with primary myelofibrosis. Blood. 2015 ; 125(21): 3347-50.(3iiiA)
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5 慢性リンパ性白血病/小リンパ球性リンパ腫
(chronic lymphocytic leukemia/small lymphocytic lymphoma:CLL/SLL)

総論

慢性リンパ性白血病(chronic lymphocytic leukemia:CLL)は,単一な小型円形から軽度の異型を持つB リンパ球の腫瘍で,CD5 とCD23 の発現がみられ,日本では稀な腫瘍である。小リンパ球性リンパ腫(small lymphocytic lymphoma:SLL)は末梢血や骨髄への浸潤がないCLL と同一の細胞の腫瘍と定義される1, 2)

多くは緩徐な経過を示すが,一部に進行が速く,予後不良なものがみられる。病期分類にて病期を決定し,治療開始規準に準じて治療を実施する。ブルトン型チロシンキナーゼ(Bruton’s tyrosine kinase:BTK)阻害薬であるイブルチニブやリツキシマブを併用するフルダラビン+シクロホスファミド療法(FCR 療法)が標準治療である。染色体17p 欠失もしくはTP53 遺伝子異常を認める症例は治療抵抗性で予後不良である2-5)

1.病期分類

治療方針の決定に必須で,米国では改訂Rai 分類,欧州ではBinet 分類(表12, 3, 5)が使用される。診察所見と貧血,血小板減少だけで診断し,CT などの画像所見は用いない。

SLL の病期分類は,悪性リンパ腫の病期分類に準ずる。

表1-1 Rai の病期分類5)
表1-2 Binet の病期分類

2.予後因子

1)病期分類

50%生存期間は,改訂Rai 分類低リスクは10 年以上,中間リスクは8 年以上年,高リスクは6.5 年,Binet 分類の病期A 期は10 年以上,B 期は8 年以上,C 期は6.5 年である3)

2)17p 欠失とTP53 異常(変異と欠失)

17p 欠失またはTP53 異常(変異と欠失)がみられる場合は,通常の化学免疫療法に抵抗性であることが知られており,治療選択には必須である3, 5-7)

3)Physical fitness

Eastern Cooperative Oncology Group(ECOG)のperformance status(PS)以外にも,併存疾患指数cumulative illness rating scale(CIRS)などの総合的高齢者機能評価を用い,標準治療が実施可能な“fit”群,標準治療が推奨されない“unfit”,そしてbest supportive care(BSC)が考慮される“frail”という考えが一般的になりつつある3, 5)。総合的高齢者機能評価のなかでも併存疾患により全生存(OS)が異なることが報告されている8)

4)治療反応性

17p 欠失またはTP53 異常(変異と欠失)の有無にかかわらず,プリンアナログ抵抗性,またはFCR もしくはFCR 類似療法後2 年(もしくは3 年)の再発のものは,予後不良でハイリスクとされている2, 9)。また,ハイリスクの患者に17p 欠失またはTP53 異常(変異と欠失)があった場合はウルトラハイリスクと呼ばれる9)

5)その他の予後因子

①予後不良の染色体異常[11q(ATM 座)と17p(p53 座)の欠失の染色体異常],②免疫グロブリン重鎖可変部体細胞遺伝子変異somatic hypermutation of the immunoglobulin heavy chain variable region genes(IGHV)陰性,③ CD38 発現,④ zeta-associated protein of 70kDa(ZAP-70)発現を示すものは予後不良である3-5, 6)。その他,高齢,男性,びまん性骨髄浸潤,短いリンパ球倍加時間,Ki67 高発現,血清チミジンキナーゼ,β2 ミクログロブリン(β2MG),可溶性CD23 やTNFαの高値,CD45d 発現,染色体複雑核型,lipoprotein lipase 高発現,microRNA 発現変異などの報告と,NOTCH1,BIRC3,SF3B1,MYD88 変異など新しい遺伝子異常が報告されている3, 7, 9, 10)。前方視的試験の結果からも,TP53 だけでなく,NOTCH1 とSF3B1 変異があるものは予後不良であることが示されている11-13)。International prognostic index for patients with chronic lymphocytic leukaemia(CLL-IPI)により,未治療CLL 患者を4 つのグループに層別化可能であると報告された14)。これは5 つの因子(17p 欠失/TP53・変異4 点,IGHV 変異なし2 点,血清β2-ミクログロブリン>3.5 mg/L,臨床病期Binet 分類A 期およびRai 分類0 期以外,年齢>65 歳各1 点)を10 点満点でスコア化したもので,5 年生存割合がlow リスク(0〜1 点)93.2%[ 95%CI:90.5-96.0],intermediateリスク(2〜3 点)79.3%[95%CI:75.5-83.2],highリスク(4〜6点)63.3%[95%CI:57.9-68.8],very highリスク(7〜10点)23.3%[ 95%CI:12.5-34.1]であった14)

3.治療

CLL は経過の長い疾患であるため,治療関連死亡は避けるべきである。慎重な治療方法の選択の検討が必須であり,その概略を以下に示す。病期(Rai,Binet 分類)ならびに治療の必要性は下記の治療開始基準(表2)を参考にする2)。活動性病変のない早期CLL 患者(改訂Rai 分類の低または中間リスク,Binet 分類のA またはB 期)に,治療を行ってもOS は延長しないため実施しない。治療対象CLL(活動性病変のある早期および進行期)患者に対しては,FCR 療法が標準治療であるが毒性が強いため,患者のphysical fittness を考慮して実施する。FISH 検査による17p 欠失やTP53 異常(変異と欠失)などを認める場合はフルダラビンなどの治療に抵抗性であるためBTK 阻害薬であるイブルチニブなどで治療する。

再発の場合は,Physical fitness,17p 欠失/TP53 異常(変異と欠失)に加え,初回治療の反応性により治療選択が異なる。治療抵抗性,または早期(2〜3 年以内)の再発の場合は予後不良であるため,それ以降の晩期再発の場合と治療戦略が異なる3, 5, 7)

表2 International Workshop on Chronic Lymphocytic Leukemia 2)で示された治療開始規準

4.治療効果判定

治療効果判定2)表3 によって実施する。

日本でどのように実際の臨床に組み入れるのか問題も多いが,海外では,微小残存病変(MRD)により治療成績の評価がなされてきている。MRD の測定はフローサイトメトリー(FCM)と定量PCR の2 つの測定法が海外では推奨されている。FCM 法はB 細胞同定のためのCD19 とともにCD5,CD43,CD79b,CD81,および20 または22 の6 種類のマーカーで測定する方法で,0.01%(10−4)の感度が得られるが,新鮮細胞が必要である。定量PCR は,新鮮細胞は不要であるが,患者特有のプライマーの設定が必要である7, 15)。メタアナリシスの結果,MRD は前方視的臨床研究の評価項目になりうると報告されている16)

注1)
リツキシマブは第2 版第1 刷発刊時には保険適用外であったが,2019 年3 月より保険適用となった。
注2)
イブルチニブは第2 版第1 刷発刊時には初回治療は保険適用外であったが,2018 年7 月より初回治療も保険適用となった。
表3 治療効果判定2)

参考文献

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Campo E, et al. Chronic lymphocytic leukaemia/small lymphocytic lymphoma. Swerdlow SH, et al. eds. WHO Classification of Tumours of Haematopoietic and Lymphoid Tissues. Lyon, IARC ; 2017 : pp216-21.(テキストブック)
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アルゴリズム

CLL の診断がなされた場合,早期のCLL[総論の表2 に示す活動性の病態がないBinet 病期分類A 期とB 期,および無症状の改訂Rai 分類病期低・中間リスク(Rai 分類病期0 期,Ⅰ期,Ⅱ期)]患者は,経過観察することが推奨される(CQ1)。活動性徴候が生じたり,進行期になった場合は,患者の状態(physical fitness)によりfit,unfit,frail であるかを評価し,fit であれば標準治療が実施し,unfit であれば標準治療が実施困難と判断をする1-4)。CLL のNCCN ガイドライン3)では,併存疾患などの評価はCumulative Illness Rating Scale(CIRS),その他Comprehensive Geriatric assessment としてMini-Mental State Examination(MMSE),1.5-item Geriatric DepressionScale, Barthel Index, instrumental activities of daily living(IADLs)を用いる。

日本でも,2018 年7 月にBTK 阻害薬イブルチニブの初回治療,2019 年3 月にリツキシマブ,2019 年9 月にベネトクラクスが再発および難治性CLL/SLL に対してリツキシマブとの併用療法が承認された。しかし,オファツムマブとアレムツズマブは初回治療としての使用は適用外である。化学療法薬としてはchlorambucil が海外では標準治療薬であるが,日本では未承認である。また,PI3 キナーゼ阻害薬は日本では未承認である。

初回治療は,fit であればフルダラビン+シクロホスファミド+リツキシマブの併用療法とイブルチニブが標準治療として推奨されている(CQ2)。併存疾患などで,標準治療であるFCR 療法などの多剤併用化学(免疫)療法が,不可能(unfit)な場合も,イブルチニブや抗体薬を併用する化学免疫療法が標準治療となっている。日本ではベンダムスチンやフルダラビン,シクロホスファミド単剤療法を実施するか,減量したFC 療法などを実施する(CQ3)。

染色体17p 欠失もしくはTP53 異常(変異と欠失)がある白血病細胞が主体である場合は,予後不良であることが明らかであるため,イブルチニブの使用が推奨される(CQ4)。

再発や治療抵抗性を示す場合は,再検査によっても染色体17p 欠失もしくはTP53 異常(変異と欠失)がない場合,2〜3 年以降の再発は初回治療を再度実施するか(CQ5),ベネトクラクス+リツキシマブ,初回治療でイブルチニブが使用されていなければイブルチニブを考慮する(CQ5)。ハイリスクの患者(2〜3 年以内の再発,初回治療抵抗性)や染色体17p 欠失もしくはTP53 異常(変異と欠失)がある場合は,ベネトクラクス+リツキシマブやイブルチニブで救援療法を実施後,部分奏効以上の治療効果がある若年者や染色体17p 欠失を有する症例は同種造血幹細胞移植(allogeneic hematopoietic stem cell transplantation:allo-HSCT,同種移植)を考慮する(CQ7)。また,再発例に対して抗CD20 抗体オファツムマブと抗CD52 抗体アレムツズマブの使用も可能である(CQ67)。自家造血幹細胞移植併用大量化学療法は,ランダム化比較試験で全生存期間の延長を示さないため推奨されない。同種移植は,若年者でハイリスクもしくはウルトラハイリスクの場合で,救援療法に反応がある場合には考慮する(CQ7)。Richter 症候群形質転換した場合は,救援治療により完全奏効/部分奏効(CR/PR)に達した場合は造血幹細胞移植が考慮される(CQ8)。

参考文献

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CQ1
早期CLL に対して治療は勧められるか

推奨グレードカテゴリー1
活動性の病態がないBinet 病期分類A とB,および無症状の改訂Rai分類低リスクおよび中間リスク(Rai 分類病期0〜Ⅱ期)患者は,治療を開始しても生存の向上には寄与しないため,経過観察することが推奨される。
推奨グレードカテゴリー2A
進行期(活動性病態のあるBinet A とB 期,Binet C 期,症状のあるRai 分類病期0〜Ⅱ期,Rai 分類病期Ⅲ〜Ⅳ期)の患者は治療を開始することを考慮する。

解説

海外の臨床試験1, 2)とメタアナリシス3)の結果から,活動性病態がないBinet 病期分類A とB,および無症状の改訂Rai 分類低リスクおよび中間リスク(Rai 分類病期0〜Ⅱ期)の時期から治療を開始しても,10 年全生存割合が治療群44%,未治療群47%と生存期間の延長は得られなかった。これらのランダム化比較試験は国内未承認薬であるchlorambucil との比較試験であるが,すべての試験で生存期間の延長を示さなかった。

早期(Binet A 期)CLL のハイリスク(びまん性骨髄浸潤,リンパ球倍加時間が12 カ月未満,血清thymidine kinase(TK)>7.0 U/L,またはβ2 ミクログロブリン>3.5 mg/L)の患者を対象にしたフルダラビン単剤と経過観察を比較したランダム化試験では,フルダラビン治療によりPFSは改善したが,OS の改善はみられなかった4)。またリンパ球倍化時間<12 カ月,血清チミジンキナーゼ>10 U/L,unmutated immunoglobulin heavy chain variable region gene(IGHV)status とFISH による予後不良細胞遺伝学的異常(11q 欠失,17p 欠失,trisomy12)の存在という4 つの因子のうち2 つ以上あればハイリスクと定義し,ハイリスク早期CLL 患者に対して,フルダラビン,シクロホスファミド,リツキシマブ併用療法(FCR 療法)の早期介入の有用性を検証するランダム化比較第Ⅲ相試験が実施され,EFS の延長は有意に示したが,OS は変わらなかった5)。これらの結果から,現在もハイリスクであっても,早期に治療するメリットはないと考えられる。

International Workshop on Chronic Lymphocytic Leukemia の治療開始規準(総論の表2 参照)が示されているが,他の低悪性度リンパ腫とは異なり,進行期の患者で,無治療経過観察と治療群とのランダム化比較試験が実施されたわけではない。しかしほとんどの患者が有症状であり,治療せずに経過観察をすることは不適切と考えられるため,治療を考慮すべきである6-10)

参考文献

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Stilgenbauer S, et al. Management of chronic lymphocytic leukemia. Am Soc Clin Oncol Educ Book. 2015 : 164-75.(レビュー)

CQ2
標準治療実施可能(fit)な未治療進行期CLL に対して化学免疫療法は勧められるか

推奨グレードカテゴリー1
17p 欠失/TP53 変異がなければ化学免疫療法が推奨される。
高齢者ではBTK 阻害薬イブルチニブも推奨される。

解説

抗体薬をフルダラビン+シクロホスファミド(FC)療法に加えることは,ドイツの5 つの臨床試験のメタアナリシスの結果からも推奨される1)。FC 療法にリツキシマブを加えた治療法(FCR 療法)とFC 療法の大規模ランダム化比較試験(CLL8 試験)2)によりFCR 療法が,実施可能であれば標準治療である3, 4)。FCR 療法が実施可能な条件としては,CLL8 試験の登録基準から考えられることが多い。CLL8 試験では年齢制限はなかったが,一般的には年齢は80 歳未満であり,併存疾患指数Cumulative Illness Rating Scale(CIRS)score()のスコアが6 以下で,クレアチニン・クリアランスが70 ml/分以上をさすことが多い。しかしFCR 療法も17p 欠失症例に対しては治療効果が乏しく予後が不良である2)。また,CLL8 は長期の治療成績も報告されており,FCR 療法はFC 療法に比較して,17p 欠失症例を除いてPFS もOS も有意に延長しており,サブ解析の結果IGHV 遺伝子変異のあるもの予後が特に良好である5)

フルダラビンの代わりにペントスタチン6),クラドリビン7)も同様に有効であると考えられるが,フルダラビンに比較してエビデンスは乏しい。ベンダムスチン+リツキシマブ(BR)療法とFCR 療法の比較試験があるが,治療成績はFCR 療法が良好であった8)

65 歳以上の高齢者ではBTK 阻害薬であるイブルチニブ単剤治療は,標準治療であったchlorambucil よりPFS とOS を有意に延長し9),BR 療法と比較して,OS の延長はみられなかったがPFS を有意に延長させた10)

注1)
リツキシマブは第2 版第1 刷発刊時には適用外であったが,2019 年3 月より保険適用となった。CLL に対するリツキシマブは500 mg/m2 である。
注2)
chlorambucil は国内未承認,クラドリビン,ペントスタチンはCLL に対して保険適用外である。
注3)
イブルチニブは第2 版第1 刷発刊時には初回治療は適用外であったが,2018 年7 月より初回治療も適用となった。

参考文献

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Cramer P, et al. Outcome of advanced chronic lymphocytic leukemia following different first-line and relapse therapies : a meta-analysis of five prospective trials by the German CLL Study Group(GCLLSG). Haematologica. 2015 ; 100(11): 1451-9.(1iiA)
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Hallek M, et al. International Group of Investigators ; German Chronic Lymphocytic Leukaemia Study Group. Addition of rituximab to fludarabine and cyclophosphamide in patients with chronic lymphocytic leukaemia : a randomised, open-label, phase 3 trial. Lancet. 2010 ; 376(9747): 1164-74.(1iiDiii)
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Eichhorst B, et al. Chronic lymphocytic leukaemia : ESMO Clinical Practice Guidelines for diagnosis, treatment and follow-up. Ann Oncol 2015 ; 26 Suppl 5 : v78-84.(ガイドライン)
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8)
Eichhorst B, et al. First-line chemoimmunotherapy with bendamustine and rituximab versus fludarabine, cyclophosphamide, and rituximab in patients with advanced chronic lymphocytic leukaemia(CLL10): an international, open-label, randomised, phase 3, non-inferiority trial. Lancet Oncol. 2016 ; 17(7): 928-42.(1iiDiii)
9)
Burger JA, et al. Ibrutinib as Initial Therapy for Patients with Chronic Lymphocytic Leukemia. N Engl J Med. 2015 ; 373(25): 2425-37.(1iiDiii)
10)
Woyach JA, et al. Ibrutinib Regimens versus Chemoimmunotherapy in Older Patients with Untreated CLL. N Engl J Med. 2018 ; 379(26): 2517-28.(1iiDiii)

CQ3
標準治療実施不可能(unfit)な未治療進行期CLL に対して化学免疫療法は勧められるか

推奨グレードカテゴリー1
17p 欠失/TP53 異常(変異と欠失)がなければ化学免疫療法が推奨される。BTK 阻害薬イブルチニブも推奨される。

解説

FCR 療法が標準治療となったCLL8 試験1)では年齢制限はなかったが,一般的には年齢は80 歳未満であり,併存疾患指数 Cumulative Illness Rating Scale(CIRS)score.()A CIRS ≤ 6(CIRS)のスコアが6 以下で,クレアチニン・クリアランスが70 ml/分以上を適格基準にしたため,この条件がFCR 療法を実施する基準になっていることが多い。

FCR 療法などの化学免疫療法が実施できない高齢者ならびに,併存疾患があり標準治療が不可能な場合の標準治療は確立されていない。従来は,65 歳以上の患者を対象にしたフルダラビンとchlorambucil のランダム化比較試験で,フルダラビンの優位性は証明されず2),高齢者に対するフルラダラビン+シクロホスファミド併用療法はフルダラビン単独療法に比較して奏効割合は高いが,生存期間は延長せず,骨髄抑制などの有害事象の頻度が高い3)ため,欧米ではchlorambucil 単独療法が標準治療とされてきた。国内ではchlorambucil が未承認薬のため使用できないため,フルダラビンを中心とする治療が実施されるが,その用量は決定されていない。少数例であるが前方視研究で,経口フルダラビン+シクロホスファミドの有効性が報告されている4)

年齢の制限がない大規模臨床試験では,年齢により治療成績の差はみられない1, 5)。しかし,実際は高齢者や併存疾患がある患者では通常量での標準治療を実施することは困難であり,患者個々の状況をよく把握し,治療方法の選択をすべきである。

Chloramubucil とリツキシマブ併用の第Ⅱ相の比較試験が報告されている6, 7)。Chloramubucil と抗体薬の併用の有効性は,リツキシマブならびにオビヌツズマブ(保険適用外)併用療法の治療成績が良好である8)。またオファツムマブ(初回治療は適用外)との併用もランダム化比較第Ⅲ相試験で,有効性が証明されている9)。ベンダムスチン単剤との比較試験10)が実施され,ORR とPFS は優れており,有害事象も管理可能であった。またFCR 療法とBR 療法の非劣性をみる比較第Ⅲ相試験が実施され,65 歳以上に限ればBR 療法はFCR 療法とPFS は特に差はなく,有害事象も軽度であった5)。そのため,高齢者やunfit な患者にはBR 療法がよいのではないかと考えられているが,エビデンスは高くない11)。また,減量をしたFC 療法にリツキシマブを加えた治療も後方視研究であるが報告され,この場合は外来治療が可能であったと報告されている12, 13)

これらの報告からchlorambucil(国内未承認),ベンダムスチンにリツキシマブやオファツムマブ(保険適用外),オビヌツズマブ(保険適用外)などの化学免疫療法が推奨される。

65 歳以上の高齢者ではBTK 阻害薬であるイブルチニブ単剤治療は,標準治療であったchlorambucil よりPFS とOS を有意に延長し9),BR 療法と比較して,OS の延長はみられなかったがPFS を有意に延長させた10)。これらの試験結果からunfit なCLL 患者に対して初回治療からイブルチニブが標準治療になるが,高価な薬剤であり医療経済的な側面も考慮する必要があると考えられる。

注1)
リツキシマブは第2 版第1 刷発刊時には初回治療は適用外であったが,2019 年3 月より初回治療も保険適用となった。
注2)
イブルチニブは第2 版第1 刷発刊時には初回治療は適用外であったが,2018 年7 月より初回治療も適用となった。

参考文献

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Hallek M, et al. International Group of Investigators ; German Chronic Lymphocytic Leukaemia Study Group. Addition of rituximab to fludarabine and cyclophosphamide in patients with chronic lymphocytic leukaemia : a randomised, open-label, phase 3 trial. Lancet. 2010 ; 376(9747): 1164-74.(1iiDiii)
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CQ4
17p 欠失/TP53 異常(変異と欠失)のある進行期CLL に対してBTK 阻害薬や抗CD52 抗体薬は勧められるか

推奨グレードカテゴリー1
17p 欠失/TP53 異常(変異と欠失)のある進行期CLL では,BTK 阻害薬であるイブルチニブの使用が推奨される。

解説

染色体17p 欠失とTP53 異常(変異と欠失)があると,化学免疫療法に抵抗性である1-3)。染色体17p 欠失/TP53 異常(変異と欠失)を持つ白血病細胞が多くなれば,これらの細胞は,フルダラビンなどの抗がん薬に抵抗性であり,50% OS は2〜5 年と不良である1)

17p 欠失/TP53 異常(変異と欠失)は診断時5%未満にみられるが,治療開始時には10%,治療抵抗性になった場合は50%近くまで増加してくる4)ため,17p 欠失/TP53 異常(変異と欠失)の検査は,治療法の変更の前には実施することが推奨される2)

17p 欠失/TP53 異常(変異と欠失)のある患者に対しても,BTK 阻害薬であるイブルチニブ単独療法が有効である5-7)

65 歳以上の高齢者ではBTK 阻害薬であるイブルチニブ単剤治療は,BR 療法と比較して,PFS を有意に延長させた。17p 欠失/TP53 変異を有する場合も有効であった8)

注)
イブルチニブは第2 版第1 刷発刊時には初回治療は適用外であったが,2018 年7 月より初回治療も保険適用となった。

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Woyach JA, et al. Ibrutinib Regimens versus Chemoimmunotherapy in Older Patients with Untreated CLL. N Engl J Med. 2018 ; 379(26): 2517-28.(1iiDiii)

CQ5
晩期再発CLL に対して初回治療と同様の治療は勧められるか

推奨グレードカテゴリー2A
24〜36 カ月以降の再発は,初回治療と同様な治療を考慮する。
推奨グレードカテゴリー2A
化学療法単独治療後の再発には化学免疫療法を考慮する。

解説

CLL の再発の場合は,2〜3 年以内の早期再発と2〜3 年以降の晩期再発に分けて考える必要がある。2〜3 年以降の晩期再発は,初回治療と同様の治療を実施することは,ドイツの5 つの前方視的試験のメタアナリシスの結果,デメリットがなく考慮すべき治療であることが示された1)。3 年以降の再発で,再びFCR 療法を受けた場合の5 年OS 割合は70%で,その他の治療を実施した場合は,50% OS は37 カ月と有意に短かった(p<0.001)2)。これらのことから,FCR 療法を初回治療実施後,3 年以降の再発CLL はFCR 療法を繰り返すことで,良好な結果を得ることができ,FCR 療法の再投与は妥当な治療と考えられる3)

さらに,初回治療と同様に抗体薬を併用することが,FCR 療法,BR 療法などの前方視的比較試験,後方視的研究で,有意に予後を改善することが報告されている4-7)

初回治療でイブルチニブが使用されていない場合は,イブルチニブが有効であり8),長期の観察でも有効性が確認された9)。さらに再発・難治例にはベネトクラクス+リツキシマブ療法の優れた治療成績が報告されている10)

注1)
イブルチニブは第2 版第1 刷発刊時には初回治療は適用外であったが,2018 年7 月より初回治療も保険適用となった。
注2)
第2 版第1 刷発刊時にはベネトクラクスは未承認であったが,2019 年9 月よりリツキシマブと併用で保険適用となった。

参考文献

1)
Cramer P, et al. Outcome of advanced chronic lymphocytic leukemia following different first-line and relapse therapies : a meta-analysis of five prospective trials by the German CLL Study Group(GCLLSG). Haematologica. 2015 ; 100(11): 1451-9.(1iiA)
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CQ6
治療抵抗性・早期再発CLL に対してBCL-2 阻害薬やBTK 阻害薬は勧められるか

推奨グレードカテゴリー1
高リスク患者,染色体17p 欠失やTP53 異常(変異と欠失)がある場合は通常の化学療法に対して難治性であるが,ベネトクラクスやイブルチニブが有効である。
推奨グレードカテゴリー2A
治療抵抗性である染色体17p 欠失もしくはTP53 異常(変異と欠失)のある再発にはアレムツズマブを考慮する。また,オファツムマブも考慮する。

解説

ハイリスク患者(化学免疫療法から1 年以内の再発17p13.1 欠失/TP53 異常(変異と欠失)のいずれか1 つがみられる)は,通常の化学免疫療法に対して,治療抵抗性である。BTK 阻害薬イブルチニブは,これらのハイリスク患者において,優れた効果を示している1-4)高齢者や併存疾患がある患者においても有効である4)。また,海外のガイドラインでは,再発17p13.1 欠失/TP53 異常(変異と欠失)がある患者で,BTK 阻害薬に抵抗性,もしくは使用できない場合には,BCL-2 阻害薬ベネトクラクス(リツキシマブ併用)が推奨されている5, 6)。ベネトクラクスは,腫瘍崩壊症候群をきたすことがあり,使用方法には注意を要する6)

フルダラビン治療後の再発や治療抵抗性で,17p 欠失/TP53 異常(変異と欠失)がある場合はアレムツズマブが有効とされるが,ウイルス感染などの再活性化など感染症の増加が報告されている7-10)。再発または難治性のCLL に対してリツキシマブとは異なるエピトープを認識する抗CD20 抗体薬オファツムマブが承認された。そのため,フルダラビンやアレムツズマブ抵抗性の場合だけでなく,リツキシマブ治療後でもオファツムマブが有効なことがある11)

参考文献

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CQ7
再発CLL に対して造血幹細胞移植は勧められるか

推奨グレードカテゴリー4
自家造血幹細胞移植併用大量化学療法はCLL に対する治療として推奨されない。
推奨グレードカテゴリー2B
同種造血幹細胞移植は,予後不良な染色体異常を持つ患者やハイリスクな患者で完全奏効/部分奏効(CR/PR)に達した場合は,長期予後を改善する治療法として考慮される。

解説

CLL に対する自家造血幹細胞移植併用大量化学療法(high-dose chemotherapy with autologous hematopoietic stem cell transplantation:HDC/AHSCT)(自家移植)の有効性は,ランダム化比較試験で初発1, 2)および再発1)患者で検証され,CR 割合,無イベント生存期間(EFS)や無増悪生存期間(PFS)は自家移植群が有意に優れていたが,全生存期間(OS)の改善はみられなかった。標準治療であるFCR とも比較され,CR 割合は自家移植が優れていたが,PFS,OS は変わらなかった3)。未治療あるいは再発のCLL 患者に対する地固め療法として自家移植を行っても,全生存期間を延長する効果は認められず,骨髄異形成症候群をはじめとする二次発がんの頻度が高まる危険があるため,CLL に対する治療として自家移植は推奨されない。

同種造血幹細胞移植(allo-HSCT,同種移植)は,BTK 阻害薬などの新規薬剤が導入されても治癒困難と考えられるCLL に対し治癒が可能な唯一の治療法と考えられる。高リスクCLL(17p 欠失/TP53 異常(変異と欠失)の有無にかかわらず,①プリンアナログ抵抗性,② FCR もしくはFCR 類似療法後2 年以内の再発したもの)が対象とされる4)。さらに,染色体17p 欠失/TP53 異常(変異と欠失)を持つ異常細胞が多くなれば,これらの細胞は化学免疫療法抵抗性で,予後不良であるため,患者がfit な状態であれば,第1 CRでの同種移植が推奨されている5, 6)。前方視的解析7, 8)の結果から,同種移植により移植片対白血病(GVL)効果が得られ,CLL 患者の長期生存が期待される。また。後方視的解析9)あるが,多変量解析では,染色体17p 欠失の有無およびプリンアナログ治療に対する抵抗性は予後不良因子として検出されず,同種移植を行うことでこれらの予後不良因子は克服されると考えられる。他の後方視研究から,非寛解期の患者および径5 cm を超えるリンパ節腫脹がある患者は,同種移植を行っても再発する危険性が高く長期予後は不良である10)

前処置に関しては,myeloablative conditioning(MAC)とreduced-intensity conditioning(RIC)があり,骨髄破壊的造血幹細胞移植では再発以外の原因での死亡率が高いため,大半の臨床試験では骨髄非破壊的造血幹細胞移植が実施されているが,両者の直接の比較試験は行われていないため,エビデンスレベルの高いものはない。後方視的研究であるが,ハイリスクCLL にもRIC による同種移植の有効性が示されている10-12)

17p 欠失/TP53 異常(変異と欠失)や他の予後不良の遺伝子異常を有するCLL に対してもイブルチニブなどのBCR 関連シグナル阻害薬が一定の効果を示すことから,これらの薬剤も選択肢として挙げられている5, 6)。ただ,これらの分子標的薬がCLL の治癒をもたらす可能性は低く,同種移植の役割はなくなることはないと考えられる。日本でも再発・難治CLL に対してイブルチニブやベネトクラクスが使用可能となっており,同種移植の有用性と危険性を考慮した実施が必要である。

参考文献

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Brown JR, et al. Long-term follow-up of reduced-intensity allogeneic stem cell transplantation for chronic lymphocytic leukemia : prognostic model to predict outcome. Leukemia. 2013 ; 27(2): 362-9.(3iiiA)

CQ8
組織学的形質転換をきたしたCLL(Richter 症候群)に対して造血幹細胞移植は勧められるか

推奨グレードカテゴリー2B
Richter 症候群に対する造血幹細胞移植は,救援治療により完全奏効/部分奏効(CR/PR)に達した場合は考慮される。また,適切なドナーがいた場合はRIC による同種移植を考慮する。

解説

CLL からアグレッシブリンパ腫に形質転換することで,多くはdiffuse large B-cell lymphoma(DLBCL)に転化することが多い。治療前は0.5%/年,治療後は1%/年のRS への形質転換のリスクがある1)。Richter 症候群への形質転換はTP53, CDKN2A(p16INK4A)またはCDKN1A(p21)の異常,p27 欠失,BCL2 高発現,CD38 とZAP-70 高発現,IGHV 陰性,IGHV4-39/IGHD6-13/IGHJ5,17p 欠失および11q 欠失,NOTCH1 変異,などが危険因子として挙げられている1-3)。アルキル化薬やプリンアナログ薬の使用によりRichter 症候群へのリスクが3 倍になるという報告もあるが,関連はないという報告もあり明らかではない。新規分子標的薬に関しては,イブルチニブにより治療された患者の8%にRichter 症候群が発生したとの報告もあるが,多くの前治療に加え,Richter 症候群のクローンが治療前よりあったのではないかとの指摘もあり,関連は明確ではない2)。Richter 症候群の腫瘍細胞は,もとのCLL 細胞との関連は,20%の症例で無関係であり,80%の症例では関係があるとされている。CLL のクローンと無関係のRichter 症候群症例は,de novo のDLBCL と予後は似ているが,CLL のクローンと関連のあるRichter 症候群については形質転換後のOS は約1 年である4)。上記よりRichter 症候群に対する治療に関しては,大切なことはRichter 症候群の腫瘍細胞はCLL 細胞のクローンと関連性である。関連のない場合は,de novo のDLBCL に準じて治療を行うと総説には記載されている2)

しかし,CLL クローンとの関連を検索することは本邦においては困難である。また,前方視的試験は少数例のものがあるだけで,エビデンスの高い臨床研究はない。Richter 症候群に対するR-CHOP 療法の有効性をみるための前方視的試験(CLL2G)がドイツで実施され15 例の小規模ではあるが,ORR 67%,CR は7%,50% OS は27 カ月と報告されている5)。その他,hyper-CVXD 療法(fractionated cyclophosphamide,vincristine,liposomal daunorubicin,dexamethasone)などさまざまな治療法が実施されているが,標準的な治療は未確立である3, 6, 7)。後方視研究であるがリツキシマブ併用はOS の延長がみられた8)

治療に反応し,寛解状態が得られたならば,地固め療法として造血幹細胞移植を考慮する。その場合,適切なドナーがいれば同種移植を,いなければ自家移植を考慮する9, 10)。Hodgkin リンパ腫に稀に形質転換することがあるが,この場合はHodgkin リンパ腫の治療に準ずる2, 7)

参考文献

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6 骨髄異形成症候群
(myelodysplastic syndromes:MDS)

総論

骨髄異形成症候群(myelodysplastic syndromes:MDS)は造血細胞の異常な増殖とアポトーシスによって特徴付けられる腫瘍性の疾患で,未熟な造血細胞に生じた異常が原因であると考えられている1, 2)。1982 年のFrench-American-British(FAB)分類3)によって疾患概念が明らかとなり,現在はWHO 分類(2001)4)とWHO 分類(2008)5),さらに2017 年に示されたその改訂版6)を用いて取り扱われている。しかし,FAB 分類による取り扱いも併用されているのが現状である。単一あるいは複数系統の血球減少,形態学的異形成,骨髄における無効造血,急性白血病転化のリスクを特徴としているが,単一疾患ではなく複数の疾患からなる症候群の集まり(Syndromes)と捉えられている。したがって,現在の病型分類のみでは臨床的な対応を決定するには十分ではないと考えられる。MDS の半数以上に染色体異常があり,未分化な造血細胞に生じた遺伝子異常が発症に関与すると考えられている。さらに,染色体検査レベルでは確認できない新たな遺伝子異常が次々に同定され主要な遺伝子異常はほぼ同定されていると考えられているが7),その意義については今後の検討が必要である。

一般に診断はWHO 分類(2017)に基づき,血球減少,末梢血と骨髄の芽球割合,造血細胞の異形成,染色体異常によってなされ,一部ではFAB 分類による診断も参考とされている。MDS は種々の血液疾患と境界を接しており,経過観察や他疾患の除外とともに,現在も診断の重要な部分は形態学的な判断に負うところが大きい1, 2)。確定診断が得られた後は,診断に用いられた血液所見,骨髄所見,染色体異常などによって予後予測が行われ,治療方針が決定されていく。予後は,血球減少に関連した事象(感染症,出血など)と白血病化によって大きく決定されるが,本疾患は高齢者に多いことより,合併症など患者背景も予後に大きな影響を持っている。

現在でも根治療法は同種造血幹細胞移植のみであるが,患者集団の年齢などから同種移植の恩恵にあずかる症例は一部に限られている。一方,最近,MDS に対する新薬が開発され治療にも新たな展開がみられている。

参考文献

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アルゴリズム

MDS は多様な病態を有する疾患の集合体であり,治療方針を決定する上では診断と病型分類のみでは不十分である。そのため,主に臨床的な因子を用いて予後予測がなされる(CQ1)。複数の予後予測スコアリングシステムが提唱されており,それぞれに特徴がみられるが,臨床的な対応は低リスクと高リスクに分けて考慮されることが多い。頻用されるのはInternational Prognostic Scoring System(IPSS)におけるLow, Intermediate(Int)-1 を低リスク,Int-2, High を高リスクとするもの,およびその改訂版であるRevised IPSS(IPSS-R)でVery low, Low を低リスク,High とVery high を高リスク,Intermediate は他の因子を加味して考慮するというものである(CQ1)。

低リスク症例においては血球減少に対する対応,その改善を治療の第一目標とし,高リスク例では白血病転化リスクが高いことより,より積極的な治療方針がとられる。

血球減少に対しての基本的な支持療法は輸血であるが,赤血球輸血に伴う輸血後鉄過剰症はMDS の予後に関連している可能性がある。そのため,MDS の輸血後鉄過剰症に対しては適切な鉄キレート療法が治療の選択肢として考えられる(CQ2)。低リスク例の血球減少に対しては免疫抑制療法(CQ3,国内保険適用外),サイトカイン療法(CQ4),蛋白同化ステロイド療法(CQ5),また,5 番染色体長腕の欠損を伴う5q-症候群でみられる血球減少へのレナリドミド(LEN)(CQ6),一部の低リスク例に対するアザシチジン(AZA)投与(CQ7)などが行われる。それぞれの治療によって一定の血球回復がみられるが,この群についてはこうした治療によって生存期間の延長がみられるのか,明らかなエビデンスはない。

高リスク症例は予後が悪いため,積極的な対応がなされる。年齢や患者背景,ドナーなどの条件が許せば同種造血幹細胞移植(CQ8)の積極的な適応が考慮される。最近では高齢者例などを中心に前処置を減弱した同種移植も実施される(CQ9)。これまでのところ治癒が得られる治療法は同種造血幹細胞移植のみであるが,移植がなされない例に対してはAZA が選択される(CQ10)。AZA は前方視的試験によって高リスク症例の予後を改善することが示されている。5 番染色体長腕の欠損を伴った例ではLEN も投与可能である(CQ11)。一部の高リスク例に対しては白血病治療に準じた抗腫瘍薬投与も考慮される(CQ12)。

CQ1
MDS の予後予測法,リスク分類として勧められるのは何か

推奨グレードカテゴリー2A
国際予後予測スコアリングシステム(International Prognostic Scoring System:IPSS)やWHO 分類に基づく予後予測スコアリングシステム(WHO Classification-based Prognostic Scoring System:WPSS),IPSS の改訂版である改訂国際予後予測スコアリングシステム(Revised IPSS:IPSS-R)のように複数の因子を組み合わせて予後を予測するスコアリングシステムが勧められる。特に,IPSS は頻用されており,近年IPSS-R の利用が広がっている。

解説

MDS は多様な疾患単位の集合体であり,単なる病型分類では十分な予後予測はできないと考えられている。造血細胞の形態的な特徴,特に芽球割合,血球減少の程度や減少している系統数,染色体所見は予後と関連する。そこで,それらをスコア化し,その合計点数でMDS の予後を予測する方法が開発された。IPSS と呼ばれるもので,MDS を骨髄芽球割合,血球減少の系統数,染色体グループという3 因子の点数によって4 群に層別化するものである1)。FAB 分類に基づいて作成されているため,現在のWHO 分類(2017)では急性骨髄性白血病に含まれる芽球20〜30%の例も取り扱っている。IPSS はこれまで多数の臨床研究で用いられている(表1, 2)。

表1 IPSS 予後因子スコア
表2 IPSS による予後層別化

その改訂版であるIPSS-R は2012 年に発表されたが,7,000 例以上の症例から作成された予後予測スコアリングで,IPSS と同じ因子を用いるが,染色体核型の分類,芽球割合や血球減少の取扱いが変更されている(表3〜5)。これらによってMDS を5 群に分類するもので,IPSS と比較して予後予測の精度が上がっている2)

表3 IPSS-R 予後因子スコア

表4 IPSS-R による予後層別化
表5 IPSS-R における染色体リスク群

予後予測因子にWHO 分類(2001)と輸血依存性を採用したのがWPSS で,初診時ばかりでなく病期進展時にも適応できるという特徴がある3)。しかし,現在はWHO 分類(2017)が既に出ており,WPSS は十分な利用がなされていない。

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CQ2
輸血による鉄過剰症への鉄キレート剤が適応とされる状態は何か

推奨グレードカテゴリー2B
一年以上など一定の予後が期待されかつ,定期的な赤血球輸血を必要とするMDS で,輸血による鉄過剰状態に至った場合には鉄キレート療法を実施する。

解説

一定量の赤血球輸血を受けたMDS 患者は鉄過剰状態に陥っており,MDS 患者で臓器不全を生じた例や死亡例では鉄過剰状態に陥っている場合が高い1)。組織の過剰鉄は活性酸素種の産生を亢進させることで組織障害を引き起こしていると考えられている。鉄キレート剤を投与することで体内の鉄過剰が改善され2, 3),生存期間の延長に寄与する可能性が指摘されている4)

鉄過剰症の診断規準や鉄キレート療法の開始規準と適応,実際の治療に関しては,「輸血後鉄過剰症の診療ガイド」として本邦の特発性造血障害に関する調査研究班より診療ガイドが出されている5)。それによると,赤血球輸血依存となった患者(月2 単位以上の輸血を6 カ月以上継続)のうち1 年以上の余命が期待できる例において,総赤血球輸血量が40 単位を超え血清フェリチン値が2 カ月以上にわたって1,000 ng/mL を超える場合に鉄キレート療法の開始が推奨されている。治療効果は血清フェリチン値でなされ,500〜1,000 ng/mL の維持が目標とされている。

MDS,特に低リスクMDS において輸血後鉄過剰症に対する鉄キレート療法が生存延長に寄与するかどうかについては,後方視的研究としてそれを支持する報告がある一方,前方視的なランダム化試験による検証はなされていない6)

参考文献

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CQ3
低リスクMDS の治療において免疫抑制療法は勧められるか

推奨グレードカテゴリー2A
MDS の一部の症例に対しては造血の回復に免疫抑制療法が勧められる。特にHLA-DR15,赤血球輸血歴の短い例,若年例での効果が期待される(国内保険適用外)。

解説

MDS,特に芽球増加のみられない低リスク例の一部において,抗胸腺細胞グロブリン(anti-thymocyte globurin:ATG)によって造血回復がみられる1)。また,シクロスポリンを用いた免疫抑制療法も一定の造血回復効果を示す2)。両者の組み合わせによるランダム化比較試験でも有意な造血回復が得られたが,全生存割合(OS),無輸血生存割合は改善されなかった3)

造血回復は,多変量解析によるとHLA-DR15,若年例,赤血球輸血歴の短い例でより効果が得られていた4)。国内の解析ではHLA-DRB1*15:01 が造血回復と関連していた2)。その他,PNH(paroxysmal nocturnal hemoglobinuria)型赤血球の存在が治療反応性と関連する5)

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Saunthararajah Y, et al. HLA-DR15(DR2)is overrepresented in myelodysplastic syndrome and aplastic anemia and predicts a response to immunosuppression in myelodysplastic syndrome. Blood. 2002 ; 100(5): 1570-4.(3iiiDiv)
5)
Wang H, et al. Clinical significance of a minor population of paroxysmal nocturnal hemoglobinuria-type cells in bone marrow failure syndrome. Blood. 2002 ; 100(12): 3897-902.(3iiiDiv)

CQ4
低リスクMDS の貧血に対してサイトカイン療法は勧められるか

推奨グレードカテゴリー2A
血清エリスロポエチン濃度低値(200 または500 mU/mL 未満),環状鉄芽球15%未満,赤血球輸血依存のないまたは月2 単位程度の輸血を必要とする貧血を有するMDS に対してはエリスロポエチン(40,000〜60,000 U 週1〜3 回投与)あるいはダルベポエチン(150〜500μg 週1〜3 回投与)の投与が貧血を改善させる。ダルベポエチンはMDS に伴う貧血に対して保険適用となっている。顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)の併用はESA 製剤への反応性を上昇させるが,ダルベポエチンの効果増強を目的としたG-CSF の使用は本邦では保険適用となっていない。

解説

MDS の貧血に対するエリスロポエチン(EPO)投与は,一部の例で貧血を改善する。17 の試験における205 例のMDS に対するEPO 治療の統合解析では33 例(16%)に血球減少の改善が得られていた1)。反応性に関する因子の解析で非鉄芽球性貧血例,治療前血清EPO 200 mU/mL 未満,輸血必要のない貧血例において有効性が有意に高かった。

G-CSF とEPO との併用例ではその効果が39%と高く2),併用療法の第Ⅱ試験の長期観察例を,多変量解析を用いて検定したところ治療例では非治療例と比較して有意に良好な生存を示していた3)。しかし,この治療法の生存に対する効果は前方視的第Ⅲ相比較試験での検証がなされていない。

持続性のEPO 製剤であるダルベポエチン300μg 週一回投与または500μg の3 週間おき投与にもMDS の赤血球造血促進効果がみられる4, 5)。治療前血清EPO 500 mU/mL 未満の例を対象としたダルベポエチン300μg 週1 回投与の第Ⅱ相試験では62 例中44 例(71%)で反応が得られた。この試験でもEPO 低値と赤血球輸血非依存が治療反応性の有意な予測因子であった。500μg の3 週間おき投与試験では初回投与例の49%に赤血球造血促進効果がみられた。また,ダルベポエチン150μg 週一回投与試験では全体の有効率は40.5%であり,EPO 低値,赤血球輸血月2 単位以下,骨髄芽球割合低率,骨髄低形成が反応性予測因子であった6)。日・韓で行われた第Ⅱ相試験は,MDS を対象とするESA 製剤の世界初の用量反応試験であった7)。ダルベポエチンの60μg,120μg および240μg 週一回投与群がランダムに割り付けられたが,輸血量が50%以上減少する効果は,それぞれ64.7%(60μg 群),44.4%(120μg 群),66.7%(240μg 群)(各群間に統計学的有意差なし),全体として58.0%であった。一方,赤血球輸血非依存となり,Hb 値が1.0 g/dL 以上増加する効果は,17.6%(60μg 群),16.7%(120μg 群),33.3%(240μg 群)であり,240μg 群が有意に高かった。本邦では本試験の結果をもとに,ダルベポエチンはMDS に伴う貧血に対して追加適応を取得し,240μg が推奨用量となった。また,ドイツのグループからはこれまでに示された知見をもとにIPSS low/int-1,ヘモグロビン10 g/dL かつ治療前EPO 500 mU/mL 以下の146 例を対象とし,ダルベポエチン500μg 3 週間おき投与による5〜24 週までの赤血球輸血依存離脱を主要評価項目としたプラセボ対照二重盲検化第Ⅲ相比較試験の結果が報告され,この間に輸血が行われた患者がダルベポエチン投与群で36.1%に対しプラセボ群にて59.2%と有意な改善が報告されている8)。ダルベポエチンは,高リスクMDS には有効性および安全性が評価されていないため,投与しない。血清EPO 値が500 mU/mL 以上であっても投与することは可能であるが,EPO 値が低く,輸血量が少ない例の反応性が良いことを考慮する。本邦の43 例を対象とした解析では,血清EPO 値はHb 値と強い負の相関を示し,低リスクMDS においてEPO 500 mU/mL に相当するHb 濃度は8.29 g/dL であり,このHb 濃度では多くの症例が輸血非依存であった9)。ダルベポエチンの効果増強を目的としたG-CSF の使用は本邦では保険適用外である。

両薬剤ともに有害事象は軽微である。AML への移行を有意に促進するとする報告はない。

参考文献

1)
Hellström-Lindberg E. Efficacy of erythropoietin in the myelodysplastic syndromes : a meta-analysis of 205 patients from 17 studies. Br J Haematol. 1995 ; 89(1): 67-71.(3iiiDiv)
2)
Hellström-Lindberg E, et al. A validated decision model for treating the anaemia of myelodysplastic syndromes with erythropoietin+granulocyte colony-stimulating factor : significant effects on quality of life. Br J Haematol. 2003 ; 120(6): 1037-46.(3iiiC)
3)
Jädersten M, et al. Erythropoietin and granulocyte-colony stimulating factor treatment associated with improved survival in myelodysplastic syndrome. J Clin Oncol. 2008 ; 26(21): 3607-13.(3iiiA)
4)
Mannone L, et al. High-dose darbepoetin alpha in the treatment of anaemia of lower risk myelodysplastic syndrome results of a phase Ⅱ Ⅱ study. Br J Haematol. 2006 ; 133(5): 513-9.(3iiiDiv)
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Gabrilove J, et al. Phase 2, single-arm trial to evaluate the eff ectiveness of darbepoetin alfa for correcting anaemia in patients with myelodysplastic syndromes. Br J Haematol. 2008 ; 142(3): 379-93.(3iiiDiv)
6)
Musto P, et al. Darbepoetin alpha for the treatment of anaemia in low-intermediate risk myelodysplastic syndromes. Br J Haematol. 2005 ; 128(2): 204-9.(3iiiDiv)
7)
Jang JH, et al. A randomized controlled trial comparing darbepoetin alfa doses in red blood cell transfusion-dependent patients with low- or intermediate-1 risk myelodysplastic syndromes. Int J Hematol. 2015 ; 102(4): 401-12.(1iiDiv)
8)
Platzbecker U, et al. A phase 3 randomized placebo-controlled trial of darbepoetin alfa in patients with anemia and lower-risk myelodysplastic syndromes. Leukemia. 2017 ; 31(9): 1944-50.(1iDiv)
9)
Suzuki T, et al. Distribution of serum erythropoietin levels in Japanese patients with myelodysplastic syndromes. Int J Hematol. 2015 ; 101(1): 32-6.(3iiiDiv)

CQ5
低リスクMDS の貧血に対して蛋白同化ステロイドは勧められるか

推奨グレードカテゴリー2B
低リスクMDS の貧血に対する蛋白同化ステロイドの有効性は一部の症例に限られており,ルーチンでの使用は推奨されない。

解説

1989 年にメキシコのグループが報告した,50 例のMDS を対象とした二重盲検比較試験において,ダナゾール600 mg/日を投与した23 例のうち6 例に完全奏効(Hb>12 g/dL,顆粒球数>1,500/μL,血小板数>150,000/μL)が得られたと報告されている1)。その後,フランスのグループからダナゾール600 mg/日を投与したMDS 76 例を対象とした後方視的解析の結果が報告されているが,担当医によって有効と判定された9 例の患者を含めて有意な血球回復が認められなかったと報告されている2)。米国Mayo Clinic からの46 例の芽球増加のないMDS を対象としたダナゾール800 mg/日と13-cis-レチノイン酸の比較試験では,有効例は34 例中2 例(6%)にすぎなかったと報告されている3)。国内からの報告では,単施設における少数例の後方視的検討ではあるものの,1975 年からの14 年間に蛋白同化ステロイドの投与を受けた不応性貧血(RA)27 例のうち11例(40.7%)に反応がみられたとの報告がある4)

参考文献

1)
Avilès A, et al. Randomized study of danazol vs. placebo in myelodysplastic syndromes. Arch Invest Med(Mex). 1989 ; 20(2): 183-8.(1iDiv)
2)
Chabannon C, et al. A review of 76 patients with myelodysplastic syndromes treated with danazol. Cancer. 1994 ; 73(12): 3073-80.(3iiiDiv)
3)
Letendre L, et al. Myelodysplastic syndrome treatment with danazol and cis-retinoic acid. Am J Hematol. 1995 ; 48(4): 233-6.(3iiiDiv)
4)
Kobaba R, et al. Androgen in the treatment of refractory anemia. Int J Hematol. 1991 ; 54(2): 103-7.(3iiiDiv)

CQ6
MDS の治療としてレナリドミドは勧められるか

推奨グレードカテゴリー1
5番染色体長腕の欠失[del(5q)]を伴う低リスクMDS で赤血球輸血依存例に対してはレナリドミドが赤血球造血促進効果を示し,レナリドミドによる治療が推奨される。10 mg/日の21 日間投与を28 日サイクルで実施する。
推奨グレードカテゴリー2B
del(5q)を伴わない赤血球輸血依存低リスク MDSに対しては,赤血球輸血非依存が達成される例がみられるが,現時点では第一選択薬としては推奨されない(国内保険適用外)。

解説

レナリドミド(LEN)はサリドマイド(THAL)の誘導体で,免疫調節をはじめとして生体に対して多彩な効果を発揮する。5 番染色体長腕の欠失を伴うMDS で赤血球輸血依存例を対象とした第Ⅱ試験1),第Ⅲ相試験2)において赤血球輸血量の減少効果が明らかに認められている。また,国内でも少数例ながら第Ⅱ相試験が実施された3)

米国を中心とした第Ⅱ相試験においては148 例が登録され,赤血球系改善が67%にみられ,さらに45 例で細胞遺伝学的寛解(CyR)が得られた1)

LEN 10 mg/日,5 mg/日,プラセボによる二重盲検試験では26 週を超える輸血非依存達成はそれぞれ56.1%,42.6%,5.9%であり,有意にLEN 治療が優っていた(p<0.001)。細胞遺伝学的反応性もLEN 10 mg/日,5 mg/日群でそれぞれ50%,25%に観察された。白血病への移行は3 群間で差はなかった1)。有害事象も重篤なものはなかった。本試験では16 週での試験治療群クロスオーバーが一部で認められていたが,全生存割合(OS)では3 群間に有意差を認めなかった。

国内の試験では低リスク11 例が登録され,赤血球系改善は全例に,CyR は3 例にみられた3)

del(5q)を伴わない輸血依存低リスク MDSに対しては米国で第Ⅱ相試験が実施され,LEN 10 mg/日,21 日投与(28 日サイクル)の効果が検証された。赤血球輸血非依存達成率は26%で,これらの症例におけるヘモグロビン上昇中央値は3.2 g/dL,その持続期間の中央値は41 週であった4)。この結果をもとに米国において第Ⅲ相試験が実施され,赤血球輸血非依存達成率は26.9%,その持続期間の中央値が 8.2カ月と同様の結果が報告されている5)。この結果から LEN が del(5q)を伴わないMDS に対して一定の有効性を示すことが期待されるが,国内では試験が実施されていない(国内保険適用外)。

参考文献

1)
List A, et al. Lenalidomide in the myelodysplastic syndrome with chromosome 5q deletion. N Engl J Med. 2006 ; 355(14): 1456-65.(3iiiDiv)
2)
Fenaux P, et al. A randomized phase 3 study of lenalidomide versus placebo in RBC transfusion-dependent patients with Low-/Intermediate-1-risk myelodysplastic syndromes with del5q. Blood. 2011 ; 118(14): 3765-76.(1iDiv)
3)
Harada H, et al. Lenalidomide is active in Japanese patients with symptomatic anemia in low- or intermediate-1 risk myelodysplastic syndromes with a deletion 5q abnormality. Int J Hematol. 2009 ; 90(3): 353-60.(3iiiDiv)
4)
Raza A, et al. Phase 2 sutdy of lenalidomide in transfusion-dependent, low-risk, and intermediate-1-risk myelodysplastic syndromes with karyotypes other than deletion 5q. Blood. 2008 ; 111(1): 86-93.(3iiiDiv)
5)
Santini V, et al. Randomized phase III study of lenalidomide versus placebo in RBC transfusion-dependent patients with lower-risk non-del(5q)myelodysplastic syndromes and ineligible for or refractory to erythropoiesis-stimulating agents. J Clin Oncol. 2016 ; 34(25): 2988-96.(1iDiv)

CQ7
低リスクMDS の治療としてアザシチジンは勧められるか

推奨グレードカテゴリー2B
サイトカイン療法や免疫抑制療法の対象とならない低リスクMDS 症例の一部においてアザシチジンによる造血の回復が認められるが,生存期間の延長をもたらすエビデンスはなく,生存期間延長を目的とした第一選択薬としてのアザシチジンの使用は推奨されない。

解説

アザシチジンの低リスクMDS に対する有効性を示すデータは限られており,現時点で低リスクMDS の生存期間延長を目的とした第一選択薬としての使用は推奨されない。

アザシチジン(AZA)は高リスクMDS に対する第Ⅲ相臨床試験で生存延長効果が示されている1)。その試験では60%の例で造血回復が観察された。74 例の低リスクMDS に対する後方視的解析ではAZA 治療によって45.9%の例で造血回復が観察された2)。その中で4 コース以上の治療を受けた64 例では51.6%の反応が得られ,治療反応を得られた例は非反応例と比較して生存期間が延長していた。

前方視的に低リスクMDS に対してアザシチジンを投与した試験としては,米国において主に低リスクMDS(IPSS は記載されていない)を対象に,アザシチジンの投与日数が連続5 日までとなる3 種類の投与法を比較した151 例を対象とした試験3),イタリアにおいてアザシチジン5 日連続投与の有効性をIPSS Low もしくはInt-1 のMDS 32 例を対象に検討した第Ⅱ相試験4),北欧のグループからの輸血依存のIPSS low/Int-1 リスクのMDS 30 例を対象にEPO 併用にてアザシチジン5 日連続投与法の有効性を検討した第Ⅱ相試験5)が報告されている。前二者ではアザシチジンは約半数(44〜56%)の症例において血液学的改善を認め,副作用は制御可能であったとしているが,生存期間に関する解析はない3, 4)。3 つ目の試験において主要評価項目は輸血依存からの離脱となっており,30 例中6 例(全例IPSS INT-1)の有効例においては生存期間の延長傾向が示されているが,長期間での効果が持続した例は2 例にとどまり,有害事象により投与を中止した例が7例(うち死亡2 例)と毒性が強いと報告されている5)

米国National Comprehensive Cancer Network(NCCN)のガイドラインにおいてはレナリドミド・ESA・免疫抑制療法の対象とならない例でアザシチジンが適応となりうることが示されている6)。European LeukemiaNet のガイドラインにおいてはアザシチジンの適応は示されていない7)。わが国においては低リスクMDS に対しても保険適用となってはいるが,現時点で低リスクMDSの生存期間延長を目的とした第一選択薬としての使用は推奨されない。

参考文献

1)
Fenaux P, et al. Efficacy of azacitidine compared with that of conventional care regimens in the treatment of higher-risk myelodysplastic syndromes : a randomised, open-label, phase Ⅲ study. Lancet Oncol. 2009 ; 10(3): 223-32.(1iiA)
2)
Musto P, et al. Azacitidine for the treatment of lower risk myelodysplastic syndromes : a retrospective study of 74 patients enrolled in an Italian named patient program. Cancer. 2010 ; 116(6): 1485-94.(3iiiDiv)
3)
Lyons RM, et al. Hematologic response to three alternative dosing schedules of azacitidine in patients with myelodysplastic syndromes. J Clin Oncol. 2009 ; 27(11): 1850-6.(3iiiDiv)
4)
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5)
Tobiasson M, et al. Limited clinical efficacy of azacitidine in transfusion-dependent, growth factor-resistant, low- and Int-1-risk MDS : Results from the nordic NMDSG08A phase II trial. Blood Cancer J. 2014 : 4 : e189.(3iiiDiv)
6)
NCCN Clinical Practice Guidelines in Oncology. Myelodysplastic Syndromes. Version 1. 2016.(ガイドライン)
7)
Malcovati L, et al. Diagnosis and treatment of primary myelodysplastic syndromes in adults : recommendations from the European LeukemiaNet. Blood. 2013 ; 122(17): 2943-64.(ガイドライン)

CQ8
MDS に対する同種造血幹細胞移植の適応と適切な実施時期はいつか

推奨グレードカテゴリー2A
高リスクMDS 患者では,できる限り速やかに同種造血幹細胞移植を行う。HLA 1 座不適合以内の血縁者間移植が最も望ましいが,血縁ドナーが得られない場合は,HLA 一致非血縁者間移植も考慮する。
推奨グレードカテゴリー2A
低リスクMDS 患者では同種造血幹細胞移植は推奨されない。しかし,血球減少が高度で輸血依存性の強い症例,重症感染症や出血のハイリスク症例で他の治療が無効の場合には造血幹細胞移植の候補となる。
推奨グレードカテゴリー2A
臍帯血移植は推奨されないが,骨髄・末梢血ドナーが得られない高リスクMDS 患者では考慮される。

解説

MDS において治癒が期待できる治療は,現在のところ同種造血幹細胞移植のみである。

高リスクMDS では血球減少や白血病への進展リスクが高く,そのままでは予後不良である。このため同種造血幹細胞移植が可能であれば原則として速やかにこれを実施する(表11)。55 歳未満の患者でHLA 血清学的1 座不適合以内の血縁ドナーが存在し,移植に耐えられる全身状態の症例が最も良い適応とされ,日本造血細胞移植学会データ(平成26 年度)によれば,16 歳以上のRAEB/RAEB-t 症例における血縁者間骨髄移植の5 年全生存割合(overall survival:OS)は50.0%である2)。血縁者ドナーが存在しない場合は非血縁者間移植が行われるが,同データによると16 歳以上のRAEB/RAEB-t 症例における非血縁者間骨髄移植の5 年OS は42.5%と報告されており,一定の長期生存が認められている2)

表1 日本造血細胞移植学会ガイドラインによるMDS に対する移植適応(抜粋)1)

低リスクMDS ではそのままでも比較的長期の生存が期待できるため,造血幹細胞移植の適応は慎重に考慮すべきであり,60 歳以下のHLA 一致血縁者間移植の場合,Markov model を用いた移植時期の解析では,国際予後予測スコアリングシステム(IPSS)Low〜Intermediate-1 の症例は病期が進行してからの移植の方が望ましいことが示されている3)。60 歳〜70 歳の患者に対する低強度前処置(reduced intensity conditioning:RIC)を用いたHLA 一致同種移植の解析でも同様の結果が報告されている4)。しかし,輸血高度依存,感染症や出血のハイリスク症例で,他の治療が無効の患者では,合併症による死亡や生活の質(quality of life:QOL)の著しい低下が予想されるため,十分な同意を得た上で移植を考慮することは可能である。

臍帯血移植は施行例数が少なく評価が不十分であり,現段階では標準治療としては推奨されない。血縁・非血縁者ドナーが見つからないか,時間的余裕がない場合に,患者年齢,HLA 適合度,臍帯血CD34 陽性細胞数などを考慮して施行を検討する。

参考文献

1)
骨髄異形成症候群(成人)第2 版,造血細胞移植ガイドライン第3 巻(日本造血細胞移植学会ガイドライン委員会編).
2)
日本造血細胞移植データセンター(JSHCT),平成28 年度全国調査報告書:
3)
Cutler CS, et al. A decision analysis of allogeneic bone marrow transplantation for the myelodysplastic syndromes : delayed transplantation for low-risk myelodysplasia is associated with improved outcome. Blood. 2004 ; 104(2): 579-85.(3iiiA)
4)
Koreth J, et al. Role of reduced-intensity conditioning allogeneic hematopoietic stem-cell transplantation in older patients with de novo myelodysplastic syndromes : an international collaborative decision analysis. J Clin Oncol. 2013 ; 31(21): 2662-70.(3iiiA)

CQ9
MDS に対して減弱した前処置による同種移植は勧められるか

推奨グレードカテゴリー2A
高年齢や合併症を持つために強力前処置がリスクと考えられる患者に対しては,減弱した前処置による同種移植を選択肢として考慮する。

解説

造血器腫瘍に対する同種造血幹細胞移植は,最大の治療効果を得るために十分な前処置(myeloablative conditioning:MAC)で行うことが基本である。しかし,高齢患者や合併症を持つ患者の多いMDS では強力な前処置による死亡や臓器障害が問題となるため,減弱した前処置(reduced intensity conditioning:RIC)が考慮される。

現時点でMDS におけるMAC とRIC の治療成績を前方視的に直接比較した臨床試験はない。しかし,European Blood and Marrow Transplantation Group(EBMT)による後方視的解析によると,836 例のMDS 症例の解析で(RIC 215 例,MAC 621 例),3 年再発率はRIC 群で有意に高かったが(ハザード比1.64),3 年非再発死亡率(non-relapse mortality:NRM)はRIC 群で有意に低く(ハザード比0.61),最終的に3 年全生存割合(overall survival:OS)は同等であったと報告されている(RIC vs MAC; 33% vs 39%)1)。同じくEBMT から報告された,50 歳以上のMDS 患者を対象とした後方視的解析でもRIC ではNRM は低いものの(4 年NRM: RIC vs MAC; 32%vs 44%),再発が多く(4 年再発率:RIC vs MAC; 41% vs 33%),4 年OS には差が認められていない(RIC vs MAC; 32% vs 30%)2)。50〜69 歳のMDS を対象としたわが国のTransplant Registry Unified Management Program(TRUMP)データの解析でも同様であり,RIC ではNRM が低いものの,再発率が高く,3 年OS はRIC 44.1%,MAC 42.7%と差を認めていない3)

これらの結果から,50 歳以上の高齢者など強力前処置によるリスクが予想される患者においては,RIC レジメンによる前処置は妥当な選択肢と考えられる。なお,Center for International Blood and Marrow Transplant Research(CIBMTR)のデータ解析では,RIC レジメンで同種移植を施行した40 歳以上のAML あるいはMDS 患者において年齢が治療成績に与える影響は小さく,65 歳以上でもそれ以下の患者層と同等の治療成績が得られると報告されている4)

参考文献

1)
Martino R, et al. Retrospective comparison of reduced-intensity conditioning and conventional high-dose conditioning for allogeneic hematopoietic stem cell transplantation using HLA-identical sibling donors in myelodysplastic syndromes. Blood. 2006 ; 108(3): 836-46.(3iiA)
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Lim Z, et al. Allogeneic hematopoietic stem-cell transplantation for patients 50 years or older with myelodysplastic syndromes or secondary acute myeloid leukemia. J Clin Oncol. 2010 ; 28(3): 405-11.(3iiA)
3)
Aoki K, et al. Allogeneic haematopoietic cell transplantation with reduced-intensity conditioning for elderly patients with advanced myelodysplastic syndromes : a nationwide study. Br J Haematol. 2015 ; 168(3): 463-6.(3iiA)
4)
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CQ10
高リスクMDS に対してアザシチジンは勧められるか

推奨グレードカテゴリー1
アザシチジンは,同種造血幹細胞移植が行われない高リスク症例では第一選択薬剤である。
推奨グレードカテゴリー2A
アザシチジンの移植前治療としての意義は確立していないが,ドナーの準備を待つ間のつなぎ治療(bridge)として施行を考慮してもよい。

解説

アザシチジン(azacitidine:AZA)はDNA に取り込まれてDNA のメチル化を抑制することで遺伝子発現を回復させ,またRNA に取り込まれることで蛋白合成を阻害して殺細胞効果を示す。

米国におけるAZA と支持療法のランダム化割り付け比較試験(CALGB9221 試験)ではMDS の全ての病型において白血病移行が遅延し(50%移行期間;AZA 21 カ月vs 支持療法13 カ月),生存期間が延長し(50%生存期間;AZA 19.9 カ月vs 支持療法10.5 カ月),生活の質(quality of life:QOL)が改善したことが示された1)。また,欧米における高リスクMDS を対象とした通常治療(支持療法,低用量化学療法,強力化学療法)との第Ⅲ相比較試験(AZA001 試験)では生存期間の延長(50%生存期間;AZA 24.5 カ月vs 通常治療15.0 カ月)と白血病化までの期間延長(50%移行期間;AZA 17.8 カ月vs 通常治療11.5 カ月)が示されている2)

高リスクMDS においては,同種造血幹細胞移植以外にMDS の予後を有意に改善できる治療法,薬剤は報告されていなかったため,移植を行わない症例ではAZA が第一選択薬と位置づけられる。

本剤の有効性は4 コース投与までに現れることが多いが,4 コース以降に効果が現れる症例も約25%みられるため,明らかな疾患増悪や有害事象による中止を除いて,有効性の判断は少なくとも4〜6 コース施行した後に行う必要がある3, 4)

同種移植前治療としてAZA と強力化学療法(寛解導入療法)を比較したものは少数に留まり5, 6),AZA を移植前治療として用いる意義は明らかになっていない。しかし,これらの報告によれば,AZA 使用例の移植成績は強力化学療法と同等であり,移植前治療(ドナー準備を待つ間のつなぎ治療)としてAZA 施行は可能と考えられる。

参考文献

1)
Silverman LR, et al. Randomized controlled trial of azacitidine in patients with the myelodysplastic syndrome : a study of the cancer and leukemia group B. J Clin Oncol. 2002 ; 20(10): 2429-40.(1iiA)
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3)
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CQ11
高リスクMDS に対してレナリドミドは勧められるか

推奨グレードカテゴリー2B
del(5q)を有する高リスク MDSにおいては,アザシチジン不応あるいは不耐の場合,レナリドミドの使用を考慮しても良い。

解説

高リスクMDS を対象としたレナリドミド(lenalidomide:LEN)の臨床研究は少ない。del(5q)を有する高リスクMDS 症例47 例を対象としたLEN 第Ⅱ相臨床試験では,13 例(27%)に血液学的改善が認められ,7 例(15%)は完全奏効であった。そして,5q 単独欠損症例では付加染色体異常を持つ症例と比較して有意に多くの完全奏効例が認められた[単独欠損例9 例中6 例(67%),付加染色体異常例 38例中 1例(2.6%)]1)。また,del(5q)を有する高リスク MDS/AML を対象とした,LEN 単独増量投与(最大30 mg)研究では,MDS 症例の36%(11 例中4 例)に奏効が認められている2)

このように del(5q)を有する高リスク MDSにおいて LENは一定の血液学的効果を示すが,生存期間への影響等は評価されておらず,高リスクMDS 治療におけるLEN の優位性,有用性は確立していない。したがって現時点では,高リスクMDS に対するLEN の使用は推奨されず,薬物療法を行う場合はアザシチジン(azacitidine:AZA)をまず選択すべきと考えられる。

なお,現時点ではAZA 不応例に対するLEN の効果について十分に検討された報告はない。しかし,del(5q)を有する高リスク症例への一定の効果を考えると,アザシチジン不応あるいは不耐容の高リスクdel(5q)症例では,LEN の使用も考慮可能と考えられる。

参考文献

1)
Adès L, et al. Efficacy and safety of lenalidomide in intermediate-2 or high-risk myelodysplastic syndromes with 5q deletion : results of a phase 2 study. Blood. 2009 ; 113(17): 3947-52.(3iiiDiv)
2)
Mollgard L, et al. Clinical effect of increasing doses of lenalidomide in high-risk myelodysplastic syndrome and acute myeloid leukemia with chromosome 5 abnormalities. Haematologica. 2011 ; 96(7): 963-71.(3iiiDiv)

CQ12
高リスクMDS において化学療法は勧められるか

推奨グレードカテゴリー2A
生存期間,白血病化までの期間を延長する化学療法の報告はなく,第一選択としては推奨されない(アザシチジンが推奨される)。
推奨グレードカテゴリー2B
同種造血幹細胞移植が実施されない若年齢で染色体異常,全身状態(PS),罹病期間などの予後不良因子のない症例では強力化学療法も候補となるが,化学療法はアザシチジンが使用できない場合に適応が考慮される。
推奨グレードカテゴリー2B
強力化学療法と低用量化学療法の生存期間への影響はほぼ同等であり,その適応は症例ごとに判断する。

解説

従来,高リスクMDS に対しては化学療法が行われてきた。しかし,一部の若年齢で,染色体異常・全身状態(performance status:PS)・罹病期間など予後不良因子のない症例では強力化学療法の有用性が示されているものの1),それ以外の症例では生存期間や白血病化までの期間延長を明確に示したレジメンは存在しない。このため,化学療法の適応はアザシチジンが使用できない症例(不応・不耐)に考慮される。

MDS(RAEB-t および白血化症例を含む)における強力化学療法と低用量化学療法を比較したわが国の臨床試験(JALSG MDS200 試験)では,登録症例数が不十分で統計学的な比較がなされていないものの,寛解率では強力療法群が高かったにもかかわらず(強力化学療法64.7% vs 低用量化学療法43.9%),2 年無病生存割合(disease free survival:DFS)および2 年全生存割合(overall survival:OS)はほぼ同等であり(DFS;強力化学療法26.0% vs 低用量化学療法24.8%,OS;強力化学療法28.1% vs 低用量化学療法32.1%),MDS では寛解導入率が必ずしも予後を反映せず,強力化学療法と低用量化学療法はほぼ同等の成績であった2)

参考文献

1)
Kantarjian H, et al. Long-term follow-up results of the combination of topotecan and cytarabine and other intensive chemotherapy regimens in myelodysplastic syndrome. Cancer. 2006 ; 106(5): 1099-109.(3iiiDiv)
2)
Morita Y, et al. Comparative analysis of remission induction therapy for high-risk MDS and AML progressed from MDS in the MDS200 study of Japan Adult Leukemia Study Group. Int J Hematol. 2010 ; 91(1): 97-103.(1iiDi)